92.EURO
「【
「
双方の
そしてどうなるかは、もはや自明の理と言えた。
「ぐぁ、バッ…………!」
【
だが、当然その為には相手の攻撃を捌けるだけの実力が要求される。
そして互いの彼我差を考慮すれば、その先に待ち受けている結果は──一つだけだ。
「止め、られたのは…………半分、以下か。クソっ、俺の知る限りではあいつの最大輪は五輪までだったはずだぞ…………正しく、桁違いってか」
「うふ」
中空にて撃墜された【
そしてそのまま大ダメージを負った
「私を忘れられちゃ困るわよ、【
【
「ゼロ距離で壊風…………!? オイ殺す気か!」
「この期に及んで心配なんてしないの。これで死んでくれるなら、気楽なものなんだけれどね…………!」
万象を崩壊させる冥府の風が吹き荒ぶ中で、【
「──うふ。うふふふふふ。うふふふふふふふ」
笑う。
笑う笑う笑う。
全身が罅割れ、今にも壊れんとするその顔を歪めて。
壊風の中をなおも一歩踏み出し、【
「ぐっ…………! ああもう、壊風による崩壊よりも回帰による修復の方が早くて強いの…………!? 壊れた端から戻っていっちゃう! こんなのアリ!? 【
破壊と回帰を猛スピードで繰り返しながら、そのまま【
「
ドキャギャガガガベキメギグチャバキャッ。
そんな感じの異音が響き渡った。
「………………カっ」
一回り縮んだ──もとい削ぎ落とされた輪郭のまま、辛うじて【
「うふふふふふふ、うふふふふ──」
その哄笑は如何なる感情から来るものなのか。蒼褪めて濁ったその瞳からは何も窺い知ることは出来ない。
「調子に乗るなよ、小娘」
背後からのその声に【
「う、ふ、うぶぐきゃぁか」
頚椎をへし折られて声にならない声をあげる【
「お、おおおおお!!」
「うぶ、うぶぶぶぶぶぎゃらら」
バツン。
珍妙なその音とともに【
「ミヤ──」
「まだだ! 緩めるな小僧!」
「うぶ♪」
ギョロリ、と蒼白く揺らめく生首が【
次の瞬間、切断された喉元から蒼い陽炎が巻き起こり、形を成していく。
「クソが。【
「
未だ回帰しきれていない、不確かな肉体。その状態でもなお滝のような連撃を放って見せる【
「嘗っ、めるなあぁぁ!」
それを凌ぎ切れる事こそが、【
不完全不安定極まる状態で放たれた乱雑な車輪群、一世紀を越える戦歴を経た彼が見切れない筈も無かった。躱し、空かし、流し、それらの全てで致命傷を受けぬまま防ぎきっていく。
「う、ふ──」
だが、【
故に。
「うふ、かッ?」
笑う【
「ごめん、なさいね、【
【
「【
カラカラカラと音を立てて回りだす風車。それとともに吹き荒れる破壊の風が、【
「ううううぅううゔゔウゥ、ヴー! ゔゔー!」
歯を噛み砕かんばかりに食いしばりながら、唸り声を上げて堪える【
頭部に罅が走り、それでも尚原型を留めて踏み止まる。
「まだ塵に還らない……っ!? 脳ミソに直でブチ込んでもまだ回帰と拮抗してるわけ⁉」
「充分だ、
間髪入れずに【
「──そうね、後は任せるわ。
【
【
【
「【
──【
──
其処は、奴隷たちの解放を謳った死を嗤う神が坐す永遠の交差点。
此岸と彼岸を顕す二つの道が交わるその中心に、【
既に額を貫通していた風車は消失している。
【
そしてもちろん──それまでの損傷を回帰する余暇など、彼が与えるはずもない。
カツ、カツ、カツ、カツ。
十字路の中心に立つ【
「「「「これで
呟きながらに四人の【
そして。
既に徹底的なまでに破壊されていた【
「…………終わった、かな?」
落下するように現れた二つの影を眺めながら、【
【
「──ミヤコ! クソ、年寄りども本気で殺しにかかりやがって」
「アホが。加減する余裕なんぞ何処にあった。事が収まってまだ息があったならトドメはささん位の配慮はあったがな」
「んなもん配慮でも何でもねぇよ! もし無事じゃなかったらただじゃおかねえからな…………!」
そう言って【
甘過ぎる判断だった。
「ミヤ────ゴっっっ」
『うふぅ──うふふふふふふふふふふふふ』
その声の出処は、もはや何処かもわからない。
それでも。
未だに【
「アホらしくなってきたな、オイ…………!」
「どうやったら終わるのよ、コレっ…………!?」
周囲一帯に蒼褪めた気炎が立ち昇り、ゆらゆらと翳りだす。
終わりなどないと言わんばかりに。
これからが
これこそが
「…………取り敢えず、【
「もう壊してない
冗談じみた口調で言った【
「【
「言ってる場合か。やらなきゃやられ──げぼ」
【
【
【
ソレは。
「…………【
『う ふ』
哄笑が響く。
が、笑いたくなってきたのは三人の方である。
「【
「黙示録の四騎士…………最後の騎士、ペイルライダーが司るのは…………ああもう、そういうこと? この湘南を蠱毒壺にした悪趣味な祭は、全て──」
『うふ──』
蒼褪めた陽炎が束ねられ固まり──再び人の
それと同時に、彼女の騎乗する機体もまた。
ドッドッドッドッ──爆発的な
それに座るでもなく、座席の上にただ佇む死神──【
蒼一色のエンパイアドレスに身を包み、白く揺らめくマフラーを靡かせ。
目前の死神を──
「──うふ♪」
終焉を駆る蒼き騎士は、なおも笑い続ける。
おそらくはこの世の全てに、終わりを齎すまで。
改めた完全覚醒までの推定時間──約四十秒。
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