第8話 アイリーンタウン

 キャトルドライブという名の戦争に巻き込まれ重傷を負った”ジョン・ウェスト”腹に穴を開けながらも何とか仕事を続けていた


ナッシュ「もうすぐで街につくぞ、オラもっと気合を入れろ!」


一同「へぇ~い」


ジョン「もう何度同じセリフを聞いたことか」


アレックス「ん~・・・んん!あれは!」


テッド「ん?」


カウボーイ達「町だ!」


ナッシュ「こらペースを崩すな!」


 無事街に付き給料の支払いと装備の返却が行われた。皆列に並ぶ


ガンマン1「ふへへカネカネ」


ジョン「やっと終わったなぁ」


ナッシュ「次」


ジョン「よし、来た」


ナッシュ「ほれ、お前の分だ勝手にはぐれたぶん少ないぞ」


ジョン「ああ、すまない。テッドを見なかったか町についてから見てないんだが」


ナッシュ「知らん、自分で探せ。次!」


 給料を貰いその足で床屋に向かう。髪を切ったり髭を剃ったりするだけの場所ではなく風呂を貸出していて歯医者までやっている大きな床屋だ。着るもの以外の身だしなみは一通り出来るようになっている


ジョン「流石に混んでるな、風呂は無理か」


 中はキャトルドライブで一緒だった奴がほとんどだ。騒がしい様な感じではなく、みんな少しぐったりしている。騒げるほどの元気がある奴は今頃娼館で女といちゃつきながら身体を洗ってもらっているのだろう


床屋1「いらっしゃい」


ジョン「ヒゲ剃り、あと頭を整えてくれ」


床屋1「あい」


 疲れた身体を床屋に身を委ねる、この時間が一番癒される。16の頃に仕事の終わりに旅行中のタフガイ気取りのシティボーイに長い牛追いの後はやっぱ酒場で騒ぐのか?と聞かれた事がある。床屋に行くと答えたら彼は意外だと驚いていた、そんな女々しい事をと。そんな反応する奴は家畜と一緒に長い間、荒野にさらされた人間がどんな状態になるか体験したことも見たこと無いか、獣にような生活をしているかのどちらかだろう・・・


「ジャリジャリ」


アレックス「ん~長旅の後はやっぱ床屋よねぇ」


ジョン「アレックスなぜここに!?まさかお前もヒゲを!」


アレックス「顔剃りよ!」


床屋1&2「お客さん動かないでください」


 女々しいどころか女そのものなんだから居てもおかしくないじゃないかクソ・・・なんか負けたような気分になる。俺とアレックスは床屋に注意され姿勢を正した


アレックス「んん、ところで腹の調子はどう」


ジョン「少しはマシになった、ピートの薬草のおかげかな」


アレックス「ちょっと私だって治療したのよ」


ジョン「お前がつけた火傷に薬草が必要だったんだよ。傷を焼くだけでなんでこんな大きな火傷になるんだ」


アレックス「いいじゃない助かったんだから。ジョンこの後ひま」


ジョン「宿を探してしばらく観光・・・とっ、その前に銃だな壊れちまったし」


アレックス「じゃあ一緒にいかない。ここは鉄道も通ってるしきっと良い銃がそろってるわ」


ジョン「随分嬉しそうだな」


アレックス「そりゃそうよ、パシフィクスには遺跡から発掘した遺物の研究で作られた銃がいっぱい有るんだからあるんだから。ああ我が愛しのマシンガン・・・」


ジョン「あの引き金を引くだけで連射できるってヤツか、マシンガン持ったアレックス・・・・想像したくねぇ」


床屋「終わりましたよ」


 俺達は床屋を出て小汚いガンショップを見つけた。多少目新しい物があるがアレックスが欲しがっている物は無い様だ、店員が言うには・・・


ガンスミス「この町の保安官は銃に消極的でね、そういう弾をばら撒くものは置いてないんだ」


アレックス「うう、マシンガン」


ガンスミス「姉ちゃん、んなカタログに食いついてないで離せ、シワになる。なんなら取り寄せるか」


アレックス「自分の目で銃を見ないと意味ないじゃない、カタログデータなんて信用できますか」


ジョン「ところで俺の銃直りそうか」


ガンスミス「直すってこりゃもう寿命ですよ、命が欲しかったら新しい銃を買ったほうがいいですぜ」


ジョン「そうか、気に入ってたんだがな」


ガンスミス「まぁ元は良い銃だったみたいだし気持ちは分かるだが諦めてくれや」


ジョン「ん~なにか代わりになる銃はないか?」


アレックス「あたしが拾ったボロじゃダメなの?」


ジョン「なんかレバーがガタガタするんだ、銃身も歪んでる。同じよう銃はあるか」

 

ガンスミス「73じゃなく92モデルのウィンマスターなら」


ジョン「見せてくれ」


ガンスミス「はいよ」


「ガシャ」


 ガンスミスが銃を手に取りに解説を始めた。


ガンスミス「多少構造が違うが使い方は一緒だ。そこに射撃場があるが撃ってみるか有料だが」


ジョン「ああ頼む」


 射撃場に行き例の銃を渡される


ガンスミス「的は何にする?盗賊、インディアン、バケモン、なんならドラゴンなんてあるぞ。ハハ」


ジョン「このあたりに出るモンスターを適当に並べてくれ」


ガンスミス「はいよ」


 的を設置してガンスミスがこちらに駆け寄ってくる


「カチャカチャカチャカチャカチャ、ガシャン!」


 弾倉に5発弾を込めレバーを操作し薬室に弾を送り、撃つ


「タン!」


ガンスミス「腹に命中」


ジョン「んー、こうか」


 普通に構えて一発、片手で銃を回し腕を伸ばし一発、腰に構えて2連射


「ガシャタン!グルン、タン!タンタン」


ガンスミス「胸に全弾命中」


ジョン「よし、いけそうだ」


ガンスミス「買うかい」


ジョン「ああ、お値段は」


ガンスミス「こんだけ」


 指で値段をジェスチャーしてきた、提示された金額を支払う


ガンスミス「まいど、その銃の癖が解ってきたら、また来な。使い易い様に調整してやるよ」


ジョン「ありがとな」


 俺達はガンショップを出・・・


ジョン「ん、アレックスの奴はどこに・・・・・」


アレックス「むむ、保安官補募集の張り紙!」


ジョン「おい待て!俺達が大量の牛と一緒にガンマンを連れてきたの忘れたか?今まで一緒に仕事してきた連中と撃ち合う事になるぞ」


アレックス「待ててね、私のバッチちゃーん」


長い間人里を離れるキャトルドライブの後は何かとハメを外す奴が多い。しかも今回は牛追いとは普段関係がないガンマンばかりだ、荒れないわけがない。


ジョン「い、行っちまった」


ガンスミス「アンタら、レッドウッドコラルの人間だったのかい」


ジョン「いや、牛追いで一時的に雇われただけなんだが」


ガンスミス「しばらくハメを外す気がないならレッドウッドサルーンに行きな。あそこならガードも居るし、そこそこ安全だ。ほれこの先だよ」


ジョン「ここにもあるのか、わかった行ってみる。そうだ店主」


 邪魔者が居なくなったので聞いてみる事にした。


ガンスミス「なんだい」


ジョン「知り合いを探してるんだが、最近オートマチック用の弾丸を買いに来た客はいたか」


ガンスミス「ああ居たよ、結構な数を何種類か」


ジョン「この薬莢と同じ奴もか」


ガンスミス「む・・・その知り合いと友達ってわけじゃなさそうだな。どこ行ったかは知らねえよ面倒はゴメンだ。今は時期が悪い、みんな口は堅いだろうがガラが悪いヤツが行くような場所には心当たりがあるだろ」


ジョン「そうかい、ありがとうな」


 騒ぎを起こすわけにはいかない。アレックスが保安官補にならない事を祈りつつサルーンを目指した。サルーンの前には昼間だというのにガードが居る


ガード「今日は酒を出してねぇ。飲みたいんなら他所行きな」


ジョン「宿を取りに来たんだ酒はいらないよ。部屋は開いてるか」


ガード「・・・中の奴に聞きな。ごゆっくり」


 サルーンの中に入ると見知った顔が多かったが、その中でも意外な顔が一人いた


バーテン「なんにする」


ジョン「バーテン!?お前も来てたのか牛追い中は見なかったが。一緒に来てるなら声をかけてくればいいのに」


バーテン「またか・・俺は、あっちのバーテンとは別人だ」


ジョン「別人?親戚だとか」


バーテン「いや、よく言われるが赤の他人だよ。で、注文は」


ジョン「お、おう。じゃあコーヒーにウィ・・・酒はだめだったか。ホットチョコレートとミートパイをくれ」


バーテン「はいよ」


ジョン「ああ、それと部屋は開いてるか三日ほど泊まりたい」


バーテン「一部屋空いてるよ。これにサイン、金は先払いだ金額はここに書いてる」


ジョン「うわ、普通に泊ると結構高いな」


バーテン「やめるか」


ジョン「いや、ちゃんと払うよ」


 名簿にサインした頃に料理が届いた


「ゴト」


「おお、きた来た。モグモグ」


テッド「ジョンじゃん。オマエも来たのかって・・・何食ってる」


ジョン「ホットチョコとミートパイ」


テッド「その組み合わせでよく喉を通るな」


ジョン「いや、ケガしてから血が足んなくてさ。ペロリ」


バーテン「ほれ、コーヒー」


ジョン「ん?ああ」


 食べ終わったころコーヒーが出てきた。キャンセルしたつもりだったがデザート替わりに飲むことにした。


ジョン「ンクッ・・・。あれ、これは」


バーテン「しーっ」


 黙るようにゼスチャーしてくるバーテン


バーテン「俺は上からなんと言われようとバーテンさ」


ジョン「そうかい。ゴクッ」


 ウィスキーの風味がするコーヒーを楽しむ


ジョン「ホントに俺の知ってるバーテンと別人か?」


バーテン「別人さ。よく間違えられるが、もう慣れた」


テッド「やっぱお前もそう思うよな・・・」


ジョン「そうだテッド、お前に聞きたい事が有るんだ」


テッド「聞きたいこと?」


ジョン「人を探しててな。銀の瞳の黒人でオートマチックピストルを使うジャックって名前の奴だ。心当たりは無いか」


テッド「ジャック?んー、ここまで出かかってるんだが。コーヒー1杯分くらい」


ジョン「頼む」


バーテン「はいよ」


テッド「まあ、オレも詳しく知ってる訳じゃないがな。多分ジャック・クリフォードの事だろ、トレジャーハンターさ」


ジョン「トレジャーハンター?」


バーテン「お待ちどう」


 テッドにコーヒーが渡される


テッド「遺跡を探索して見つけたガラクタを政府や企業に売り渡す。その筋じゃあ有名なヤツだぜそいつ」


ジョン「政府か企業に雇われてるのかジャックってやつも」


テッド「いや、そのあたりはよく分からないんだ。何かしらのコミュニティに入っているは思うんだが」


ジョン「今どこに居るかわかるか」


テッド「いや、だが最近この町でガソリンを買った奴がいるらしい。車の燃料さ」


ジョン「車・・・か。もうそこまでチェックしてるんだな」


テッド「噂話ていどさ、あんま信用すんなよ。まあコーヒー代としては上等だろ」


 この町の近くにジャックが居るかもしれない


ジョン「ありがとう、コーヒー以外にも何か頼むか」


テッド「もう話せる事はねぇよ。オレも用事があるし他の奴に頼んでくれ」


ジョン「用事?もう次の仕事でも見つけたのか」


 小声で話しかけてきた


デッド「一度捕まえた獲物は逃がしたりしないからなオレは」


ジョン「まだやる気かよ」


テッド「一緒に来るかジョン」


ジョン「もうオレはこりたよ。じゃ、傷も痛むし部屋でちょっと寝てくるわ」


テッド「ハハ、そりゃ残念だ」


 金を払いバーの席を立つ


バーテン「209号室。カギはこれだ」


ジョン「ああ」


 サルーンの部屋で聞き込みの準備を始める


ジョン「さて、ジャックの手がかりを探すにしてもな」


早く追いかけたいのは山々だが、今は町がガンマンで溢れかえって住人がピリピリしてるはず。刺激しないよう部屋で目立つ銃やガンベルトを外し身体洗って獣と土の臭いを出来るだけ落とし身なりを整える。情報収集はそれからだ


ジョン「小っちゃい銃も買っておけばよかったな。銃が使えないとなるとナイフだがどうしたもんか」


 ナイフをシース手首に固定し隠す事にした。


ジョン「よし、行ってくるか」


 と、思った矢先


「タン・・・タン・・・・」


ジョン「くそう、折角準備したのにもう騒ぎ出したか」


 窓から様子を伺う


バーテン2「おい、誰か保安官呼んで来い!」


暴漢「ぅっせえ!決闘の邪魔すんじゃねえ」


暴漢ガス「へ!何を偉そうにポーカーで負けた腹いせだろうが!」


暴漢「てめぇこそチョコマカ逃げ回るんじゃねえイカサマ野郎」


ジョン「いつか馬で轢いてやった酔っ払い!?生きてやがったのか。それともまたそっくりさんじゃ」


ガス「早く酒をくれ!金は払ったろバーテン」

 

暴漢「この飲んだくれが」


 ガスが元の酒場に駆け寄っていく。もちろん流れ弾も自然と酒場へ


「ばん!ダン!」


バーテン2「バカ、こっちくんな瓶ごとやるからあっちけ!」


 バーテンがガスに酒を投げ渡す


ガス「あんがとよ!ゴクゴク・・・ヒック」


暴漢「っっこんやろ!」


「タン」「タン」


 先に撃ったガスの銃弾が暴漢の腕を撃ち暴漢は地面を撃った


ガス「酔った方が上手く撃てるんだぜっと!」


 酒瓶を暴漢の上に投げそれも見事に撃ちぬく。暴漢は酒でずぶ濡れになった


暴漢「ちきしょうが!」


ガス「オット、まだやるか?今撃ったら火だるまだぜぇ?へへっ・・・」


保安官「せい!」


ガス「ガハッ」


 ガスが保安官らしき男に殴られ悶絶する


保安官「まったく昼間から騒ぎをおこして」


暴漢「保安官!ってなんだお前丸腰じゃねぇか」


保安官「銃は持たない主義なので。貴方も大人しく銃を渡してもらいましょう」


暴漢「ああ・・・わかってるよ」


 暴漢が銃をホルスターに戻してガンベルトを外し差し出しながらナイフ抜こうとした


ジョン「やばい」


 「ドド!」


 ナイフに気づいた保安官が相手が抜くよりも早く二連打を食らわせた


保安官「大人しく、と言ったはずです」


暴漢「・・・ぐお・・お・・・」


保安官「しばらく檻の中で反省してもらいましょう」


ガス「待て、オレは正当防衛・・・」


保安官「酔いが覚めてから話を聞きましょう。それと店主、アルコール類の販売はしばらく控えるように警告したハズですが」


バーテン「あ、それはアノ」


保安官「あまりおいたが過ぎると営業停止にしますよ」


 保安官が二人を引きずり去って行く


ジョン「ガラの悪い奴が集まりそうな場所・・・か」


END

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