39.智飛
正面ロビーにて、あたしは
現在の
単独の
「バッッッカ速ぇなクソ!」
あたしの動きを見てそう零すのは、もう中年と言って差し支えない年齢であろう
追いきれない、まま。
後方に回り込んだあたしの
「なんっっっで受けきれるんだっってのっ、コレがぁ!」
不可解からの苛立ちを素直に口から吐き出したあたしは、しかし決して留まる事なく、装備しているインラインスケート──サムライブレードの回転数を落とす事なく、攻撃を畳み掛ける!
慣性のままに今度は相手の前方へと回り込み──一閃!
「おっ、とおぉっ!」
なんと
「曲芸かよ、いい歳してっ……!」
「そっちこそ、小娘にしては随分とまあ闘い慣れてながる──
「…………闘い慣れなんて、してないよ」
そう返し──あたしは再び一気に相手の懐に飛び込むべく、加速する。
「──轢き慣れてはいるけど」
「──っ!!!」
ギリ、と歯軋りの音を溢す
まあなんにせよ、体勢を整える暇は与えない。
そもそもこの闘いはあたしにとっちゃ本筋から外れた寄り道もいいとこだ。
とっとと、
「死神走法──
小回りの利かない大剣じゃ、これは到底──
「──ここ、だオラァっ!」
瞬間。
結果。
「んっ……、なあああああぁぁぁあっ!?」
視界がブレる。
身体がコントロールを失い、宙を舞う。
そのままあたしはふき飛び、
「ぎゃんッ!」
呻き声。
そのまま重力に従って、あたしは床に落ちる。
「か、こ、こんのぉ…………!」
んな、舐めやがって舐めやがって舐めたマネしやがってあんのクソおやじぃ……!
ば、バッッッカじゃねーのか。
あいつっ…………あい、つぅ!
「ふぃー…………なんとか乗せれたか。闘い慣れはしているが──まだまだ立ち回りにゃ
「に、人間じゃないだろこンの熊おやじ…………!」
し、信じらんない。
あたしの攻撃の瞬間、
そう、まるで──レールの上に車輪を走らせるみたいに!
あの大剣といえど、あたしの攻撃をまともに受ければ容易く押しきられる──下手すりゃ刀身ごとへし折れたっておかしくないのに!
そんな冗談みたいな芸当が、可能なのか。
まるで針の刀で大鉈を受け流すが如くな、荒唐無稽な
否応なしに理解させられる。
これが。
これが──達人というものなのだ。
「に、に、二速のあたしの双輪を──人間が、捌き切る、とか」
それこそ、
あった、のに!
「コケに、してくれるじゃんさこんにゃろっ…………!」
「おーおー、いいぞ。存分に頭に血を昇らせてくれや。その方が勝てっからな」
「~~~~~ッ!!!!」
絶ッッッ対に後悔させてやらぁ今に見てろやこの野郎!
「死神走法ッ──!!」
ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ ギ ャ リ 。
二速の回転数でサムライブレードを最大駆動。
早送りのフィギュアスケーターのようにあたしは超速で回転する。
「
全てを轢き潰すその一輪。
躱す暇などない。
放たれた真円の疾走により、ロビーの壁面全方位に深い轍が刻まれる。
その、刹那。
「【
深淵なる黒き月が、煌めいた。
「──、あ」
と、あたしは素で間抜けな声をあげた。
【
全ての死神の総てを否定する、無二の
0.4秒の、絶対不可侵。
あたしの渾身の一輪は、しかし
「や、ば──」
普通なら、なんてことのない一撃。
捌いてもいいし、単に躱してもいい。
だが、この瞬間では違う。
渾身の大技を放った直後の、この瞬間は。
「おら、王手だ」
しゅっ、と
本当に、なんてことのない──単なる短刀。
おそらくは甲式、プレーンモデルの
サクリ、と、呆気なくそれは標的に突き刺さる。
「お前ら
ビックリするほど静かな世界の中で、
「けど知ってるか? 一番人間を殺してる外敵は──ただの虫けらだったりもするんだぜ」
「が、ポ」
喉奥から噴水みたく、赤いのが溢れてきた。
「人間舐めんな、
あたしの喉を。
その短刀は呆気なく、そして疑いようもなく、貫いていたのだった。
△△△△△△△△△△△△△△△△
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「あーもーしっつこいなぁ。はよ爆ぜろー」
施設中庭。
「くっそ、埒が明かないっ!
「自棄になるなバカ! アイツはそれを誘ってんだ、立ち回りで解るだろ! あの【爆死】の【
「わかってるわよそれくらい! わかってるけど…………!」
戦況は膠着状態。
【
あくまで間合いを広くとり、決して近づかず、近づかせない。
中庭内を不規則に入り乱れ、その際に【
有り体にいうと、いたちごっこだった。
「
「あ~~るワケな~~いじゃ~んさ~~。はーかったるいめんどくさい働きたくないさっさと帰ってゲームしたーい」
「ぶっっっコロすぞこのクズぅぅぅ!」
「殺れるもんなりゃ殺ってみな~っと」
そういうと
──そこで。
「おし、覚えた」
「
「──誰に言ってんのよ」
ジャキン。
と、
そして。
──ダダダダダダ!
猛烈な勢いで矢が斉射される。
標的は【
「はえ?」
と、【
矢が突き刺さった床面が全て──爆発した。
「んにゃー!? 私の地雷の仕込みを見切ってたぁ!?
爆煙で覆われる互いの視界。
しかし。
「何足止めてんのよ、
その爆煙を真っ直ぐに最短距離で突っ切り、
「これで、終わりよっっっ!」
振り下ろされたその大剣は、見事に
「ほいっと」
ガイン、と音がなり。
その一振りはあっさりと
「──んなっっっ」
不意を上手く突いた。その確信があった。
倒しきれないまでも、痛打を負わし、更にその先へと繋げられる攻撃の筈だった。
不意は、確かに突けたのだ。
だが。
【
驚異的な、反射速度だった。
「ク、ソ」
「残念さいならはいこれまでよー。さてさて」
にこりともしないまま。
【
「爆ぜろ」
そうして【
爆死、させる前に。
「お前が爆ぜろ」
と、【
刹那、【
「
そして、その手に握られる長柄の
「噛み潰せ、【
「ろ、
その
「ポ、ぎゃバああああぁぁぁああぁぁッッッ!」
さながらホームランのようにすっ飛んでゆく【
その猛烈な勢いは留まる事なく、施設内の数多の壁をぶち破り続け、やがていくつもの風穴を穿ちながら、施設の外まで吹き飛ばされる。
「………………プ、てゃ」
一瞬の身動ぎの後、そのまま【
──第一施設、中庭。
勝者、
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