想い出/駆け抜けろ、親友の元に
重い扉を開けると、がちゃりと遅れてロックがかかった。
「あっぶねぇ……」
正詠は呟いて近くにあった消化器を扉に挟んだ。
「ガムって意外と便利だね」
「蓮の機転だな。あいつ、ホントに勿体ねぇ」
正詠と遥香は廊下を駆け抜けていく。
「道はわかるの?」
「テラス、頼む」
ぴこん。
呼び出し音と共に、テラスは見取り図を表示した。
「この階段を上り切ったら、右。突き当りを左、すぐの扉を開けて階段を下る。鍵が開いてなけりゃあ鍵を取りにいく」
「それどこのバイオさ」
「俺的にはシックスだな」
さすが運動部。息を切らすこともなく二人は階段を上り切り、すぐに扉を開け二人は右に進んだ。
「すっごいレトロじゃん。じゃあ私はエイダかな?」
「いいやお前はヘレナだ」
「となると正詠はレオン?」
「そんな気分だ」
突き当りをすぐに左に曲がり、扉のノブを捻る。
「運が良い!」
扉は難なく開く。
「テラス!」
テラスは次のマップを表示した。さらに、細かい指示や見逃しやすい情報なども表示している。
「次は?」
「……この先、だ」
一枚の薄い扉。今までのものとは比べ物にならないほどの、薄い扉だ。
「見取り図じゃあ、愛華が降りて行ったのは舞台仕掛けの〝奈落〟だ。ここを通ればあの舞台の下に出る」
「あそこって……舞台なの?」
「相棒と一緒にやる、な」
正詠はその扉を開く。
「これからだ。ここまで来るのに愛華には会わなかった。となると……」
テラスが表示している見取り図を正詠は確認する。奈落から空に出る道は二本。正詠たちが通ってきた道を行くか、それとも反対の道を行くか。
「愛華なら、太陽は置いていかない」
女子が男子を運びながら進むのは、かなりの力がいる。最速で進んだ正詠と遥香よりも早く進めるわけがない。
「背中を追うだけ」
「その通りだ。行くぞ、遥香。いい加減愛華とも決着をつけたい」
「うん!」
二人はその一本の道を走り出した。何度か扉はあるが全て鍵は閉まっておらず、問題なく彼らは進んでいく。
それでも中々愛華の背中には出会わない。十分、いや二十分。もしかしたら三十分。彼らにはそれぐらい長く感じられた。
「長いね、正詠」
さすがに二人は息を切らし始めていた。
「そろそろ……だ」
階段を上る。
そこで二人は壁に手をやり、一つ大きく息を吸った。
「ようやっと……追いついたぞ」
太陽の頭を抱えている愛華の背中を、二人はようやっと見つけた。
「愛華!」
愛華は振り向く。
瞳から、血が混じった涙を流しながら。
「にぃは……私の、だもん」
辛そうに。
苦しそうに。
痛々しく。
「私だって……にぃを、助けるんだから」
より強く、愛華は倒れている太陽の頭を抱いた。
「あなた達なんて、だいっきらい!」
口を大きく開け、愛華は泣き叫んだ。
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