77.熱
【
対。
【
連続して町並みに鳴り響くのは、甲高い金属音。
──長い白髪を靡かせながらに攻め立てるのは、その白い髪と肌を際立たせるかのような漆黒のスーツに身を纏った女性。
間合いを取るべく後退する標的──【
「腰が、引けてるよ、【
「いやいやいや、寄られるのは不味いなっていう冷静な判断ね! 勝利への道筋を堅実に模索してるだけ! だって怖いもんアンタ!」
そんなやり取りの間にも、勿論両者の剣戟は止まらない、留まらない。
(おいおいおい──まだギアが上がってくぞこの女。マジで人間なのかよ)
後退する足を止めて、本腰入れて打ち合うか。
そう判断した【
「はいそれ悪手。ならぬ悪足」
【
【
「チッ……目敏いなぁもう!」
「それだけじゃないよ」
【
パシり、と。
そこに瞬時に新たな武器が収まった。
「荷物出し係くらい、大目に見てねー
恐ろしく緊張感の無い声色で、
まるで、そうなることが全て決まっていたかのような、そんな連携。
「──【
ドッ。
鈍い音。骨肉を絶つ音。
【
「む。脳天唐竹割りにするつもりだったのに、なんか、ズレた?」
「あっっっぶな! 怖! 動きが滑らかすぎ!」
断ち斬られた片腕と切り離した片足を瞬時に回帰し、再び間合いを取りながら【
「もー、
「逃げいでか! 怖すぎんだよあんた! ああもう! やるしかないってか」
パン、と両の手を鳴らして。
死神は【
「【
青年
「籠手…………籠手。防具は、珍しい、ね。【
突き刺さった【
「んな細かい事情や理論は俺らみんな気にしちゃいねーけどな。ま、俺なんかは不真面目で消極的な
カシュ、と栓を開ける音。
言いながら【
「緊張感ないね」
「…………ぷはー。そうでもねぇさ。本気だすなんてかったるいこと、自分へのご褒美がなきゃやってらんねぇから、なっと」
【
するとその空き缶は──
「【
けたたましい破裂音を立てて四方八方へと爆散した。
「──!」
それらの炸裂した金属片を全て、両の
「──わあ。何今の、びっくりした」
「いやいや初見で完全攻略しないでもらえますぅ!? なんで今の防げんの! 人間じゃねえでしょ絶対! だから怖いってあんた!」
呆れ半分恐怖半分で目を剥いて【
「ふーん。なるほど。今のは、空き缶を使って、破片手榴弾を再現したワケだ。人間相手なら、まあ確かに、十分かつ確実な方法だね。風情も何もないけど。君、能力バトル漫画読んで、『これ銃使えば終わるよな』とか言っちゃうタイプ?」
「流石にそこまで無粋じゃないつもりですけどねえ。なにぶん俺の【
「【
「馬鹿正直に訊いたって教えねーよ、生憎と。是非ともそのままわかんねぇままであってくれや」
ス、と目前へと【
そして。
「【
その両の手を握り締めた瞬間、空間が歪む。
宙が陽炎のように一瞬揺らめいたかと思うと、ソコにあるモノが吸い込まれるように縮んでゆき──
「【
その
「ホンっトワケわかんねぇレベルの反応速度だな──が、まあ片方だけだ。あんたはそれぐらいやるって、もう身に染みてわかってるさ」
その両の手で圧縮した大気は必然、二箇所。
【
だが、その冥き月とて。
断ち斬れぬ
「【
大気が爆ぜる──否、弾ける。
それさえも察知した
吹き飛んだ
「…………よしよし、まずま/ 【
利いたろ。取り敢えずは。/
な
力に欠けるのが泣き所/
一人言ちる【
「ウッソだろ、おいぃッッッ!!??」
咄嗟に身体を捻って回避した【
「腕一本でも落とせてれば、楽になったと思うんだけど、全然浅いね。やっぱりだ。ズレた。また。【
ガシガシと頭をかいて被った
「さっきの空き缶手榴弾と、今の空気爆弾──どっちも【
「へぇ、どーも。あっという間に見抜かれてちゃ形無しですけどもね。おー
腹部の刃創を庇いつつ、【
「しかし…………あんたが規格外なのはもう散々にわからされたが、それにしたってさっきの一太刀の偏在駆動と規模はちっといきすぎてないか? 人間に敵う領域じゃない。確実に偏在率100%の壁を越えてた」
「あー、ね。それに関しては、まあこういうこと」
するとその白い刀身はピシリと皹割れたかと思うと、消し炭のようにボロボロと崩れ去った。
「見た通りだから、この際そのまま解説すると、
「お陰で
建物の陰から
「荷物持ちの武器出ししか出来ない穀潰しが何か言ったかな?」
「言ってませーん! はいはいはい急いで次の出しますよっと!」
新たに飛んでくる【
「えっと、なんだっけ? ああ、そうだ、で、二つ目。貴方の、不思議な回避術について、だった。多分、空気爆弾と同じ、
「…………ド、ドウカナー」
「図星ね、了解」
「いやホント、戦闘マシンみたいな人だねー。どうしたもんかな、いったい全体」
「わかってるくせに。私の武器は、有限なんだから、持久戦に持ち込めば、分があるのはそっちだよ、心配しなくても」
「その戦法には二つの問題があるなあ。一つ目。あのアシスタント君の馬鹿デカい武器庫、どんぐらい武器入ってんの?」
「えーと、細かいのを入れれば、千二百ぐらいだったかな」
「はい、千二百回あんたの攻撃を凌ぐ自信はさらさらないですー。で、二つ目にして最大の問題なんだけど…………持久戦、持ち込ませてくれんの」
「あははは」
これっぽっちも表情を動かさないまま、声だけで笑って。
「──まさか」
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