第一章 青の静寂と赤の鼓動

第一章 青の静寂と赤の鼓動 PART0 

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 クオリア。


 これは言葉ではいい表せない共通の感覚をさす。


 まず頭の中に、赤い林檎りんごを想像して欲しい。


 今、あなたが想像したアカ色はどんな色だろうか?


 アカといってもたくさんのものがある。


 赤、緋、朱、紅、茜……。


 これらはどれも赤色をさすが、決して同じ色にはならない。住む地域、環境によって林檎の色というものは変わってしまうからだ。


 対して林檎のは皆、同じものを想像することができる。


 林檎のまるさ、食べる時の音など、言葉では言い表せないものをイメージできるのは共通の感覚があるからだ。

 

 この共通の感覚『クオリア』ができる過程にはディープラーニングという、その人物が培ってきたが重要になる。


 だからたとえ、オレ達が双子だといっても、全く同じ記憶にならない限り、同じ『共感覚』を持つことはありえないのだ。


 オレは今、改めて自分の感覚に疑問を感じている。


 扱ったことがない指揮棒を通じて、魂が喜びに打ち震えているのだ。


 ピアノしか弾くことができなかったオレが劇団の指揮を通して、20人以上の音楽家をまとめ上げている。 


 この感情に抗うことはできない。

 

 きっとオレの魂の記憶クオリアが、火蓮かれんの体を通して、自分こそが本当の人格だと認識しているのだろう。


 本当に、は、ピアニストの水樹みずきで間違いなかったのだろうか――。


 


  

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