第9話 ギャンブル

 故郷の牧場を焼いた敵の情報を集めるため町を散策することにした”ジョン・ウェスト”サルーンの階段を下りていくとバーテンが話しかけて来た


バーテン「まったく人騒がせな・・・お、綺麗な格好してデートかい?ええと・・・」


 バーテンが帳簿に目をやり


バーテン「ウェストさん」


ジョン「ジョンで良いよ。なんか調子が狂う」


バーテン「わかったよジョン。で、どうしたんだ」


ジョン「ちょっと散歩にな。近所の店で騒ぎがあったみたいだが」


バーテン「さっきの銃声か。たぶんターキーズって賭場だろう。いつも騒ぎ起こしやがる」


ジョン「賭場ね。じゃあ騒ぎ起こしてくれた礼に迷惑料巻き上げにいきますか」


バーテン「小奇麗な格好になったと思ったらギャンブラーだったのかお前」


ジョン「そんな大したもんじゃねえよ。たまに火遊びがしたくなるだけだ」


バーテン「そうかい。ほどほどにな」


 俺はその賭場に向かった


荒くれ1「なんだよやっと酒が飲めると思ったらもう終わりかよ」


バーテン2「こうも早く保安官に目を付けられちゃもう無茶できねぇ。我慢してくれよ。クソ調子悪いな最近このボロラジオ」


 店の中にに入ると雑音交じりの音楽を流す蓄音機らしき四角い箱をいじっているバーテンと客が愚痴っていた


バーテン2「ん?新顔か」


ジョン「ああ、ゲームをしに来たんだが」


バーテン2「チップはいくつ買う?」


ジョン「200ドル分くれ」


バーテン「はいよ。好きなテーブルで遊んでってくれ」


 やってるゲームはブラフ、クラップス、バカラ、ポーカー、ブラックジャック・・・


ジョン「クラップスで様子でも見るかな・・・」


 クラップスのテーブル参加し、周りの人間を観察しながらしばらくゲームをプレイする事にした


ディーラー「出目は4。ポイントナンバーが出ましたシューターの勝利です」


ギャンブラー1「よし!よくやったなデブ。なかなかやるじゃないか」


ギャンブラー2「僕は間に結構賭けたせいで受け無しだよ。とほほ」


ジョン「俺も参加させてくれ」


ディーラー「どうぞ。シューター(投げ手)を交代します。初めに投げられますか?」


ジョン「いいのか、じゃあやらせてもらうぜ。パスライン(勝つ方)に10ドル」


ギャンブラー1「ふぅん・・・ドントパス(負ける方)に20」


ギャンブラー2「ボクはパスラインに8」


 皆がそれぞれ出目を予想し賭けていく。負けに賭けるなんてひねくれ者だな。初心者には見えないがケチをつけられても黙らせる自信はあるってところか


ディーラー「カムアウトロールを」


 ディーラーから差し出された5つのサイコロの中から片手で2つ選び投げる


ジョン「よっと」


 サイコロの目が7.11なら勝ち2.3.12が出れば負けそれ以外の数字なら・・・


ディーラー「ポイントナンバーは8」


 ここからは8が出れば投げ手の勝ち。7が出れば負けだ


ギャンブラー3「ハードエイト(4のペアが出る事に賭ける.4のペアではない8か7が出ると負け)に5」

 

ジョン「オッズベット(自分の賭けに賭け増し)を3倍だ」


ディーラー「以上でよろしいでしょうか。では2投目を」


 サイコロをまた投げる


ディーラー「6と2の8・・・シューターの勝利です」


ジョン「よし」


ギャンブラー2「あちゃ。まあいいや」


ギャンブラー1「へぇ、ちと舐めてたかな」


ディーラー「では次の方」


ギャンブラー1「オシ!オレの番だ」


ジョン「ドントパスに20」


ギャンブラー1「ハッさっきのお返しか小僧。いいだろうパスラインに20ドル」


 ガラは悪いが話のできない相手じゃなさそうだな


ギャンブラー2「勝ちに10お願いね」


 ガラの悪いギャンブラーがサイコロを投げる


ディーラー「ポイントナンバーは10」


ギャンブラー1「ちぇ。だがオッズベットする」


ジョン「俺もオッズベットだ。あと5のプレースベット(7が出るまでに5が出る)に10ドル」


ギャンブラー2「6にプレースベット6ドル」


 続いて2投目


ディーラー「出目は5」


ジョン「ふん」


ギャンブラー1「ああクソ」


ディーラー「よろしいですか。3投目をお願いします」


 3投目


ギャンブラー1「せい!」


 出目は7


ディーラー「セブンアウト」


ギャンブラー1「あーっ、オレは降りる。今日は調子悪りぃや」


 試しにあのひねくれ者から話を聞いてみるか


ジョン「俺も降りる。おい」


ギャンブラー1「なんだ」


ジョン「稼がしてもらったお礼に一杯奢るぜ」


ギャンブラー1「お、気が利くじゃねぇか」


バーテン2「こらこらそこ。ウチじゃ酒は出せないよ」


ギャンブラー1「んだよケチ臭い。なあぁ別の店で飲まないか。一件心当たりがあるぜ」


 お、アタリかな。俺から強盗する気じゃければ・・・


ジョン「いいね。酒が飲みたくてしょうがなかったんだ」


ギャンブラー1「ハハ、お前も飲んべぇかい。ついて来な」


 店を出て街はずれの空き家までついていった


ジョン「本当にここか」


ギャンブラー1「そう警戒すんなって。ここの家のロッカータンスの中が入口になってるんだ。裏から入るぞ」


ジョン「へー・・・」


 あからさまに怪しいが俺を強盗するならもっと他にあるだろう。いつでもナイフで殺せるように警戒しながらついていく事にした


ギャンブラー1「これだ」


 ギャンブラーがタンスの大きい扉を開けた


ジョン「中に何もないぞ。人が使った気配は確かにあるが」


ギャンブラー1「待ってな。下の引き出しを半分開けて。奥の壁をっ!押してだ!な!?アァー・・・」


 ギャンブラーがタンスの中に消えていった。するとロッカータンスの扉と引き出しが独りでに閉まった


「ギィ・・・バタン」


ジョン「入るのか、この人食いタンスこの中に・・・」


 もしかしてアイツ騙されてたんじゃあ・・・


ジョン「ええい!ダメで元々」


 引き出しを半分開け、扉のほうの奥の壁を押す


「ギィ・・・」


ジョン「うわっと!」


 急に開いた隠し扉の中に入って転んでしまった


ジョン「痛て」


ギャンブラー1「来たな。ビビッて逃げちまったかと思ったぜ」


怪しい男「お二人様でよろしいですね」


ギャンブラー1「おう」


ジョン「あーまったく。本当に酒が飲めるんだろうな」


怪しい男「ええ、もちろん。他にもお楽しみをご用意してありますよ。奥へどうぞ」


 奥の階段を下りて行くと広いドーム状の空間が広がっていた。部屋の中心に檻があり中でコヨーテほどの大きさのトカゲが戦っている。それを見物してる客が奇声を上げている


トカゲ1「シャー!」


トカゲ2「ギャワン」


 トカゲが組み付き合って足の爪を相手に突き刺しながら格闘する


客1「そうだブチのめせ!」


客2「おい!しっかりしろヴェロッキオ。お前には大枚はたいてんだからな!」


 どうやら勝敗に金を賭けてるようだ


ギャンブラー1「どうだい。良い店だろ。ちと騒がしいがな」


ジョン「ここでも賭けをやってるみたいだか。どうして上の賭場なんかに」


ギャンブラー1「自分がゲームに参加せず金だけ賭けるってのは性に合わないんだよ。適当な席に座ろうぜ。それとも試合に賭けるか?」


ジョン「確かにちょっと面白そう・・」


トカゲ1「ギャー!」


 優勢だったトカゲが相手の急所と突いたようで血が檻の外まで飛び散った


「ブシュー」


トカゲ2「ぎゃぁ・・ぎ・・・ゃ」


客2「ヴェロッキオォォォォ!」


客1「やかましい!自分の賭けたラプトルに勝手に名前つけてはしゃいでんじゃねえ!」


客3「ヴェロッキオって俺と同じ名前なんだが・・・」


 名前をつけたくなる気持ちはよく分かるぞ。だが・・・


ジョン「いや・・・やっぱいい。血生臭いショーを観ながら飲むってのもな」


 テーブルに座り酒を注文する


ジョン「そこのウィスキーを一本、グラスは二つね」


ギャンブラー1「一瓶まるごとかい」


ジョン「アンタが居なきゃそもそも飲めなかったんだ。俺の分は気にしなくて良いぞ」


怪しいウェイター「70ドルになります」


ジョン「高けぇな」


ギャンブラー1「へへ、ごちになります」


ジョン「しょうがないな。飲め飲め」


「トクトク・・・」


 グラスに酒を注ぎ乾杯する


ギャンブラー1「オレを負かしやがったコン畜生に」


ジョン「へんくつヤロウが案内してくれやがったこの穴倉に」


ジョン.ギャンブラー1「カンパーイ。ゴクゴク・・・」


ギャンブラー1「ぷはぁっ。うめえ」


ジョン「こんな場所があるとはな」


ギャンブラー1「昔掘り起こした遺跡を使ってるらしいぜ。遺跡の私的利用は違法だが隠れるにはちょうどいい。ゴクゴク」


 遠慮するなとは言ったが凄い勢いで飲むなこいつ


ジョン「お前仕事は何してるんだ。まあまあ羽振りの良い賭け方してたじゃないか」


ギャンブラー1「オレか、おりゃ何を隠そうここいら一帯を仕切るジェスター・ヴァンス・ギャングの一員よぉ。この店もウチの組織の下請けよ」


 なんだと!?いや・・・顔に出さないように冷静に・・・


ジョン「へぇ名前は聞いたことあるぜ、ゴクゴク・・・。しかし今日きた牛追い連中と派手にやりあったって噂じゃないか。普通に町を出歩いていいのか」


ギャンブラー1「覆面してたし夜中に遠くから撃ちあってただけだ。バレねぇってハハハ」


 しかも襲撃に参加してたヤツかよ!いつもの格好だったら周りの連中に今頃蜂巣にされてたかも・・・・絶対居るよな他にも


ギャンブラー1「そういうお前は。カタギってわけじゃないだろう」


 俺の傷を指摘する様に自分のこめかみを指でなぞってそう言ってきた。普通の牧童のつもりなんだがなぁ


ジョン「俺か・・・この大陸に来て一カ月の新参者さ。適当な日銭を稼ぎながら旅してる」


ギャンブラー1「旅ね。何しでかしたか知らなねぇが単に逃げ回ってるだけだろハハ!ゴクゴク」


ジョン「ハハハ、まあ否定できないわな。ゴクゴク」


 コイツもう酔いが回ってるな。肝心な事は早めに聞いた方がよさそうだ


ギャンブラー1「ハハ!なんならウチの組に入るか。幹部連中に紹介してやってもいいぜ。例のドンパチで結構やられちまって人手不足なんだ、死にたがりも多いしよ」


ジョン「せっかくだが遠慮しとく、実は人を探しててね。国からズラカル途中で仲間とはぐれちまってさ。ジャックってグレーの瞳の良く目立つ黒人なんだが全然つかまらねぇ。この大陸でトレジャーハンターやってたらしいんだが何か知らないか?」


ギャンブラー1「トレジャーハンターね・・・グビグビ。そういや遺跡の調査するっていうんでウチに護衛の依頼が来てたな・・ヒック」


ジョン「依頼?」


ギャンブラー1「ゴク・・・うん。もう調査しつくされた場所のはずなんだが」


ジョン「詳しい場所は」


ギャンブラー1「えーとなりゃ・・・第64区だっけかりゃ?お前さんのつれが居るかは知んないけどよ」


ジョン「第64区か・・・って酔い過ぎじゃないか」


ギャンブラー1「あー?奢るって言ったのはお前だろうっ・・が。グビグビ」


 そう言うとこの男は瓶を取りそのままラッパ飲みしてしまった


ジョン「おいおい」


ギャンブラー1「ぷはっ。レッドウッドの奴と大勝負した後だってのに・・・遺跡の調査だと?バケモンに殺られて・・・また仲間が減っちまうじゃねぇか。どいつもこいつも死に急ぎやがって!」


「ガン」


 荒れた男は勢いよくテーブルの上に足を放り出す


ギャンブラー1「たく・・・一人でやってたころはこんなこと思いもしなかったのによ。せいぜい、今撃ったのはひょっとしてこの間いっしょに飲んだヤツか?って考えるくらいだったってのに。情けねぇ」

 

ジョン「情けなくなんかないさ。情報ありがとな。行ってみるよ」


ギャンブラー1「へっ、クタバッチマエおめぇも・・・。不思議の国にようこそ新参者!グビグビグビ・・・うっ」


「バタン!」


 酒を一気に飲み干すとそのまま倒れてしまった。空になった瓶が床を転がっていく


「カランカラン・・・」


怪しいウェイター「お客さん!あっこいつヴァンスの」


ジョン「もう帰る。出口はあっちでいいな」


怪しいウェイター「はい。外で騒ぎが出始めたようで保安官が殺気立っています。バレないようお気をつけて」


ジョン「わかった気をつけるよ。それと頼みがあるんだが」


怪しいウェイター「なんでしょう」


ジョン「こいつ目が覚めたらコーヒーでも飲ませてやってくれ」


怪しいウェイター「かしこまりました」


 俺はウェイターに小銭をわたして店を後にした


END



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