90.まつろう弓
圧殺的な
その背に言葉を投げかけたのは──
「あ。
「………………」
その声に【
「おーい。無視するなー。数年ぶりの姉さんだよー」
「…………呼んでるわよ?」
「俺らに名前は聞こえんが、お前だろ【
「うるせえよ…………」
隣に並び立つ【
「へー、んー、じー、しろー。せーい。ていうか、あんたいつまでその白ラン着てるのー。
「ああああぁもう! 黙っててくれ姉貴!」
「姉貴? え、今、姉貴っていったの? ひゅー、カッコイイー。そんな二人称、初耳じゃない。もう霊姉さんって呼んでくれないのー?」
「…………ぷふっ」
「…………クックック」
「おい何笑ってんだお前ら! あーもう! 危ないからどっかいきなよ姉さ……あねっ、き!」
「あ、やっぱ慣れてないじゃん。はいはい、わかったわかりました。逃げまーす。頑張ってね、
「えーと……いいんですか?」
「いいんだよ。さっさと逃げよ。心配しないでいいよ、
「…………はいっ」
そうして、
「…………ふくっ、くくふふふ…………面白いもの見ちゃった」
「同感」
「うるさいジジババども! んなこと言ってる場合か!」
「でも、待ってくれてるわよ?」
彼ら三人の目前にて佇む【
ただ一点。
「…………会話は、通じなさそうなんだがな」
「んー、まあ正気は保ってなさそうなんだけれどね…………つまりこれはアレよ。りっくん」
「【
フッ、と一つ笑みを溢し。
【
「さ、そ、い、う、け♡」
「アホか!!」
怒鳴る錆だが、そんなものにたじろぐ女であるわけもない。
「えー?真面目な意見なんだけどなぁ。さっきまで派手に暴れてたっぽいのにりっくんが見えた途端じっとしてるじゃない。これはもうイクしかないわよ! ガツーンと突撃して男を見せなきゃ!」
「女を待たせるのは男として感心せんぞ、坊主」
「ちょっとまて何だこの流れはバラエティやってんじゃないんだぞ」
「ゴチャゴチャくっちゃべってないで! ホラ! 【
「グハっ」
背中に蹴りを入れられて、錆が【
「………………」
「あー……えー……、まず、何があったんだ、ミヤ
こッ。」
ミシミシ、ベキィ。
という厭な音が響く。
錆の首を的確に捉えた【
「うわっ」
「頚椎
他人事極まりない態度で後方のニ名が呟いた。
「────〜〜〜〜!!!!」
呻き声もあげられぬままに
「あらぁ…………【
「まあああなるだろうな、あのじゃじゃ馬が相手なら」
「うふ、うふふふふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふ」
不吉な含み笑いを溢しながら、ようやく【
「【
「そうらしいな。心してかかるとしよう」
その、蒼く蕩けた双眸を見た瞬間に、いよいよ二人の表情から余裕の色が消えて失せる。
「──【
「【
無常を表わす風車と、慚愧を刻む鉈。
二つの得物が具現した次の瞬間、【
「うふ」
神速。そうとしか言い表せない速度を持って【
「…………っ!」
腕での防御が成功したのは、先程の錆への一撃と寸分違わぬ
百余年に渡る歴戦の経験値からくる勘。それが【
そして、それはあくまで首の皮一枚。
【
「かあッ、はァ……!」
「うふ」
「…………!」
追撃の姿勢を見せた【
「なっ……!」
ぎゃりりりりりりりりりりりりりりり 。
細やかな不協和音を奏でたてながら、
【
「【
「うふふふふふ」
背後から迫っていた【
再びの神速を以てして、対象の頭蓋を打ち砕かんと飛びかかる──
「【
ふ、と【
カラカラと風車が回り、それによっておこる風は、しかし全てを滅ぼす颶風となって【
「…………」
カウンターと言って差し支えないタイミングで放たれたそれを、【
「初見でしょうよ…………なんで避けちゃうのかしら、まったく…………!」
ダメージを回帰して、ようやく立ち上がる【
「お、らぁ!」
大車輪を弾き飛ばした【
「うーん、やっぱり全然別物ね、アレ」
「だろうな。以前の小娘なら今の
【
「あれだけの
「よく言うな。お前が一発入れただからだろ」
「何よ。私は入れられた側でしょどう見ても」
ピシピシという罅割れ音を立てるのは、【
「………………」
【
(【
【
どころか。
「う、ふ」
ウゾゾ、ゾゾゾゾ、と。やがて崩壊した片脚は元の形へと回帰していった。
「うわー、やってくれるわね【
(本来【
「うふ」
崩壊を完治させた【
(──来る)
と、脳裏で言葉にするよりも
「──
真っ向からの、衒いのない剛撃。当然【
「ぐ、ぉ…………っ!」
「う、ふ──ふ」
鍔迫り合いは刹那。
【
「ご、あっ…………!」
「嘘、でしょっ…………!」
流石の【
(【
「………………強、い」
とうとうその声からは、感情が抜け落ちている。
「うふ。うふふふふ。うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
【
史上最凶の死神は、ただ嗤っていた。
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