school-5 近くて遠い
あの時の担任のセリフを、校庭の鉄棒にぶら下がりながら思い出していた。
『一番の弱みは、お前と一緒だよ』
『お前の弱み、発見!』
俺の弱みが萌……なのは、俺が好きだからって意味だよな。
あいつにはバレてるし。
でも……あいつの弱みも……萌?
「……まさかな」
不安になりそうな気持ちを振り切るために、大きく体を揺らして鉄棒から飛び降りた。
開いた手のひらが鉄臭い。
この匂いは苦手だったけれど……
「これで背、伸びんのかな……?」
半信半疑だったけど、試せることは片っ端から試してみようと思ってた。
規則正しい生活がいいってネットに書いてあったから、夜も早く寝てる。
好き嫌いも良くないんだろうって思ったから、ちゃんとカボチャも食べてる。
母さんは背が低いけど、父さんやじいちゃんはそこまで低くないから遺伝子だってそんなに悪くないはずなんだ。
彼女の口から、直接『高身長がタイプ』だなんて聞いたことはない。
でも……こだわってしまう。
『イチー!!ウッチー!!』
『お、滝沢』
『私も手伝おっか!?』
『サンキュー、でも重いから女子は無理すんな』
あの日、橘にそう言われて、明らかに照れた萌の表情は今まで見たことがない。
薄いピンクに染まった頬と、恥ずかしさを必死に隠すその姿。
遠くて遠くて……
いくら頑張っても手なんか届かないままなんじゃないかって……
そう思えて
……泣いてしまいそうだった。
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