32.紆余
──施設正面玄関口、突入舞台。
計三名、
──第一施設、
──
──開戦。
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◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■
「──一先ずはようこそ、と言わせてもらおうか。梟。今宵の
紺のパーカー、黒のスキニージーンズ──フードを被り、その上更にガスマスクを装着しているその姿は、自身の姿を覆い隠そうとしているとしか思えない。
背丈以外の外見情報全てを遮断したその格好で──【
「…………【
「いかにも。【GRIM NOTE】のまとめ役もやらせてもらっているよ」
観客席の通路から壇上へと向けて、一班の中では最年長となる
「なら丁度良い──今回のお前らの、この、悪趣味な祭りは何が狙いだ」
観客席の数は千席を優に越える──そしてそれらの多くは空席ではない。
いや。
空席ではなかった、と言うべきなのだろうか。
席に座る人々。
それらは皆一様に、物音一つ立てる事なく穏やかに佇んでいた。
まるで。
人形の、ように。
「ただ人を集めて──殺す為だけに、こんなわざとらしい茶番を催したワケでもないだろう」
「ごもっとも──けど、その問いにわざわざ律儀に答える義理なんて無いね」
席に座する数百人の人々。
彼らは皆目を鎖し、身動ぎ一つすることもなく、静かに眠っていた。
無論それは。
永遠に醒めることのない、眠りである。
「…………クズ野郎」
「気に病む事はない。ここにいる全員は全てを承知の上でやって来た人間なんだから──そして、皆揃って苦痛なく命を閉じた筈だ。眠るように、安らかに息を引き取った。自分の意思で自分の望んだ時に自分の夢見た形の死を遂げる…………それを幸福と呼ばずに何と言うのかな?」
「
「…………何?」
「
【
「規模も効果も劣化版極まりないだろうけど──渋谷の猿真似、でしょ? くっだらない」
「…………お前」
心底うんざりした口調でいう
「お前に、何がわかる。知った風な口を利くな、梟風情が」
「心配しなくたって
「…………黙れ。黙れ黙れ黙れ黙れだまれだまれだまれだまれダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレッッッ!!」
この上なく煩わしそうに、【
が、それに臆することも憐れむことも遠慮することもなく。
「──幻想から滲み出した不出来な汚濁でしかないあんたらに、奇跡は降りかからない。
純黒の刃を鞘から抜き放つ。
憎悪を滾らせる死神を相手に微塵も退かず、
「様子見は無し──
威圧感の増した黒刀を手に取り、装甲を纏った右腕を振るい、
「侮るなよ、梟…………!」
その一閃を真正面から受け止める【
その手には紺色の
「迂闊に近づくな
数瞬遅れつつ、
「大振りすぎだ、バカめっ!」
だが。
「──貰った。喰いつけ【
蛇の如くにうねるその一刺は、【
「チッ──ウザいんだよ雑魚っ…………!」
「っだコレ、抜けない──」
「逃がすか。さっさと死ね」
しかしそれには一際目を引く特異な箇所がある──二本の杭が鎖で繋がっているという点だ。
【
当然止められるのは四肢の一つのみ──そして、完全に止める必要など無い。それで充分過ぎる。
「せぇぇいっ!」
返す太刀で
容赦も躊躇も有りはしない。
狙うは頚。
速攻でカタを付けにかかる──!
「侮るなと、言ってるんだっ!」
それを甘んじて身に受ける【
手にある
「今度は外さん!」
「く、おおおっ!」
一投足。
それで【
その一歩の方角は、
「ぐうっ!」
長柄武器の欠点である──大きく懐の内へと詰められれば、刃は届くことはない。
【
「くたばれッ」
【
「っ! ヤ、ベ──」
【
一撃でも貰えば──否。掠るだけでもその身は毒に侵され、じきに死に至るだろう。
たとえ毒死するまでに幾らかの猶予があったとしても、満足に戦える状態かはかなり怪しい。
現状、互いにほぼ
が、この間合い、このタイミング。
最早避けることは不可能──!
「…………なら、くれてやるさ」
──
「ん、なっ──」
「ぐ、ふううぅぅッ!」
──
と、
が。
力は、決して、弛めない──
「しょ、正気かお前ッ──」
「これ、いじょ、なく、しょうきだ、くそやろっ…………ぐッ…………おまえらには、わかんないだろがな…………覚悟も、決意もッ……………!」
既に
それでも迷いも躊躇いもない。
ただ毒に侵され戦闘不能となるぐらいならば、相手諸共に潰れてみせる。
潰れて、なんら問題はない。
何故ならば──
「──ありがと、
──仲間がいるから、だ。
「テ、メエエエエェェェェッ!!」
──一閃。
漆黒の一太刀が【
鮮血が、飛沫を上げて舞い飛ぶ。
「ガッ、あアぁぁァぁアああアアアぁあがァァアアあァァァっ!」
絶叫。
怒声と血霧を撒き散らし、【
「クソッ、逃した──」
否。
確かに
しかしそれは四肢の一つ──腕一本。
【
が、それでも紛れもない痛打。
狙うのは頚。
今度こそ引導を渡す!
「これで、終わりいいぃいぃぃ!」
黒の刃が閃く。
その一閃が、【
──一瞬前に、【
「【
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