第7話 銀色の瞳

カウボーイ1「おいなんか走ってきたぞ、あれ”ジョン”ってヤロウじゃないか?用心棒の」


ガンマン1「ん、ああホントだ。危なく撃っちまう所だった・・・他にも誰か乗ってるな」


アレックス「コラー!撃つんじゃないわよ、撃ったら飯抜きだからね!」


ジョン「だから暴れるなって」


ガンマン1「げ、コックの姉ちゃん。オレ苦手なんだよな」


テッド「まだ出発してなかったのか、助かったぜ」


 馬にへばりついていたテッドが降りて地面に倒れる


カウボーイ1「テッド!どうしたその怪我」


テッド「ハァッーハハ・・・獲物逃がしちまった、もう少しだったのによ・・・」


アレックス「はいはい、グチってないでさっさと治療するわよ便利屋。一番近いの馬車はどこ?」


カウボーイ1「インディアン・ピートの馬車が近いな。おいガンマン案内してやれ」


ガンマン1「はぁ!オレが!?オレはアンタらの護衛で・・・」


アレックス「文句言ってないで早く案内しなさい、アンタが酷い便秘で腹痛に苦しんでたのをヒマシ油ぶち込んで治してあげたの忘れたの?今アンタが快適にクソができるのは誰のおかげ?んん?」


ガンマン1「ああ!だからコックってヤツは苦手なんだよ!黙ってついてこい。ほらテッドこっちに乗りな」


デッド「ああ・・・」


アレックス「ほらジョン行くわよ」


ジョン「ああ・・・」


 クソッ目が・・・やばい俺も限界か


アレックス「ジョン?」


 そのまま俺は倒れた。途切れ途切れだが周りの音が聞こえる


アレックス「ッ撃たれてるじゃない!早く・・・・・ン・・・ジョン聞こえ・・・」


ライトニング号「ヒィ・・・ィィィ・・ン」


ピート「そっと下ろ・・・・を・・・噛んでろ」


 口になにか弾力のある物を噛まされる。猿ぐつわか?


ジョン「ンンンンンッ!!」


 鋭い痛みが走っる、痛い!麻酔使え!せめて酒かなんか飲ませてくれ!


アレックス「・・・ッ、弾頭が砕けて・・・」


ピート「交われ、昔よく砕けた矢尻を体から摘出した。ナイフを・・・」


 ああどうして、こう嫌な単語ばかり聞き取れるのだろう・・・腹の中で動いてる


ジョン「ぐがっガガガガ」


ピート「よし・・・だな、後・・」


アレックス「出血が・・・これじゃ保たないわね焼くわよ」


 焼く!?まさか!


ピート「危険だ、ショックで死ぬぞ!」


アレックス「腹に穴開けてここまで来たんだし大丈夫でしょ」


ジョン「んがえ!(待て!)」


「ジュゥゥゥゥ」


ジョン「グウゥウウ!!」


 火薬が光と煙を勢い良く出し燃え上がった。これが俺が見たこの世で最後の光景と・・・


???「・・・・ン・・・ジョン・・・」


 ん、俺は生きてるのか


???「ジョン」


ジョン「んん・・・」


ジョージ「何時までボケーッとしてんだ」


「ゴン」


 何かに小突かれた拍子に目が覚めた


ジョン「痛てっぇ、親父!?」


ジョージ「何ぼさっとしてる、煙草を消してさっさと準備しろ」

 

ジョン「あっ・・・ああ、ごめん」


ジョージ「男が簡単に謝るな」


ジョン「はいはい」


 適当に相槌を打ち煙草をもみ消す。はて?俺はなんでボーとしてたんだ


ジョージ「もうみんなサルーンで待ってる。さっさと行って一杯やろう」


ジョン「ああ、ちょっと待て今行くよ」


 地元のクソ汚い酒場、サルーン・スローターハウス(屠殺場)今までここに来た奴らが撒き散らした酒やら血やらゲロやらでシミだらけの店内からそう言われている。今日も地元の奴らや流れ者が集まっていた


バーテン「なんにする」


ジョン「ビール」


ジョージ「バーボンだ」


バーテン「はいよ」


「ゴト」


 バーテンが乱暴にジョッキとボトルを置く。さっそく来た酒を飲もうとすると後ろからウチのカウボーイの一人が話しかけてきた


スミス「ハハ、ぼっちゃん(ジョン・ボーイ)またビールか、もっと強い酒飲まんと長生きできんぞ」


ジョン「ぼっちゃん言うなスミス、てかまた変な酒飲んでるな、今度はなんだ」


スミス「へへ、ギブソンのヤロウが作った密造酒でさ、パンチがキイテマスゼうへへぇ」


ジョージ「おい、バーテンあいつの背中に貼ってある火気厳禁てなんだ」


バーテン「俺が貼った。強い酒だ、今火を近づけたらヤツはきっと爆発する」


ジョン「おいおいパンチが効いてるとかいうレベルじゃねぇぞ」


バーテン「ウチの店でも置く事にした。飲むか」


ジョン「いらねぇってそんな悪魔の飲み物」


バーテン「デビルリキュール・・・ふむ、名前の候補に挙げとこう」


ジョン「おいおい本気で店で出す気か。これじゃ安心して煙草も吸えないぜ」


ジョージ「ハハ、いいじゃないか店の中で銃ぶっぱなすバカが減るかもしれん。こらスミス明日も仕事なんだ飲み過ぎるなよ」


スミス「ワカッテますよ。フヘヘヒヘ(笑)」


 このスミスって男、ウチのカウボーイなんだが初めて会った時名前を聞いたら飲みすぎで名前を忘れたとか吐かしたんでスミスってあだ名で読んでる。こんなんだが腕は確かだ


ジョン「てかギブソンはどうした諸悪の根源は!」


バーテン「少し飲んでから女を買って上へ行った」


ジョージ「またか、ろくに持たないクセに」


 しばらくして上から誰か降りてきた


ギブソン「おお、ウェストさんもう来てたんで」


ジョージ「ようギブソン相変わらず早やいな」


ギブソン「作った精力剤が強力すぎまして。あはは・・・」


スミス「ブハハハァ!ナニを撃たせたらギブソンに敵う早撃ちはいねぇさ。ブゥルバハハ!」


 ギブソンが無表情でマッチ箱を取り出し蓋を開ける


ギブソン「煙草吸うかスミス、ボクが火をつけてあげるよ」


ジョン「まてまて、俺たちまで吹き飛ばすきか」


ギブソン「へへ、冗談ですよ」


「シュ」


 ギブソンは口にパイプを咥えウィンクしながらそう言って、火をつけたマッチを葉っぱの入ったパイプの火皿の上で撫でる様に回し煙草に火をつけた。


ジョージ「ギブソン明日暇か」


ギブソン「ええ、牛の解体ですか」


ジョージ「いや、調子の悪い子牛がいる診察してくれ」


ギブソン「はは、やっと本業に戻れる。肉屋の手伝いを終わらせ次第すぐうかがいますよ」


ジョージ「頼むぜ獣医さん」


 獣医ギブソン。暇なときは肉屋でバイトをしているか妙な薬品を作っている変な奴だ。俺にナイフを教えたのはコイツで俺は未だにナイフで勝ったことがない


ジョン「明日・・・何か忘れてるような」


スミス「ナニ辛気臭い顔してんです坊ちゃん。ほらコイツでぱーーっと」


ジョン「待てスミッ、がばばば」


 強引にに密造酒を飲まされる


ギブソン「スミスそいつは薄めて飲むんだ」


スミス「薄めた酒なんざ酒じゃねえよ。ブハハ」


 口の中に酸をぶち込まれた様な感覚に襲われいつの間にか家の中で朝を迎えていた


ジョン「クソ頭が痛ぇ」


スミス「ナハハ、すいやせん」


ジョージ「おら行くぞ。牛にたらふく飯を食わせなねぇと」


牛「もー」


 何時もの牛追い、見慣れた景色それがとても違和感がある。嫌な感じだ自然と腰の銃に手を・・・あれ


スミス「どうしたい?坊ちゃん」


ジョン「いや、なんか腰のあたりが寂しいなと・・・あと坊ちゃん言うな」


ジョージ「ついにお前もリボルバーが欲しくなったか道具は慎重に選べよ。ただでさえ拳銃は当てにくいからな」


ジョン「いや別にそんなんじゃ・・・」


「タン」


ジョン「うわ!」


牛泥棒1「ガハハ、待ってたぜ」


「タンタンタンタン」


 突然の銃撃を受け馬から落ちた


ジョージ「大丈夫か!」


カウボーイ達「無事です!」


スミス「畜生め、オレももう終わりか酒臭い血がドクドクと・・・ああ!オレのスキットルに穴が!」


ジョン「大丈夫みたいだぜ。たく新手の牛泥棒かクソッタレ」


 直ぐに立ち上がり反撃に出る


スミス「喰らえ!酒の敵ぃ」


「タンタンタン」


ジョージ「コラ、もっと姿勢を低くしろ!死にたいか!」


ジョン「こう撃たれっぱなしでじっとしてられるか!さっさと決着つけないと牛持ってかれるぞ」


ジョージ「焦るな、ヤバイ時ほど冷静にな。殺し合いならなお更だ」


ジョン「チッ、クソ牛泥棒が。おい、家の方にも何人か向かってるぞ!」


ジョージ「クソ!こっちは囮か。ジョン後は任せるぞ。オイ!他の奴は俺に追てこい!」


カウボーイ達「へい!!」


ジョン「はぁ?!おいコラ待てクソ親父!!クソッ」


スミス「このまま大人しく帰れるかぃ、目に物見せてやる」


「タンタン」


牛泥棒2「ぐふ!」


 牛泥棒をなんとか蹴散らし急いで家に向かう


「ズキ」


スミス「痛たたたた」


ジョン「足が悪いのに無理するな」


スミス「気付け薬(酒)があれば動けるってのに、オレの事は構わず先にイタタ、俺のショットガンを持っていきな、家ん中じゃこっちのほうが勝手がいい」


ジョン「無事でいろよ」


 ショットガンを手に取り家に入ると


「シュン」


 目の前をナイフが飛んで行き牛泥棒に刺さった


牛泥棒3「ぐぅっ」


ギブソン「ジョン無事ですか」


ジョン「ギブソン!」


牛泥棒4「んにゃろう!」


 牛泥棒がギブソンに襲いかかる


「タン」


ジョン「銃声!?上か!!」


ギブソン「コイツは任せて上へ」


ジョン「わかった」


 親父の部屋の中から声がする


???「無様だな、これがあのジョージ・ウェストか」


ジョージ「ク・・・まったく年は取りたくねぇなハハ・・」


ジョン「親父!撃たれたのか、チィ!」


 ドアを蹴破り侵入者にショットガンをっ・・・


ジョージ「ジョン!」


「タン」


ジョン「!」


 こっちが銃を構える前にヤツのオートマチックガンが放つ9mm弾が俺のショットガンの銃身を撃ち、跳弾がこめかみにかすった


???「ジョン・・・おまえが・・・」


 窓から射し込む月明かりがヤツを照らす、見た事もない異様な銃と色黒の肌、狼のような灰色の・・・いや、銀色の瞳を・・・俺はこの顔を忘れないだろう


???「ふん、くだらない感傷だ。こいつは貰って行く」


ジョージ「ジャック!!」


 ジャックは窓から飛び降り下に止めてあった車に乗った。汽車とは違う独特の機械音が鳴り響く


「パッパッパッバルルルルルル」


ジョン「逃すか!」


 俺も飛び降り後を追うとする


カウボーイ「ぼっちゃん!ぜえぜえ」


ジョン「スミスあの妙な乗り物に乗ってた奴がボスだ。追うぞ!」


カウボーイ「ハアハア、ダメです馬はみんなヤられちまってます。ウチの牧童もヤられた奴が多くて・・・ケビンやジミーはもう。スミスの奴も重傷で」

    

カウボーイ2「うう」


ギブソン「誰か来てくれ。怪我人が多過ぎる」


ジョン「畜生が!」


 酷い惨状だ、家が焼けていないのが唯一の救いだった。今思えば初めての敗北というものを実感した事件だった


「ギィィ・・・ギィィ・・・カラン」


 奴の銃が付けた傷があるショットガンを切り詰めヤスリで整える


ジョン「よし、後は旅先で革職人に頼んでホルスターを作ってもらうか」


ギブソン「銃を勝手に切ってスミスに祟られますよ。本当に行くんですかジョン」


ジョン「ああ、もう決めた事だ。親父を頼む」


ギブソン「じゃあ・・・あの大陸へ」


ジョン「あの装備、西の訳分からねぇえ大陸の人間だろ?親父は行ったことあるのかヤツは親父を知ってるようだったが」


ギブソン「いえ、私は何も。せめてボスが目を覚ますのを待ったほうが」


ジョン「少しでもも早く追いかけないと見失っちまう。そんな暇ねえよ今ならまだ国内で捕まえられるかもしれないし。じゃあな」


ギブソン「ジョ・・・・」


アレックス「・・・ン、ジョン。もうこんなになって」


ジョン「えっ?ちょ、アレックス?てかなんでいんのお前」


アレックス「これはもう焼くしかないわね、ファイヤァァァ!」


「ジュゥゥゥゥゥゥ」


ジョン「ギャアアアア」


 炎が光と煙を勢い良く出し燃え上がった。これが俺が見た最後の光景・・・


ジョン「になってたまるか!!」


アレックス「わあ、急に起きないでよびっくりするじゃない」


 気がついたら馬車の中に居た


ジョン「アレックスか。うう、なんか走馬灯の様なもん見たぞ無茶な治療しやがって」


アレックス「4日も寝込むなんて随分長い走馬灯ね、業が深いのかしら」


ジョン「コノアマ・・・ん、4日?てことはもうそろそろ街に」


アレックス「残念、大幅に遅れてるわ人手不足でね。牛の面倒見るのがもう大変」


ジョン「なんだかんだ言って牛の守りもやって死んだのかアイツら」


アレックス「結果的にこうなっただけでしょう、おかげで静かになったわ」


ジョン「そうか・・・うんしょッ」


アレックス「ちょっ動かないで、無理すると死ぬわよ」


ジョン「このまま寝てたら気が滅入る。何かアルコールは?痛み止めが欲しい」


アレックス「もう使いきったわよ」


ジョン「ボス!ジョン・ウェスト復帰だ。馬をくれ!!」


アレックス「はいはい、もう勝手に死んじゃって」


END

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る