第16話………(・…・)

 金縛りに掛かった事はあるだろうか?


 俺の初体験は現在進行形だ。


 昨日俺は部屋を見つけて直ぐベッドで寝た筈だ。


 うん。その時人の気配は無かった。


 なのに…。


「$€£%}%#」


 声が出ない…。


 いや、正確には出せるが発音がしっかり出来ない。


 何かの魔法か?


 じゃあ心の中で…。


(何でエリスがいるんだよ⁉︎)


 そう、俺の隣には何故か、一国の王女が下着が透けて見える服(ネグリジェ?)を着て寝ていた。しかも俺の正面から抱きつく様な格好だ。俺は横向き(部屋の扉を見るような感じ)で寝転がっている。


 とりあえず調べてみようと魔法探知の能力を創ろうとしたが、何かを感じて、創る能力をステルスの能力に切り替えた。早速発動すると、間一髪で扉が開いて、いつかの騎士長様がいらっしゃった。


 入って来た彼女は、驚き辺りを見回す。俺はその隙に、魔法探知の能力を創って使用した。


 使われた魔法は《スタン》。対象を麻痺させる魔法だ。しかも解除したら術者にバレるおまけ付き。


「おかしいな?魔法は解かれて無いのだが…」


 辺りを見回す彼女の次の言葉が俺のとる行動を決めた。


「せっかく姫様とのツーショットで既成z…、記念写真を撮ろうとしたんだが…」


 この世界にはカメラはない、だが一般常識で知っている。白紙に風景を写す魔導具があると‼︎


 俺は、魔法解除の能力を創り、すぐに使用。そしてベッドから抜け出して、ステルスを解除。そして、騎士長の持つ導具をストレージに放り込んだ。


 時間にして2秒だった。


「アレ?何処から…」


 騎士長が何か言いかけるが、俺はそれを遮り…。


「ちょっと事情を話してくれない?」


 俺は静かに言い放った。



 ✳︎



「まず、どうして此処に?」


「それは、準備中の姫様の部屋で貴方が寝てたからだが…」


 えっ‼︎


「すみません、気付きませんでした」


「いや、プレートをかけていなかった私達にも責任はある」


「そう言って貰えると助かります」


「ただ…」


 ?


「何ですか?」


「ここの寮は女子寮だし、部屋の家具は持ち込み性なので、普通は気付くのなのだが…」


 ………(・…・)


 やっちまったー


 校長に見栄を張らずに教えて貰えば良かったー


「すみません。全く知りませんでした」


「お前それでどうやって編入したんだ⁉︎」


 ああ、ついに貴方からお前にランクダウン。


「いや〜、手続きとか全部やって貰ったし〜」


「…………」


 頼むからその冷たい目を止めて欲しい。そうだ、本題に入ろう。


「そ、それはともかく何で俺よりも到着が早いんですか?」


「それは…。お前が姫様に『会いたくなったらくると良い』と言ったからだ。姫様はすぐに会いたがり、陛下の言うことも聞かず、荷物を纏めて転移魔法ですぐに跳んだんだ。むしろお前の速さに驚き何だが…」


「色々あったんだよ…。そんなことより、あんたが言ってた既成事実の方が気になるんだが…」


 ジト目で見る俺に対して、彼女の対応は…。


「わ、私の名前は『あんた』じゃないっ。私にはアンジェロ・リミグラムと言う名がある‼︎」


 流石に無理があるだろ…。目が泳いでるし…。


「わかった、わかった。でアンジェ何だったのアレは?」


(い、いきなり仇名は早いんじゃ…)


「聞こえないんだが…」


「いやっ、何でもないっ。でっ、その件だが…。姫様が荷物を纏めている間に、陛下が戦力になり得るお前を籠絡しろと…」


 最後だけバツが悪そうな表情をしながら言うアンジェ。


「成る程…。とりあえず飯食おうか?」


 うん。この問題は先送りだな。逃げたわけじゃない。ほんとだぞ?


 そして2人で朝食の準備を始めた。




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