夏休み/8


 それからも似たようなことが何度もあり、僕とテラスはすっかり疲れ果てていた。


「ほれ、間もなく終わりだ」

「やっとっすかぁ……」


 大きく息を吐いて森から出ると、ほぼ同時にみんなと合流した。


「おー……偶然だな、みんな……」


 正直言って勉強よりも頭を使った。本当に楽しかったのは昼間だけとかどんな地獄合宿だよ。


「さて皆さん」


 ぱんと両手を合わせて笑顔を浮かべる風音先輩に対し、「もう何もできませんからね!」と僕は釘を刺した。


「ふふ、今日はもう何もありませんよ?」


 はっきり言ってかなり信じがたい。


「でもとっても楽しかったでしょう?」

「僕は疲れましたよ、勉強よりも… …」


 みんなもそれは同じようで、全員がため息をつきながら頷いていた。


「あと二日もあるんですよ? もっともーっと楽しいことが」


 変わらない笑みを浮かべていた風音先輩は、本当に、とてつもなく楽しそうだった。


「あ、ちなみに罰ゲームは翼と那須さんのペアです。しっかり洗ってくださいね?」


 王城先輩と遥香は小さくため息をついて、頷いた。


――……


 旅行二日目。昨日の疲れもあり、全員は海に出てているがのんびりと過ごしていた。


「テラスとセレナは砂遊びか?」


 テラスは元気良く頷いた。

 水着に着替えているテラスとセレナは僕の近くで砂の城を作っていた。どうやら昨日の僕と晴野先輩の作品が大層気に入ったらしく、その写真を真似しながら作っていた。


「太陽」

「なんだよー蓮ー」

「ノクト知らないか?」

「はぁ?」


 蓮を見ると、きょろきょろと頭を動かしていた。らしくない動きに僕も思わず彼のようにノクトを探した。


「ノクトって蓮の側をあんま離れない印象あったけどなぁ……」

「今まで勝手にいなくなったことはなかったんだがよ……」

「んー……セレナの近くにもいな……あっ」


 テラスとセレナが作っていた砂の城、その下にノクトは埋まっていた。


「……」

「……」

「おーい、遥香ー透子ー」


 二人を呼ぶ。そして、砂に埋まっているノクトを指差した。


「何これ、超可愛い」

「うん、超可愛い」


 二人はスマホで写真を撮り始める。何事かと先輩達と正詠も様子を見に来て、一同は写真をパシャパシャと撮り出した。


「おいノクト」


 ノクトは首だけを動かして蓮を見た。その表情はバディタクティクスの時と同じように凛々しかった。


「何してんだ、お前」


 ぴこん。

 眠っていたら体の上に城が建築されていました。


「いや、お前……何してんだよ」


 ぴこん。

 二人があまりにも真剣でどうしようもありません。助けてください。


「助けてほしいのかよ……おい、テラス、セレナ。ノクトの上で遊ぶな」


 テラスとセレナは蓮をちらりと見て、返事をせずにまた砂の城を作り始めた。


「おい、太陽」

「まぁまぁ良いじゃないか。夏の思い出だよ、思い出」


 ふわぁと大きくあくびをして、僕は寝転がる。太陽の熱は心地よく、僕の体を適度に火照らせてくれる。


「テメェを埋めるぞ」

「やめてください」


 そんな穏やかな昼間だった。


――……


「はい、今日の夜の相棒ゲームは……」


 夕食後、みんなの宿題の区切りが付いたそんなとき、また風音先輩は何か言い出した。


「またやるんですか?」


 正詠は首を振りながらため息をついた。


「やりますよ?」

「マジっすかぁ……」


 ただでさえ宿題で疲れているのに、風音先輩は相変わらず容赦ない。


「マジです。今日は人生ゲームをやります」


 風音先輩がぱちんと指を鳴らすと、セバスチャンさんの相棒がゲームルールを僕らみんなの相棒にメッセージを表示させた。


「しかも昨日と同じペア……」


 遥香は項垂れる。


「昨日と同じく少し複雑なルールです。罰ゲームはこれまた昨日と同じく皿洗いです」

「むぅ……あんな気を遣う皿洗いなんて二度とやりたくないし! 勝ちますよ、王城先輩!」

「うむ。その意気だ、那須」


 今度のルールも相棒に詳細な指示を出せ、行動一つひとつをしっかりと考えて進めなど、サイコロを単純に振って解決するようなものではなかった。


「では、まずは昨日最下位だった翼と那須さんのペアからです」


 二人を拳を握り、各々の相棒にサイコロを振るよう指示を出した。

 ちなみに、このゲームで最終的に負けたのは僕と晴野先輩で、僕は皿洗いの最中に一枚六万円という高級すぎる皿を割った。風音先輩は笑って許してくれたが、心中穏やかではありませんでしたとさ。


――……


 すっかりこの旅行は、昼の海水浴パートと夜の相棒ゲームパートになっているなと思っていた矢先の出来事だった。


――今日は昆虫見学をしましょう。


 いつもの有無を言わせぬ優しい微笑み。そして僅かに揺れるおっぱい。

 逆らえるわけない。おっぱいはこの世で一番強い。ちなみに採集するつもりはないようで、本当に見学するだけだった。


「おーカブトムシとか初めて見た……」


 いつの間に準備されていたかはわからないが、木には罠が仕掛けられていた。たぶんセバスチャンさんとマリアンヌさんがやってたんだろうけども。


「カナブンだぁ!」


 僕と遥香は罠に群がっている昆虫を見て楽しんでいたのだが、如何せん他の人達はそうではなかったらしい。


「お前らは子供の頃から変わらねぇなぁ……」


 僕らから一歩ほど後ろにいた正詠は腕を組みながらそんなことを言う。


「正詠は昔から虫ダメだったよな、ほれ」


 カブトムシを採って正詠に見せると、眉間に皺を寄せた。


「やめろ」

「かっけぇじゃん、カブトムシ」


 僕は自分の腕にカブトムシを乗せて見せる。すると、テラスはそのカブトムシに乗っかった。


「子供の頃はカブトムシに乗るとか憧れてたなぁ」


 テラスはバランスを取りながら僕を見て、にっこりと笑った。


「先輩達も虫ダメですなんですか?」


 先輩達と蓮と透子は、正詠よりも更に後ろから僕と遥香の様子を見ていた。


「大人になると虫は駄目になるんだよ」


 晴野先輩が答え、残りは頷いた。


「まぁゴキブリとかと似てるもんな」


 カブトムシを木に戻して、今度はクワガタを手に取る。


「……」

「おい太陽。変なことしたらぶん殴るぞ」


 蓮に釘を刺されるが。


「うえぇぇぇい!」


 クワガタを持って後方に走り寄った。


「ばっか!」

「ぬぅ!」

「あらあら!」

「この馬鹿野郎!」

「きゃあぁぁぁぁぁ!!」


 蜘蛛の子を散らすように四人は逃げていった。


「あははは! どんだけびびってんだよ、昆虫にさ!」


 カブトムシと同じように腕に乗せようとしたところ、めきっと指を挟まれた。


「いたぁぁぁぁぁ!!」


 クワガタに指を挟まれた。

 いや、痛いんですけどぉ!


「バチが当たったな、太陽」


 笑いながら正詠は言う。


「いや、痛いんすけどクワガタさぁん!?」


 クワガタに叫ぶと、僕の指を離して飛んでいった。


「ひでぇ目に遭った……」

「いやぁ、太陽がひどい目に遭うのはこれからじゃない?」


 遥香は指を差して言うので、その先を見た。そこには水鉄砲を持った先輩達がいた。


「ずるいぞ、僕にも武器を寄越せ!」


 水鉄砲の銃口が僕に向けられる。


「慈悲はない」


 王城先輩の一言と共に、一斉に発射された。


――……


 昆虫見学の後はいつも通りの海水浴で、それが終わるといつもの勉強会。そして……。


「さて、今日の相棒ゲームは……」


 もう既に全員がツッコミを入れることを諦め、「今日は一体どんな面倒なゲームなんだ」と若干の期待も込めて、僕らは続きを待つ。


「バディタクティクスをやりましょう。前の……決勝戦の続きを」


 心臓が一つ、大きく鳴った。


「明日帰ることになりますからね。それに、来月からは地区大会……県大会もありますからね。まぁ私達ならどちらも簡単ですけど」


 楽しそうににこやかに、風音先輩はいつも通りに言葉を続けた。


「あぁそれと……ここならギャラリーもいないので、私達も本気で戦えますもの。校内では後れを取りましたが……」


 風音先輩の目に、笑いながらも確かな敵意が宿るのがわかった。


「晴野……先輩はどうすんだよ?」


 蓮は誰しもが言いにくいことを口にし、視線が晴野先輩に集まった。当の晴野先輩は肩を竦めてニヒルな笑みを浮かべる。間違いなくこの人は正詠の先輩だ。


「勿論、俺達はハンデをもらうぜ? 踊遊鬼も本気で戦えないしな」

「ハンデって……?」


 遥香が晴野先輩に問いかけ、答えたのは王城先輩だ。


「我々のチームにはセバスチャンとマリアンヌが入る。五対五での勝負だ」

「けっ。それでも楽勝じゃねぇか。そっちの狙撃手スナイパーがそれじゃあ決勝戦の続き何てなりゃしねぇ」


 皮肉か優しさか、それともこのような形での続きを認めぬ蓮の誇りか。彼はそんなことを言うが、それを先輩達は一笑した。


「戦っている最中にそれを言えたら褒めてやる、日代」


 王城先輩は蓮に対し、挑発的な答えを返した。


「あとで吠え面かくなよ」


 王城先輩のその言葉で、蓮の闘志に火が点いた。


「さて、日代くんはやる気充分ですが他のみんなはどうですか?」


 返事はするまでもない。

 決勝戦の続きが出来るというのなら……あの決着をつけられるというのなら、僕らが断る理由なんて、どこにもなかった。


「では、地下に行きましょう。あぁ、そうだ。地下のフルダイブ施設は〝完全局所制限帯〟です。リベリオンとかいう奴らに邪魔されることはまずありませんよ」


 僕らの一抹の不安は、その一言で吹き飛んだ。


 地下の施設で僕らは準備を整え、数週間ぶりにフルダイブを行った。

 完全局所制限帯ということもあって、通常のフルダイブとは違い目かチカチカすることもない。


「完全局所制限帯とか教科書でしか見たことなかったけど……ある所にあるもんだな」


 完全局所制限帯とは、完全絶対座標を持ったローカルネットワークのことだ。完全局所制限帯からは外部へのネットワークへ出ることは出来ないが、特殊なセキュリティ機器を介することで外部のネットワークから情報を得ることが出来る。

 これを利用してフルダイブを行うことで相棒の電子遭難サイバーディストレスを理論上完全に防ぐことが可能であり、こちらが求める情報以外をシャットダウンし、ウィルス感染と言うものも防げる。

 ちなみに、これは期末テストに出た。


「でもこの設備って普通よりめっちゃ金かかるんだよな」


 この設備が用意されている施設は国会図書館であったり、国会議事堂であったりと、国家運営の巨大施設が多い。


「さすが風音先輩の家って感じだな」


 隣にいた正詠はそんなことを僕に言う。


――あーあー、マイクテスマイクテス。聞こえるかしら、チーム太陽の皆さん?


 空間に風音先輩の声が聞こえた。「聞こえまーす」と僕がみんなの代わりに答える。


――じゃあルールを説明するわね。基本ルールは校内バディタクティクスに準じます。けれどプライドルールは今回適用しません。その代わり、あなた達の信条に準じたルールを用意しました。


 僕らの目の前にその追加ルールが表示された。


――【オールサバイブ】。誰か一人でも戦闘不能になった時点でそのチームの敗北となります。


 確かに、僕らの信条に適っている。


「一回戦以外、私達は誰も戦闘不能になってないし、これからもそんなのは嫌だもんね」


 遥香は頷きながらそれを見ていた。


――誰かを犠牲にして勝利を望まないあなた達にとっては良いルールでしょうけど……全員守ることが難しいというのも知っているわね?


 風音先輩の声色が僅かに変わったことに気付いたのは、きっと僕だけではないだろう。


「それでも俺達はそれを貫く。それがうちの大将の唯一かっけぇところだからな」


 唯一、というのは気になるが、蓮の熱い気持ちは確かに伝わる。


――そう。では始めましょう。フィールドは陽光高校。開始位置も全く一緒よ。決着をつけましょうか、情報初心者の皆さん?


 アナウンスが途切れるとロビンと正詠が僕らを見て頷いた。


「踊遊鬼がどこまでやれるかわからないが、前と同じだ。まずは逃げる。そしたらきっと風音先輩のイリーナが追ってくる。天馬の騎乗条件は覚えているな? まずはあれを潰すぞ」


 みんなが頷くと僕らと相棒の体が僅かに光を帯びていく。


「行こう、みんな!」


 僕の一言に。


「あぁ!」

「よっしゃ!」

「おう!」

「うん!」


 やっぱりみんながバラバラに答えた。


 全員が転送されると、カウントダウンが始まった。


「テラス、勝つぞ」


 テラスは頷いた。

 カウントがゼロになると同時に、前と同じく僕ら全員は窓はぶち破って逃げ出した。

 そしてやはり前と同じく、光の柱が空へと伸びた。


「何が本気で戦えない、だ。あの野郎……前と遜色ない威力じゃねぇかよ」


 そして前と同じく、裏山の前で僕らを待っていたのは……。


「ここまでは前と同じ、ですかね?」


 天馬に跨るイリーナ。


――スペシャルアビリティ、天馬咆哮てんばほうこう。ランクEX+が発動しました。全属性で超広範囲へ超威力の魔力依存攻撃を行い、フィールドを小時間炎上させます。


 天馬が嘶くと、翼は輝き裏山を一気に焼き払った。


「ここからは、前とは違います!」


 透子の一言と共にセレナはノクトの肩を踏み台に、跳びイリーナへと攻撃を仕掛けようとしたが……。


「させませんよ、お嬢さん」


 いつの間にか現れた何かが、セレナを蹴り飛ばしていた。


「あれ、は……!」


 エクスマキナ。セバスチャンさんの相棒で、人生ゲームのときはあまり目立った活躍をしていない印象だったが。


「あいつは広範囲な攻撃が得意だ、油断すんなよ!」


 蓮が叫び、ノクトがセレナの援護に向かった矢先だった。土煙を上げながら、王城先輩のフリードリヒが突進してきた。


「この……やっぱあんたの相棒化け物だぜ!」

「その化け物に勝つつもりなのだろう、日代!」


 重い一撃がノクトに向かい、それを弾いたのはリリィだ。


「良い判断だ、那須」


 フリードリヒの拳とリリィの拳が搗ち合う。


「翼、那須さんと日代くんは任せたわ」

「うむ」


 天馬の手綱を引き、イリーナはセレナへと槍の切っ先を向けた。


「私は平和島さんと踊ることにします」


 槍を弾きながら、セレナは鋭い眼光をイリーナに向けた。


「セレナ、まずは五回当てます!」


 セレナは頷き、氷の槍を複数本放った。ほとんどをイリーナは砕いたが、一本のみ逃しそれは天馬に当たる。


――天馬。攻撃ヒット。残り四回です。


 イリーナは天高く舞い上がる。


「良い目をするようになりましたね、平和島さん」

「セレナ、スピードアップをリリィに!」


 リリィの機動が上昇すると、リリィは拳を固く握った。


「吹き飛ばすよ、風塵拳!」


 リリィはフリードリヒを吹き飛ばして、すぐに天馬に向かい高く飛び上がる。


「失策です、那須さん」


――スキル、正射必中。ランクCが発動しました。スキル発動後のみ、自身の攻撃に必中&威力上昇効果を付与します。


 飛び上がったリリィの背後から矢が中る。


「空では逃げ場もないでしょうに」


 イリーナは槍を振り上げた。


「テラス、他力本願セット、地雷矢!」


――スキル、他力本願。ランクEXが発動しました。アビリティ地雷矢Bがランクアップし、地雷矢Sになります。

――アビリティ、地雷矢S。投擲に分類される全攻撃が、爆発効果を持ちます。ランクA以上の場合、威力が上昇します。


 テラスが投げた石は天馬に当たる直前で爆発する。


――天馬。攻撃ヒット。残り三回です。


 それに続きロビンがノクトの肩を使い飛び上がる。


「行け、ロビン!」


 矢は中る直前で爆発した。


――天馬。攻撃ヒット。残り二回です。


「なるほど……投擲特防は爆発には利きませんしね……那須さんは囮でしたか」


 リリィとロビンが着地すると同時に、セレナはアイスウォールを使用し、周囲に氷の壁を作り出した。


「みんな、一旦引くぞ! 正詠、リリィが正射必中のターゲットだ! 一緒に逃げてくれ」

「ロビン、速攻! リリィをツレテ逃げろ!」


 リリィを抱えロビンは戦線を離脱しようとしたところ。


「ふふ、セバスチャン。もういいわよ?」

「さすがお嬢様。彼らの隙が気になっていたところです。エクスマキナ、スキル〝追撃〟、使いなさい」


――スキル、追撃。ランクAが発動しました。ターゲット、ロビン、リリィ。相手が逃亡中と判断されました。距離に関係なく魔力依存攻撃が必中します。


 氷の竜巻が二人の足元から舞い上がり飲み込んだ。


「透子、援護は任せた! 蓮、風音先輩を頼む! テラスがエクスマキナを止め……!」


――スキル、召集。ランクAが発動しました。フリードリヒ、踊遊鬼、フェリーツェをイリーナの近くに呼び出します。


 現れた踊遊鬼とフェリーツェは二人寄り添っていた。


「しっかり狙え、踊遊鬼」

「しっかり支えなさい、フェリーツェ」


――スキル、献身。ランクAが発動しています。対象の行動全てをサポートし、対象の全ステータス、全スキル効果、全アビリティ効果を上昇させ、自身は献身以外の行動を取れなくなります。


「なるほど……だから踊遊鬼は戦えたんですね」

「驚くのは早いぞ、天広」


 隙を突いたフリードリヒの攻撃にテラスがよろける。


「エクスマキナ、アビリティ〝死神の鎌〟用意……」


 ゆらりと、エクスマキナは鎌を横に構えた。

 死神の、鎌……?


「Fear of death, Do not know death buddy, hearty buddy. If it can endure a little farewell.(死を恐れなさい、死を知らぬ相棒よ、心ある相棒よ。少しの別れに耐えられるものならば。)」


――スキル、詠唱準備。ランクCが発動しました。特定アビリティの効果が詠唱行うことで強化されます。アビリティ〝死神の鎌〟、詠唱準備により効果が全体に及びます。


「テラス、正詠と遥香を助けて逃げるぞ!」


 エクスマキナに踵を返し、テラスはすぐにロビンとリリィの元に向かったが。


「言ったはずだぜ、天広。気持ちだけじゃあ伝わらないものもあるってよ」


――スキル、正射必中。ランクCが発動しました。スキル発動後のみ、自身の攻撃に必中&威力上昇効果を付与します。


 テラスの背中に矢が刺さる。


「テラ……!」

「さて、刈り取りますよ」


 セバスチャンさんの言葉で、エクスマキナはゆっくりと鎌を横に薙いだ。

 それと同時に、言い表せないほどの悪寒が背筋に走ったその刹那。


――チーム・太陽。全相棒、戦闘不能。よって、チーム・トライデントの勝利です。


 僕達は、負けていた。

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