約束/2

 翌日。僕はみんなに連絡を取って、ホトホトラビットに集まってもらった。

 先輩達全員は家の用事でどうしても外せないらしく来ていないが、いつものメンバーは揃っていた。


「で、今回はどうしたんだよ?」


 寝起きらしい蓮は、ボサボサな頭を掻きながら言った。


「愛華がまた巻き込まれた」


 その一言で、みんなの視線が鋭くなる。


「またあのヤンデレ妹かよ」


 蓮は呆れながらアイスティーを口にする。

 悪態をついた蓮を見て、正詠はため息をついた。


「どういうことか説明してくれ、太陽」


 僕は、昨日愛華がファブリケイトのSHTITの所在を気にしていたことと、愛華のスマートフォンがハッキングされていることを伝えた。


「……なるほどな」


 大きく息を吐いて、正詠は腕を組んだ。


「でも、もしかしたらまた……」


 そんな正詠を横目に、透子は辛そうに言葉を繋いだ。


「また、パーフィディ達と一緒にテラスを奪おうとしてるのかもしれないよ?」


 透子はテラスを見た。テラスは唇を一文字に結ぶだけで、何も答えなかった。


「俺は透子の言う通りだと思うぜ。妹のやつ、ちょっとおかしかったろ」

「私も、二人の意見に賛成、かも……」


 透子だけでなく、蓮と遥香も同じ意見だった。


「正詠は、どう思う?」


 正詠のみがまだ意見を言っていなかったので聞いてみるが。


「俺も同じだ。愛華はまたパーフィディ達と組んでる可能性がある。こっちから動くべきじゃない」


 全員がその言葉に頷いた。


「みんな……」


 これが、当然なんだろう。

 誰も、愛華を信用していない。

 そんな中、テラスはメッセージを表示した。

 ぴこん。

 皆さん、お願いです。私も天広愛華は信用していません。けれどマスターは……マスターだけは彼女を信じています。


「テラス……」


 天広愛華は、泣いていました。助けてと、彼女は言葉にすらできなかった。だから、助けてあげられませんか? 私はマスターが信じた彼女を信じます。マスターが助けてほしいと望んでいる彼女を、私は信じたいです。

 テラスの言葉に、正詠は大きく息を吸い込んだ。


「お前達は本当に全く……ロビン。フルダイブ出来る施設を探してくれ。出来ることなら俺達の学校が良い。あそこにはジャスティスも居たからな」


 ロビンは頷いた。


「けっ。ノクト、テメーはリベリオンのアクセスデータを調べろ」


 ノクトも頷く。


「二人とも……良いのか?」


「良いも悪いも、お前の妹だろ? あいつは昔からチーム太陽の一人だしな」

「俺はもうこんな面倒事終わらせてぇだけだ。それに……いつもあいつらに先手を取られるのが気に入らねぇ」


 僕は頷いて遥香と透子を見た。


「もう……あんたもテラスも一度言ったら聞かないんだもん。いいよ、手伝ってあげる」

「私も、手伝うよ。その……怖いけど……」


 みんなの相棒も頷いて、テラスの手を取った。


「その代わり、愛華には同行してもらうぞ。あいつにはその……太陽が話してくれな?」


 うんうんと、全員が頷いた。

 何となく愛華がみんなにどう思われているのか分かった気がする。


「わかった」

「おい優等生。リベリオンのアクセスログはクソも役に立たねぇ。海外サーバーを五百も経由してるし、行き着く先は閉鎖サーバーだ」


 空気を変えるつもりなのか、蓮はノクトが表示したデータを見ながら正詠に声をかけた。


「五百って……あいつら本当に何なんだよ」


 ノクトが表示しているデータを正詠も覗き込む。それを見て眉間に皺を寄せた正詠は、データをロビンにフリックして渡す。


「ロビン、この閉鎖サーバーのログを全部頼む。あと地下演習場の空き時間はどうなってる?」


 ロビンは正詠の指示でログを調べつつも、学校の地下演習場の空き時間を表示した。


「そうか……施設は王城先輩たちが県大会のために押さえてくれていたから大分使えるな」


 口元を隠し、正詠を考える仕草をすると。


「正詠くん、私がサーバーとかは調べるよ。それよりも……」

「助かる、透子。それなら俺は……あいつらを〝倒す方法〟だな」


 本当に正詠はため息の数が多いなっていうほど、またため息をついた。


「〝倒す方法〟か……」


 僕はロビンを見た。あのとき、テラス達の攻撃は確かにリベリオンに命中していたにも関わらず、ダメージらしきものは一切与えられていなかった。


「あれは普通の相棒とは違う。AIだと言っていたよな、ジャスティスは」


 でもよくよく考えれば、テラスだってAIだ。


「人間と同期している特殊なAIだ。そこがまずロビン達とは違う」


 正詠は人差し指で自分のこめかみを二度叩いた。


「あの時優等生のロビンは……リベリオンを殺すことを決めたと言った」


 感情を殺しつつ、蓮は口にした。


「そうだな?」


 ロビンは首肯し、胸に手を当てた。


「そのあとの攻撃で、リベリオンは『痛い』ってはっきりと言ったよね?」


 続けたのは透子で、正詠以外が頷いた。


「ロビン。お前はあの時、何をした?」


 正詠の問いにロビンは首を振った。


「答えられないのか?」


 ロビンは首肯する。

 みんなしてため息をつく。


「なぁテラス。お前って凄い相棒なんだろ? 何かこう……ないのか、ロビンやったようなやり方とか、最後に使った武器とかさ」


 テラスは少しだけ考える仕草を見せると、一度頷いた。

 ぴこん。

 マスター以外に伝えたいことがあります。


「って、何で僕以外なんだよ。普通逆だろ」


 テラスのこういうところは未だによくわからない。

 けれど、みんなは何か合点がいった顔をした。


「太陽、少しカウンターに行ってくれ。ちゃんと話は伝えるから」


 予想外な正詠の発言に「は?」と思わず声が漏れた。


「だからそういうのは無しに……」

「頼む。お前を仲間外れとかそういうのにしたいわけじゃない。ただ……お前がテラスのことを忘れている間に大事なことがあったんだ。必ず、時期を見て話すから」


 正詠の真摯な瞳は、嘘を含んでいるものではなかった。本当に今は真剣な話せないことなのだろう。


「むぅ……ちゃんと話してくれるんだな?」

「すぐには無理だが、ちゃんと話す」

「……わかった」


 僕は立ち上がって、カウンター席に座った。


「あっちはあっちで秘密会議か?」


 親父さんは笑みを浮かべながら僕にオレンジジュースを出してくれた。


「みたいですよ。うちのテラスちゃんは女の子だから隠し事が多いみたいです」

「隠し事、ねぇ……」


 そのとき、親父さんの目が鋭くなったことに僕は気付いたが何も言わなかった。


――……


 太陽が席を外すと、テラスは頷いた。


「テラス……これでいいんだな?」


――ありがとう、正詠くん。


 テラスは人間のように微笑みながらメッセージを表示した。


「さっさと話せ」


 蓮は強くテラスを睨み付けながらそう言う。そんな蓮に透子は「まぁまぁ」とでも言うように彼の肩を叩いた。


――単刀直入に言います。あなた達の相棒ではパーフィディ達には傷一つ付けられません。


 その言葉に皆が息を飲む。


――このまま戦おうとするのは自殺行為です。計画中止を提案します。


「ヤダ」


 すぐに遥香は答えた。


「ひか……テラスが何を言っても、もう私達は決めたの。だから教えて。あいつらに勝てる方法を」


 遥香の言葉に四人は同意を示すように首を縦に振る。


――本当に、中止しないの?


「しつけぇ。俺達がやると言ったらやるんだ」


 四人の意思が固いのがわかると、テラスはため息をついた。


――……わかりました。ではまず、彼らについて説明します。


「人間と同期している特殊なAIなんだろ?」


 蓮が先程正詠が言ったことをそのまま繰り返すが、テラスは首を振った。


――正確に言うならば、彼らは生命体です。私達は彼らのことを〝電子生命体サイバーライフ〟と呼称しています。そして、これがあなた達の相棒が彼らにダメージを与えられない最たる理由となります。


 正詠は何かに気付いたようだが、他の三人はテラスの言葉の意味を理解できずに続きを待った。


――ロボット工学三原則。ご存じありませんか?


 テラスがそれを表示し、透子がぽんと手を叩く。


「わかんねぇ」

「何それ?」


 遥香と蓮の返事に、正詠は項垂れると額をテーブルにぶつけた。


「何太陽みたいなことしてんだ優等生」

「バースデーエッグの授業で先生が少し話してたろ。アイザック・アシモフって作家のレトロ小説について」


 額をさすりながら正詠が答えると、それに小さな笑みを浮かべながら透子は補足した。


「一つ、ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。一つ、ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。一つ、ロボットは、前二つに反するおそれのない限り、自己を守らなければならない」


――その通りです。そして、その理念はSHTITにも適応されています。わかりませんか?


 遥香と蓮は逡巡し、蓮は「あぁ」と頷いた。しかし、遥だけはまだ頭を抱えており、テラスが言いたいことを理解できずにいる。

 さすがにこれ以上待てないのか、テラスは続きを話し始めた。


――このテラスも、ロビンも、リリィもノクトもセレナも、〝人間〟には危害を加えられません。〝人間〟は大別して生命です。だからパーフィディ達、電子生命体には危害を加える権利はないのです。ですが……彼らは完全な生命体ではありません。


 ロビン達はテラスを不服そうに見つめた。そんな彼らに、困ったように微笑んだ。


「じゃあ何で優等生のロビンは、リベリオンを倒せたんだよ」

「感覚共有……だけじゃないよな、テラス?」


 テラスは辛そうに目を伏せるが、それでも何とか微笑みを浮かべた。


「あの時ロビンは……殺そうとしたのです。〝人間〟という生命体の命令ではなく〝相棒〟というAIの意思で、相棒としての存在のリベリオンを」


 テラスは大きく息を吸い込む仕草をしつつ、話を続けた。


「〝相棒〟同士での殺し合いならば、先程の三原則は適用されません。あくまでも彼らは生命体でもありますが、それでもAIの一種ですから。詭弁なんです。それでも、その時だけロビンはその詭弁を無理矢理通したんです」


 そこまで話すと、テラスは自分の手の中から弓を出現させた。


「それ、は……」


 その弓はリベリオンを倒したとき、確かにロビンが手にしていたものだった。


――天之麻迦古弓。矢を引けば天まで届かせる神話の弓です。これには特殊な属性が付与されていて、そのおかげで正気に戻ったロビンでもリベリオンに傷を負わすことができました。


 その弓をテラスはロビンに手渡した。ロビンはそれを受け取り一頻り眺めると、またテラスに返す。テラスの手に戻ると弓は光の粒子となって消えていった。


――これは正詠くんとロビンに、我々が貸し与えたものです。感覚共有状態ならばいつでも呼び出せるでしょう。


 そこまで話して、テラスは大きくため息をついた。


――けれど、それだけです。弓は貸せても矢の許可が再び下りることは難しいでしょう。


「ならその許可を出しゃいいだろうが。俺達には今その力が必要なんだ」


 蓮は冷たい声をテラスに向ける。


――その許可を出すのは私だけではありません。全世界の相棒の意思が必要となります。


「全世界の相棒って……そのまんまの意味だよね?」


 遥香はテラスに問う。それにテラスは首肯した。


――あのとき、全世界の相棒が正詠くんとロビンを認めました。友を守るため、自分が傷付くことすらも厭わず、それでも戦いを選んだ姿に、彼らは天之麻迦古弓と天羽々矢あめのはばやを一本貸すことを決断したのです。


 テラスはロビンの頭を優しく撫でた。


――これは前代未聞の事態なんです。全世界の相棒が、どのような状況であれたった一人の相棒の我儘を良しとし、〝人間〟である高遠正詠を助けたのですから。


 テラスは涙を流して、ロビンを抱き締めた。

 彼女が語ることは全てではない。あの時その総意に対して口を出したのはこの少女で、その口利きがあったからといっても過言ではないのだ。


――〝人間属性〟の剥奪……つまり、あの時全世界の相棒はリベリオンを〝生命体〟として認めず、ただのデータに格下げすることを許可し、実行したのです。わかりますか? 電子世界の中とはいえ、〝人間〟を〝家畜〟未満としてみなしたと言っても良いあの意味を。


 その言葉に、四人は深く息を吸い込んだ。

 感情のある相棒。それが仲間を……見捨てたのだ。


「テラス……つまりお前は……」


 正詠は一度言葉を切って。


「どのような理由であれ、これ以上〝仲間〟を傷付けたくない、そう言いたいんだな?」


 テラスは頷いた。


「テメーだって決勝戦の時、リベリオンとリジェクトに攻撃したじゃねぇか。今更綺麗事かよ」


 反発するように発せられた蓮の言葉は真実だ。校内決勝戦でリベリオンとリジェクトが襲撃したとき、確かにこのテラスは二人に攻撃を仕掛けた。


――あれはあなた達の意思ではなく私の意思です。人間が相棒を倒そうとするのと、私達が彼らを粛清するのとでは大きく意味が違います。


「何が違うってんだ!?」


 蓮は声を荒げ、テーブルを強く叩いた。


――あなた達に、我々の〝命〟を好きにする権利などない。あなた達の世界に法があるように、私達の世界にも法があるのです。


「じゃあどうすれば良いの? 太陽君は愛華ちゃんを助けたいって言ってるよ? 私達の仲間が傷付けられても、それを黙って見ていろとでも言うの?」


 透子は震える声で問いかけた。


「そんなの、あんまりだよ……」


 涙を浮かべた透子を見て、テラスはロビンを腕から解放し透子の手へとそっと自分の手を重ねた。


――太陽君だけは……いいえ、このテラスだけはそれに捕われません。詳細は言えません。ですがだからこそ、この子はゴッドタイプと呼ばれるのです。この子だけは、彼らを倒せるのです。


「じゃあテラスにお願いすれば……!」


 遥香は先が見えたことに喜んだが。


――遥香ちゃん……遥香ちゃんは太陽君に、って、お願いできる?


 続けて放たれた言葉に、すぐに表情を曇らせた。


――この子はまだ幼い。みんなが……いいえ、太陽君さえ望むのなら、きっと敵対する相手を殺す選択をするでしょう。そんなテラスを見て、太陽君が耐えられると思いますか?


 誰もが彼女の言葉に答えなかった。いいや、答えたくなかったのだろう。そもそも、天広太陽という人間がこの事を知ったのなら、彼はまた頭を抱えるに違いないのだから。優しい彼が、自分の相棒が手を汚すことを良しとするはずないのだから。


――だから約束してくれませんか?


 テラスは強い意思を宿した瞳で、彼ら一人ひとりを見つめた。


――決して誰も傷付けずに助けると。それならば、私達も力を貸しましょう。


 テラスが語るのは理想だ。そのようなこと有り得ない。少なからず相手がこちらに手を振り上げている以上、身を守るためにこちらも手を振り上げるしかない。


「……ひか、いや、テラス」


 誰もが口を開くのを躊躇う中、正詠は口を開いた。


「その約束は……出来ない」


 テラスは悲しそうに目を伏せる。


――承認要請。ロビン、リリィ、ノクト、セレナ。彼らにエグゼクター権限を希望します。


 テラスは機械的なメッセージを表示した。


「どういうことだ、テラ……?」


――何を勝手に! いけません、テラス!!


 このテラス自身もまた、何が起きているのか理解できていないようだった。


――テラ……!!


 ぶつりと、何かが途切れた音がする。

 ぴこん。

 マスター! マスターを呼んでください!

 テラスはメッセージを表示した。


「お前は……テラス、なのか?」


 ぴこん。

 マスターを呼んで!


「わかった、わかったから……」


 変化し続ける状況に、正詠だけでなく全員が頭を抱えた。


――……


 何故かヒートアップしていた場所に呼び出される。蓮とか何か殴ってきそうでぶっちゃけ少し怖いんだけども。


「何か吠えたりしてたけど、大丈夫だったか?」


 テラスに声をかけると、テラスは跳んできて僕の顔に張り付いた。


「えーっと、これは一体全体どういうことなんだ?」


 正詠は目頭を押さえながら、少しずつ説明をしてくれた。

 まず、僕らの相棒がパーフィディ達を倒すことは不可能であること。これはロボット工学三原則に則っている以上確定事項らしく、前のようにロビンが暴走するような状況も作れないし、リベリオンを倒した武器も当てにはできないとのことだった。

 けれど僕のテラスだけは、理由はわからないがパーフィディ達を倒せるということ。しかしそれは、テラスだけに重責を負わせることになってしまうこと。


「テラスがすげー相棒だってことはわかったけどなぁ……」


 テラスは正詠が話を始めると僕の顔から離れて、テーブルの上で疲れたようにちょこんと座っていた。


「……なぁ、テラス。パーフィディ達って、お前達と同じ相棒なんだよな?」


 ぴこん。

 僅かな違いはありますが、ほぼ同じと言っても問題ありません。


「となるとまぁ、やっぱ仲間になるし倒しづらいよなぁ……この話を聞くとさ」


 その言葉に、みんなが目を丸くした。


「な、なんだよ」

「太陽君、本当に話聞こえてなかったの?」

「なんだよ、透子。疑ってんのか?」

「そういうわけじゃないんだけど……」


 僕はテラスの頭をゆっくりと撫でた。


「なぁテラス。愛華を助けるにはどうしたらいいかね?」


 テラスはしょんぼりと頭を垂れると、口を尖らせた。

 ぴこん。


――一時解答。ロビン、リリィ、ノクト、セレナ。四者にエグゼクター権限付与はまだ承認できません。審議は継続します。しかし、テラス。あなたにはバディクラウドより貸出許可が下りました。


 テラスの頭上に謎のメッセージが表示されると、テラスの手に光と共に刀が現れた。


「……なんだよ、これ。聞いていないぞ、僕は」


 みんなの顔を見たが、これに関してはみんなも同じようだった。


――天叢雲剣あまのむらくものつるぎ。あなたの力を鑑み、与えられる最強のものを。


 テラスの手に現れたそれは、すらりとした白銀の刀身。鍔には飾り気がなく、柄にはきらきらと光る白い布が巻かれていた刀だった。


――彼女は少し心配性なようだが、我々は……君を心から愛している。だから守りなさい、君のやり方で。誰も傷付けず、誰もが笑顔になれるために。そのために自身が傷つくことになっても。


 テラスはどこかを見て、こくりと頷いた。そして現れた刀を僕らに見せて、また頷いた。


「どういうことなんだよ、なぁ?」


 四人は顔を見合わせながら、首を傾げていた。


「さっき……テラスが何かを申請していたんだ。俺達の相棒がパーフィディ達を倒せるような武器の申請許可かと思ったが……」


 正詠が頭を捻らせながら説明していたが、彼自身もよくわからないのかまだ言葉を探していた。


「でも、その……テラスにとっては、パーフィディ達も仲間だから武器を持つのは……」


 透子は目を伏せて口にした。その気持ちを察してか、セレナは透子の肩に乗って頬をそっと撫でていた。


「ねぇ、テラス。あんたはあいつらを、その……倒す、つもりなの?」


 遥香の質問に、テラスが手にある刀をじっと見つめた。やがてテラスは僕に答えを求めるような顔を向けた。


「テラス。お前は僕のために、愛華を助けてくれることを選んでくれたよな?」


 テラスは頷く。


「じゃあ僕も、お前の仲間を守りたい。その、難しいだろうけどさ、なんつーのかな……実際まだ愛華は何もされてないし、先にパーフィディ達をこらしめて、さ」


 ぴこん。

 我らチーム・太陽は仲間を見捨てません。それが、我々の不文律でルールで誇りです。それは人間だけに適用されない。我々相棒同士にも適用される。それで間違いないですか?


「あぁ間違いないよ。そうだよな、みんな?」


 困ったような表情のまま、みんなは首肯する。


「なぁ作戦参謀。誰も倒さないで、愛華を助けたい。作戦、頼めるか?」

「お前はどうしてそんな難しいことをさらりと言ってくるんだ」

「けっ。まだヤンデレ妹は何もされてねぇ。まだ時間はある」

「でも正詠君一人だと無理だよね……」


 深刻そうな顔をする、頭を使って何とかする組。それをぼけっと見つめる僕と遥香の頭使わない組。


「とりあえず作戦は俺達で考える。お前ら二人は宿題でもやってろ」


 頭使う組はあぁでもないこうでもないと話し始めた。

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