89.鬱と夜
戦局は混迷を極める。
数多の衝突を繰り返した宵の宴が、今集結し終結を迎えようとしている。
【
この湘南に集った数多の生存者、もとい残存者達──生者も死者も混合されながら、この三日目までを踏破した者達が、一所に集うときが来たのである。
▣□▣□▣□▣□▣□▣□▣□▣□▣
□▣□▣□▣□▣□▣□▣□▣□▣□
【
「ここにきて新しい手札切ってくるとか相変わらず無粋だよねーあの
溜息を吐く死毒の射手。
この舞台に足を踏み入れてから、もはや何回目なのかは数え切れない。
「【
「ぐっ……ア”っ……!」
足元に臥す
「その【
「アガっ、あ、うァァァァっ!!」
「まあ上書きの為にわかりやすい神経毒を使ったから全身めっちゃんこ激痛だろーけどその辺はちとごっ愛嬌! 弟君の身の危険と引き換えならそんな痛み屁でもないよねー? うぅ、なんて素敵に無敵な姉弟愛! ハァハァしてきちゃいそっ!」
激痛にもがく
「だ、れよ……」
「んー?」
激痛に苛まれながら零した
「そもそも、この湘南に、なんでアンタがいる……【
「そりゃーよーくでーきまーしーーたーぬぇっと。遅きに失しすぎてるけどにー」
「だからこそ、ここ最近は情報統制を徹底していた……っ、この湘南に【
「本題を、言えやぁさっさとおおおぉぉぉ!」
「誰よ
あんたを手引きしてる灰祓は──!!」
「沈黙は金、と。あひゃ♡」
◉●◉●◉●◉●◉●◉●◉●◉●◉
●◉●◉●◉●◉●◉●◉●◉●◉●
「よく、ここまで逃げたね。偉いぞ、みんな」
「ドュうぅうぅうぅえ”え”ええぇぇ!!
「うん、
「ごわかっだでずぅ〜〜! れいざんがムヂャぶりするがらぁ〜〜!」
「
「なら、姉貴達は……!」
「
「…………っ!」
その言葉を聞いた
「…………そんな顔するなよ
「…………そう、だね。」
「うん。落ち込んだり、悔やんだりは、後にしてくれると、助かるかな。私達みんな、ただいま絶賛四面楚歌、って感じだから。…………ただ、最悪ってわけでも、ないかもしれない」
既に先導して歩き出した
「今朝から、エリア内のシャッフルが、一度も行われてない。バラバラに、シャッフルされてた地形も、一つに戻ってる。この監獄の主──【
「チャンスって……なんの、ですか?」
「脱出。
「え、えぇえぇ!? 脱出出来るんです!? エスケープ可能なんです!? なら逃げましょうすぐ逃げましょう直ちに可及的速やかに脱出しましょう!!」
「逃げるとなったら、食いつくねー
それでもこの状況下において、その言葉は確かな
「で、どうする?」
「どうする、って…………? 逃げるんですよね?」
「どう逃げるのか、って話。【
「それは、一丸になったほうがいいんじゃ……」
「それだと、ほぼ間違いなく、縁に辿り着く前に、捕捉されるだろうね。けど分かれたら、片方は何事もなく脱出する目もある」
「もう片方は?」
「半分の戦力で、どうにかなる相手じゃない。言わずもがなだけどね。だからまあ、追いつかれた半分は、死んじゃうと思う」
「「「一丸で」」」
声が揃った。
「あ、カメラの話です?」
○□○□○□○□○□○□○□○□
□○□○□○□○□○□○□○□○
「どうやら戦況は芳しくないようですね、【
「掛け値なしの
新米
「とはいえ、残る連中はそこそこの手練ではあります。
「微妙……俺が支配できるのは現状四人てとこだし……」
「少なっ。【
「初耳だよなんだよそれ桁違いにも程があるだろ」
「レベリングの道行きは果てしなさそうですね…………さて、これからどうしますか──」
監獄内での区域閉鎖が解かれ、一つの領域となった湘南は広い。逃げ惑うであろう
二人がそう思案しだした、矢先の事である。
「うふ」
災厄の声が落ちる。
「【
「へぁ──?」
「チッ!」
反応出来ていない【
次の瞬間に自分達を襲ったソレを、【
「うふ。うふふふふ。うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
例えるならば、荒れ狂う暴風雨。或いは炸裂する閃光か。
彼の脳裏を過ぎったイメージは、さしずめそんなところだった。
◆●◆●◆●◆●◆●◆●◆●◆●
●◆●◆●◆●◆●◆●◆●◆●◆
「地震…………じゃないですよね」
「そんな、牧歌的で、平和的な、地球の営みなら、どんなによかっただろうね」
「そんな言い方しちゃダメですよー。不謹慎だって怒られますよー」
無論、何事もなくそれが遂げられるとは一人も思っていなかったのだが──
──こんなコレがやって来ると思っていたものもまた、一人もいなかったのだった。
「──うふ」
ありとあらゆるあらゆる建造物を「粉砕」──読んで字の如くに粉になるまで砕きながらにそれは現れた。
蒼き燐光をその髪に湛え、瞳は濁々と淀んでいるようにも炯々と煌めいているようも見える。
手の蒼い大車輪はぎゃりぎゃりという不協和音を奏でてはいない。正に神速と呼ぶべき域にまで加速したその回転により、傍目からはその車輪は静止しているようにさえ写った。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………ウヒっ」
【
瞬きは勿論のこと、呼吸さえ止まる
それでも最初に動いたのは、やはりというべきか
「…………コレか。最初から、コレを
静かに
「
ピタリ、と正眼に刃を構える霊。
「ここは私に任せて先に──「こ、らあああああぁぁぁぁっ!!!!」
「なにをやってんのよ、ばかミヤコーーーー!!!!」
お前が何を言ってんだバカ。
そう内心で叫んだ
「………………………………」
ピタリ、と静止し、身動ぎ一つしなくなった。
「止まっ、た? に、逃げるチャンス──」
「まぁたあんたは目ぇ話した途端に変な方向へぶっ飛んじゃって! 毎度毎度素っ頓狂なところまで追いかけていかされるワタシの身にもなれってのこのあんぽんたん──」
「わ”ーーーっ! もういい! いいですから
「みんなは先行ってて! ほっとくワケにはいかないから──」
──その混沌とした舞台の上に。
最後の演者達が、登場する。
「言いたいことは大体言われたが──先に行くのは、お前もだな。
音もなく、その白衣の死神は現れた。
「探してたのは、おれだろ? お望み通り、相手してやる」
「コラ。なぁーにまたぞろカッコつけてんのー? 心配でたまらなくなって飛んできたんだって言えばいいのにー」
「ふん…………ともあれ、遂に歯応えのある戦いが出来るか。いつぞやとは
残存者達が遂に集結し──しかし、
闘いは一つ。
参加者は四名。
周囲の
【
対。
【
&
【
&
【
──開戦。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます