42.遊戯役
「
その言葉と共に──
「…………
その姿を目にした
だけではなく。
頭尾須の背後からさらに四つの
「腕六本、剣も六本──まさかそれで有利になったなどと思っているワケでもあるまい?」
「たりめーだ。どこぞの悪魔騎士扱いしてくれるなよ」
六芒の剣を構える
「まあ、それでも油断はすまい──近接特化なのは間違いないだろう。ならば距離はとっておかなくてはな」
そう言うと【
【
ウガリット神話において死と乾季を統べる、冥府の神だ。
「【
「よくご存じで」
「では、小手調べだ。早々に枯れてくれるなよ」
ぎ、ぎ、ぎ、ぎ。
不吉な、そして重苦しい音を軋ませて。
干魃の柩は僅かにその蓋を開く。
その僅かな狭間からは柩の中身は未だ伺い知れないが──その中からサラサラと砂塵が零れ出てきたのだった。
「砂……」
「そう、砂だ。我ながら安直だな」
砂塵はみるみるうちにメインホール内に舞い飛び始める。
そして砂塵は収束、形を成し──幾多の刃なって、
「──来るぞ!」
それを迎え撃ったのは──
「
若くして
「翼と、羽か──だが、隊長同様、随分と数が多い」
その翼の数は、二対四翼。
無機質な純白の翼が四つ。
背中に現れた二翼と、両腕が変質した二翼が、大きく羽ばたいた。
「舞い散れっ…………!」
その四翼から雨霰の如くに繰り出される弾丸のような羽が、迫り来る砂刃を迎撃、かき消してしまう。
「ほう。遠距離にも対応出来るようだな」
「呆けてる暇なんかあげないっての──
両腕両脚に漆黒の装甲を纏い、威圧感の増した黒刀を閃かせながら、猛スピードで
「速いな。だが──正直過ぎる」
【
色を失い、形を喪い、ただただ不毛な塵となって千切れ散ってゆく。
──【枯死】の【
風化し、砂塵と化した地形は再び死神によって偽りの
【
黒刀を振るいながらそれらを斬り伏せてゆく
「くっ……! 迎撃だけじゃない、足場も崩しに……!」
「止まるな
失速する教え子を叱咤しつつ、
「さて、本命か──その実力は果たして本物か。見極めさせて貰うぞ、
ぎぎ、ギ。
と、音を鳴らして。
干魃の柩の蓋が、またしても僅かに開き始め、更に多量の砂塵が溢れ出してくる。
砂で出来たそれらは時に刃、時に矢、時に鎚となりて
しかし。
「遅すぎるし、少なすぎる」
神速の剣閃。
六腕にて乱れ舞う白き鋒は、砂塵の脅威を尽く退けてゆく。
「やはり手数が自慢か。細かいのをぶつけても意味はないようだ──」
【
「ぶーーーーちぬけ【
舞い踊る砂塵の隙間を縫うように飛来、
【
「機動力に重きを置いた
自らに立ち向かってくる
(こいつら…………全員が、
通常の
しかし、当然ながらリスクも高い。
元々強大な
そもそもその性質上、使い手に求められる偏在率も高い……最低でも70%台の偏在率がなければ起動さえままならないのだから。
その希少な
「──面白い」
そう呟き、【
目前の人間達の実力を認めた証だった。
【枯死】の【
(だが、ここまでの戦りとりである程度は見えてきた──)
「突っ走るなよ、合わせろ
「無理ですっ! ししょーが合わせてください!」
声を掛け合いながら白兵戦を挑んでくるのは、
「前衛はこの二人が担当──そして……」
環境の侵食により地の利を得た【
「させるかよおぉっ!」
そこにすかさず横槍を入れるのが、
「お前が遊撃担当──掻き回す役割か」
機動力を活かし、隙が生まれれば見逃す事なく攻撃をねじ込み、隙がなければ陽動をしかけ隙をこじ開ける。
「小蝿が鬱陶しいな──叩き落とす!」
そう叫んだ【
会場を隙間なく埋め尽くす逃げ場なき絨毯爆撃で殲滅にかかる。
「させない──【
それらを真っ向から迎え撃つのが──
全てとはいかぬまでも多くの砂塵武器を相殺し、味方の逃げ道を切り開く。
「こっちの小娘がオールレンジ対応で全体のフォローをこなすバランサー、か」
「油断は出来んが危険という程でもないな。これが底だというのなら──一気に潰させてもらうか」
そう言った瞬間、砂漠と化し始めている会場、その範囲全体がうねり、鳴動し始める。
「呑まれて枯れろ」
大瀑布。
うねる流砂は波のように荒れ狂い、逃げ場など無しに
「【枯死】の【
迫る砂塵の濁流。
それを前にして、師弟は並んで黒き弧月を閃かせる。
「「──【
双月が躍り、砂の津波を斬り開く。
自分達に迫る死の波濤を打ち破り、突き進んでゆく。
「お前達二人は良いとして──さて、残りはどうだ?」
戦域全体を押し流そうとする砂塵、逃げ場はない。
だが、無情にも。
二人はなす術なく、砂塵に呑み込まれ──
『──
──たと思った瞬間。
【
「【
「【天馬】ぁ!」
両者共にすかさず攻撃を叩き込む──!
「なめ、るなああああ!!」
怒声と共に数多の砂塵の矛を周囲に張り巡らせる【
「っ、
迫る砂塵を目前にしながら、
押し退けた、その腕が。
ゾグッ。
「ッッッ!!!!」
砂塵から逃れきれなくなり──【枯死】の力はその腕を容赦なく枯らす。
「
「ッッッ、気ぃ逸らすな
自らに気を取られそうになった
そしてそのうちに──前衛の二人が自分達の間合いへと踏み込む。
「真っ向勝負か、良い度胸だ……!」
【
「【
遂に両者は足を止め、真正面から斬り結ぶ。
片や六芒の白剣で、片や無尽の砂塵嵐で。
「おおおおおおぉぉぉぉっ!!」
「はっ──!」
凄絶なる生死の乱舞。
白光と砂塵が入り乱れるも──消耗してゆくのはやはり人間、
剣戟の果て。
轟音を立て、【
「よくぞここまでやったものだが──終わりだな」
「…………さて、どっちがかな」
苦痛を堪えながら──それでも
「やっちまえ──
「──!」
「──お願い。
『了解──
次の瞬間。
それを知覚した【
「──!? 馬鹿な、これは……人間の至れる偏在率では!」
『【
黒き閃光を走らせながら。
「
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