第3話 レッドウッドサルーン 後編
やっと来た魚のフライを楽しむ俺”ジョン・ウェスト”
ジョン「ムシャムシャ、ゴク、モグモグ」
キャトルドライブが始まれば保存食ばかりだろうからな、せっかく港町に居るんだし今のうちにもっと魚を食っとかないとな。できればカキも食いたいが
バーテン「よく食うな」
ジョン「ガツガツっふう、ごちそうさん。ところで用心棒の話だが具体的にはなにをすればいい」
バーテン「とりあえずそこらへんに突っ立っててくれ、問題を起こす客が出てきたら店からたたき出せばいい、基本殺さずにな」
ジョン「けっこう大雑把だな」
バーテン「うちのガードマンも居るし気楽にやってくれ。だがアメリカから追われたならず者が大勢この町に流れ込んでくるそれだけは覚えてくれ。中には腕の立つやつもいる」
ジョン「そんなヤツ来るのか、このサル-ンに」
バーテン「はは、そういうヤツは大抵もっと安い宿へ行くよ」
ジョン「脅かしやがって」
バーテン「可能性はゼロじゃないさ。まあ部屋に荷物を置いて風呂でも入って休んでてくれ、なんかこう生臭いぞ。店が込むのは日が沈んでからだ」
ジョン「ハハ、そうか、わかった」
階段を上り自分の部屋へ向かう
ジョン「204・・・204・・・ここか」
「ガチャ」
ジョン「へぇー良い部屋だな。さてと・・・」
ボンサックを適当に放り投げ、腰のショットガンを抜き部屋に異常は無いか調べる。前に読んだダイムノベル{三文小説}の真似なんだが
ジョン「クローゼットの中に刺客なし、ベットの下に爆弾なし、逃走経路の確認よし!さて身体を洗うか」
水風呂に入り部屋にあった石鹸で身体を洗い自分のカミソリで髭を剃った後は銃の手入れかな
「ジャバジャバ」
身体を洗った後の風呂の水で銃身に溜まったススをクリーニングロッドでかき出してやると風呂桶の水が真っ黒に染まった
ジョン「うわ、こんなに銃身にススが溜まってたのか。二日でよくここまで・・・」
昨日のバッタ騒ぎからメンテ無しでアリーの射撃に付き合ったせいでライフルが大分痛んでいた、まあガキの頃から使ってるし元からボロなんだが
ジョン「フッ!」
「ジャキ、ジャキ」
一通りメンテナンスを終え、大型レバーを利用して片手で銃を回し、動作確認する
ジョン「うーーん、やっぱ少し違和感あるなガンスミスに見せるか・・・いや今は無理か、ホッグスレッグ{切りつめた散弾銃}だけじゃな」
用心棒の仕事がある、狭い室内ではホッグスレッグの方が有利だが流れ弾が他の客に当たる恐れがある、ライフルを預けてしまうと散弾で相手を至近距離で撃つか殴り倒すしかない
ジョン「まあ何とかなるだろう、さてタバコ、タバコ」
パイプを吸いしばらくボーとしていると辺りが暗くなってきた下からも人の気配が多くなった気がする
ジョン「そろそろか行くかな。よいしょ」
パイプを咥えたまま部屋を出て下のバーに向かう
バーテン「よお」
ジョン「やあ、コーヒーと茹でた豆を山盛り」
バーテン「また食うのか一応ここは酒場だぞ」
ジョン「はは、風呂入ってサッパリしたら腹へってちゃって。それにただ立ってるのはひまだろ」
バーテン「はぁ、6時から8時までディーナータイムだ、そん時はちゃんとした飯をだせるぞ」
ジョン「そんな事もやってるのかこのサルーンは」
バーテン「牧場主がやってる店だからな、肉が美味いぞスパイスの効いた厚切りのTボーンステーキとかな、酒とよく合う」
ジョン「ゴク、あのぉー。飯は必要経費で落ちたりは」
バーテン「有料だ。キャトルドライブに出ればイヤと言うほどペミカン食えるぞ」
ジョン「うう、今は我慢するかトホホ・・・」
バーテン「言い忘れてたんだが。お前の他に一人キャトルドライブ出発までこのサルーンで働いてるヤツがいるぞ」
ジョン「へ~どんなヤツだ」
バーテン「コックのアレックスだ、もう直ぐ仕事で下りてくる頃だから、きたら紹介する」
ジョン「コックかぁ~給料いいんだよなぁ~たしか」
キャトルドライブでのコックの役割は料理の他に怪我人の治療も含まれる、特殊技能である為通常のカウボーイの2倍の給料が支払われる事もある
???「あなたが噂の用心棒?」
ジョン「ん?」
「シャッ」
ジョン「っ!」
俺が振り向きざま腰の銃に手を伸ばす間に女は俺に二丁の銃を頭に押し当ててきた
バーテン「アレックス!」
アレックス「なんだトロいじゃん、もっとタフなヤツだと思ったのに」
ジョン「あぶねぇじゃねえか、もう少しで刺すところだったぞ」
「トン」
バーカウンターにナイフを突き立てる
アレックス「へ??」
バーテン「左の脇腹」
アレックス「キャー!ベストが切れてる!お気に入りなのにぃなんで!」
ジョン「銃を抜く動作はフェイントだ、左手も警戒しろ」
突き立てたナイフをブーツにもどす
バーテン「いい加減ダイムノベルの真似事はやめろよ、危なっかしい。ジョン、彼女がコックのアレクサンドラ・ニコルソン。アレックス、彼が自称カウボーイの用心棒ジョン・ウエストだ」
ジョン「おい!自称ってなんだ、自称って」
バーテン「どう見たってカタギには見えないからな」
アレックス「ジョン・ウエスト{西部の誰かさん}かぁ~、名前も偽名くさいわね」
ジョン「おい、勝手に人を犯罪者にすんじゃねぇ!」
アレックス「あはは、腕が良ければなんだっていいわ、よろしくね西部の誰かさん」
バーテン「おいアレックス、もうそろそろ時間だぞ」
アレックス「あっいけない、じゃあまたあとでねぇ」
ジョン「ショルダーホルスターに二挺、腰と腿に一挺づつか勇ましいね。はぁ、この大陸の女はあんなのばっかりか、たく・・・」
バーテン「はは、アレは特別さ、女運が悪いのかオマエ。明日の昼に娼館にでも行っきたらどうだ、女で受けた傷は女で癒すに限る」
ジョン「もう少し余裕ができたらな」
バーテン「はは、まあお仕事頑張ってくれ」
ジョン「ああ」
やっと飯時になったのでバーガー食いながら見通しのよさそうな場所に立つが昼間の酔っ払いのようなヤツはいない。とても暇だ、地元のサルーンはもっと荒れていたのだが
ジョン「揚げたひき肉とパンそして野菜の組み合わせ・・・イイナ。モグモグ」
もう直ぐ8時、食事を終えた宿泊客が部屋に帰った後はポーカーやってるか飲んでるやつが殆んどだ
ジョン「ん~バクチは揉め事の種だからな。移動するか」
主ににカードをやってる奴らが集まってる場所の近くの席に座り警戒する
アレックス「ハイ、ジョン調子はどう」
ジョン「ああ平和でなによりだ。仕事はもういいのか」
アレックス「ええ、オヤツにコーヒーとドーナッツはどう?」
ジョン「おお、ありがとなモグモグ」
アレックス「ねえジョン今日の技どこで覚えたの?」
ジョン「ん?、親父から教わったんだよ、教育熱心でなモグモグ」
アレックス「話し聞かせて、敵に囲まれた時どう切り抜けるとか、決闘の時の決め台詞とか」
ジョン「オマエはいったい何を期待してるんだ、喧嘩云々は散々したが俺の親父は普通の牧童だぞ」
アレックス「え~凄腕のガンマンとかじゃないの~本物のアウトローの武勇伝が聞きたいのに」
ジョン「はぁ・・・おまえな小説の見過ぎだ」
アレックス「えーじゃあさ、わたしにやった技教えてよ、それらしい事まったく知らないわけじゃないでしょ」
ジョン「あー・・・すまん、何と無くやったからうまく説明できん」
アレックス「おい」
ジョン「そういやおまえ何でコックやってるんだ、なんか賞金稼ぎでもめざしてるイメージがあるんだが」
アレックス「昔銃を教えてくれた人が元南軍の衛生兵だったのよ、それでいつの間にか衛生管理の技術も身についちゃってフリーのコックやってるわけ、給料良いし」
ジョン「フリー?コックが?」
アレックス「そう、強者をもとめて荒野を旅してるのさフフフ、この大陸に来たのは一週間前だけどね」
ジョン「ずいぶん型破りなコックだな」
アレックス「でもそのおかげで今回の狩に参加できたわけ。一気に名を上げるチャンス」
ジョン「狩?」
アレックス「あれ、聞いてないの。このあたりを荒らしまわってるヴァンス組を叩くのがメインで、今回のドライブはそいつらを誘き出す為のエサって噂よ」
ジョン「はぁ!?」
アレックス「本当に何も聞いてないのね。下調べくらいしなさいよ」
ジョン「まじか!俺はただの牧童でガンマンじゃないぞ」
アレックス「だったら普通に牛守ってればいいじゃないかしら。表面上はそう言う契約なんだし」
ジョン「うわ最悪だ、ついてネェ・・・・」
アレックス「あっ、でも大物が来たら足止めして私に教えて、それなりの御礼はするわ」
ジョン「大物って?」
アレックス「まずボスのジェスター・ヴァンス、グレーの瞳が特徴よ。次にカーター・ヒル、派手な格好で騙し討ちが得意らしいわ。最後にハリー・ザ・キッド、身長が150cmぐらいの小柄な男で人を殺す時いつも笑ってるんだって。味方を見分けるために赤い帯をつけてるそうよ」
ジョン「グレーの瞳・・・そいつ変わった銃持ってないか、オートマチックピストルとか」
アレックス「オートマチック?いいえそんな話聞いてないわよ。もしかして知り合い」
ジョン「いや、最近読んだ小説にそんなヤツが出てきたんだ。悪いがそいつら見かけたら俺は真っ先に逃げるよ」
アレックス「あははは、あなたも人の事言えないじゃない。まあ競争相手が減って助かるわ。じゃあ私部屋に戻るわね、おやすみ」
ジョン「ああ、おやすみ。」
時刻は11時になっていた。客ももう殆んど居ないので上がってもいいかバーテンに尋ねる。もちろん今回の仕事についてもだ
ジョン「よお」
バーテン「やあジョンもう上がるか」
ジョン「ああ、それと三日後のドライブについてだが、ギャング潰すのがメインってぇのは本当か」
バーテン「アレックスから聞いたのか。まさかお前も狩に参加する気じゃないだろうな?」
ジョン「誰が参加するか!俺は護衛として雇われたんだ、それ以上の事をする気は無い」
バーテン「それ聞いて安心したぜ。いやウチのボスがそのギャングに一泡吹かせるってガンマンかき集めたのは良いが、みんなヴァンス組にかかった賞金が目当てで肝心の護衛を真面目にやってくれそうなヤツが居なくてな」
ジョン「・・・それで適当に銃が使えて仕事をちゃんとやってくれそうなヤツ奴を探してたところに俺が来たと」
バーテン「ああ、おまえは理想の人材だよ。銃の腕は下手なガンマンより良い上に牛も扱えるって言うしな。元々牛追いってんなら無暗に牛を危険にさらす様なことしないだろ」
ジョン「はぁ、なんか待遇がいいなぁと思ったらそういうことか」
バーテン「はは、まあ部屋に戻る前に一杯飲んでけよ。ボトルが空になったらまた次のヤツおごってやる」
ジョン「いや、今日は遠慮しとくよ」
階段を上り部屋に戻る、今回の仕事について色々と思う事があるがグダグダ考えても仕方ないさっさと寝て忘れる事にする事にする。
ジョージ「コラ、もっと姿勢を低くしろ!死にたいか!」
ジョン「こう撃たれっぱなしでじっとしてられるか!さっさと決着つけないと牛持ってかれるぞ」
ジョージ「焦るな、ヤバイ時ほど冷静にな。殺し合いならなお更だ」
ジョン「チッ、クソ牛泥棒が。おい家の方にも何人か向かってるぞ!」
ジョージ「クソ!こっちは囮か。ジョン後は任せるぞ」
ジョン「はぁ?!おいコラ待てクソ親父!!」
牛泥棒をなんとか蹴散らし急いで家に向かう
???「無様だな、これがあのジョージ・ウェストか」
ジョージ「ク・・・まったく年は取りたくねぇなハハ・・」
ジョン「親父!撃たれたのか、チィ!」
ジョージ「ジョン!」
「タン」
ジョン「!」
こっちが銃を構える前にヤツのオートマチックガンが放つ9mm弾が俺のショットガンの銃身を撃ち、跳弾がこめかみにかすった
???「ジョン・・・おまえが・・・」
窓から射し込む月明かりがヤツを照らす、見た事もない異様な銃と色黒の肌、狼のような灰色の・・・いや、銀色の瞳を・・・
END
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