school-4 弱いトコロ

 段ボールに詰まった1年生の副読本。


「なんで俺なんだよー。重てぇー」


 放課後、担任に捕まった俺は教材運びの手伝い中。


 ピンと張った両手。


 少し太くなったはずの俺の腕は、並んだ腕と比べるとまだまだ細い。

 持っている段ボールも、あっちの方が重いことにすぐ気付いた。


 ……ちぇっ。


 俺はそんなこと考えてたのに。


「こういう時はやっぱり男の力だな!助かるわ~!」


「……う」


 そう感謝するこいつ。

 担任の橘は――ウマイと思う。


 身長のせいか、クラスの中で弟のように扱われる俺。

 可愛いと言われたくなくて、ぶっきらぼうに振る舞ってみたりするけれど、それでもやっぱり分類は『可愛い』だ。


 そんな俺をちゃんと男にしてくれる。


 担任のたちばな 右京うきょう

 バスケ部 顧問。

 この東高の卒業生。


 熱血漢だけど、暑苦しくないイケメン。

 いつも元気だけど、汗くさくないイケメン。

 身長180センチの、大人の男。


「……ずりー」

「ん?なんだ?」


 いつの間にか少し前を歩いていた先生が振り返る。


 広い背中と長い手足。

 男の俺でさえ憧れるわ。

 好きになるのも無理ねぇよな。



「……先生って弱みあんの?」


 ふと、聞いてみたくなった。

 悩みとかあんのかな。

 ぱっと見だけでも花丸ばかり付いてそうなこの人。


「弱み?」


 先生は少し考えたあと笑った。


「弱み、たくさんあるぞ!しかも、一番の弱みは、お前と一緒だよ、修一しゅういち

「え?」


 そして先生は目線で中庭を指して言った。


「お前の弱み、発見!」



 促されて目をやる。



「イチー!!ウッチー!!」



 西日が差すオレンジ色の中庭。

 真ん中に、両手をぶんぶん振りながら叫ぶ萌がいた。

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