29.奔雨
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ──まぁそれなりに形にはなってきたかなあああああぁぁぁぁぁッッッと」
闇の中。
響くのは無機質で、それゆえに清廉な電子音。
それを引き裂くのは、無神経極まりない、巫山戯た不愉快な哄笑だった。
「
冷たい床に寝そべりながら、ソレは実に上機嫌にラップトップのキーボードを叩く。
「──
嗤う嗤う嗤う。
嘲る嘲る嘲る。
ソレは全てを侮辱する。
ソレは総てを冒涜する。
「だああああああれもかれもかのじょもどいつもすいすもおらんだもひっとり残らず台本通りの芝居しかしないんだもんなああああ! 一人くらいアドリブ入れて脚本にメリハリつけなきゃだよねええええええ! やっだオレちゃんってばマぁジ健気ーーーー! 意識高ああぁぁい! 素敵! 抱いて!」
やがて誰もが欠落する。
故に誰もが失楽する。
「ま、お祭り騒ぎの為には下準備が何より大切ってこーっとっでぇ。とにかく今は地道に、データ収集試行錯誤、デバッグデバッグテストラーン! っつってねつってねー!」
冷たい闇の中、稼働音を立てて並ぶのは──無数のサーバー郡。
それらが延々と佇む姿はまるで、オベリスクのようで──
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! あーひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
無粋な嗤い声はそれらに反響し、更に不快な不協和音と化し──それでもやがては闇に融けては消えていった。
■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆
◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■
「それはともかくとして──本題に入りましょーよ、ナギさん。その変なサイトについて」
場所は東京、公務員宿舎。その一室。
鞄から取り出したカプリコにかじりつきながら、【
「顔と名前を書き込めば死ぬ──厳密には『
「笑い事じゃないんですけどね…………私達人間にとっては」
僅かに眉間に皺を寄せ、ため息混じりに女刑事──
「いや、笑っちゃいますって──人間の言いなりになってヘコヘコ人間死なす
ケラケラと笑い声を上げる
「だから、笑えないんですってば…………
「そりゃー考えませんよ。この期に及んであたしが一般人視点に立てるワケないじゃないですか──人間としてのあたしは、もう死んじゃったも同然なんですから。わからないことを考える程暇じゃないですし、わからないことをわかったふり出来るほど器用でもないんです。あたしは」
「…………ホント、自己分析は出来るんですね」
「自分の事ぐらいわかってます──というより、あたし自身があたし自身ををわかってあげなきゃ、もうあたしをわかってくれる人は他にいませんから」
──たった一人を除いて。
などとは、当然に
「ともかく、死神信仰とも言える
「はっ。で、そのサイトにドハマりした死神信者達が何をどうしたものかわかったもんじゃない──って話ですか? 笑える。まんま悪い宗教ですね」
「宗教に良いも悪いもありませんよ…………信教の自由は人権として認められていますから。だから──そこにあるのは、良い人間と悪い人間の違いだけです」
その
「良い人間と悪い人間ねぇ…………強い人間と弱い人間の間違いじゃないです?」
「『悪とは何か──弱さから生ずる一切のものである』、ですか? ニーチェを信奉してるとは知りませんでしたが」
「別に。ただのあっさい経験則ですよ。ニーチェって何です? フルーチェの仲間ですか?」
「…………いえ、話がそれましたね。本題に戻りましょう。とにかく、この熱狂的な信者が数多くいるであろうこの【死神サイト】に、件の
タブレットを操作し、
それを見た
呟いた。
「…………ふーん? いいですね。先輩風に言うならば──随分と、つまらなくなってきた」
『──
死を想い、死に焦がれ、死を慈しむ者達の元に、真なる
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
「──わざわざ呼び出して何の用だ、
【
部屋の中で向かい合うのは、局長である
「…………公衆の面前ではその呼び方は止めてくださいね、
「わかってるよ…………んで? 東京まで呼びつけて教職なんぞに就かせた弁明でもしてくれるのか?」
「ええ、話が早くて助かります──とは言え、その様子だとおおよその見当はついてると思いますが」
デスクの上のティーポットを手に取り、実に優雅な手つきでカップに注ぎながら
対する
やがてティーカップに注がれた紅茶に両者共々口をつけ、しばしの沈黙がおりる。
「……………………
「精進します」
やがて二つのティーカップの中身が空になり、両者が一息吐いたところで──やはりというべきか、目上の立場にあたる
「
「──無茶苦茶言いやがるな、ったく…………パワハラで訴えんぞ」
「出るとこに出ても私は構いませんよ」
「そりゃそうだろ勝ち確なんだからな、上級国民め」
大きな嘆息の後、
「教職なんぞに就かせたのはあの二人を鍛える為だけかよ。効率的なんだか回りくどいんだか…………念の為に訊くがな。使い物になるレベルってのはどこまでの話なんだ?」
「決まっているでしょう──私達と肩を並べられる、即ち『
「………………本ッッッ当に好き勝手言ってくれんな」
「無茶を言っている自覚はあります。が、無理を言っているつもりはありません」
「…………
「──というラインで留まる才能ではありません。
だが──そこに留まらぬ個人も、確かに存在する。
──人の身でありながら、単騎で
「──
「………………一ヶ月で?」
「一ヶ月、です。時間が無いのは周知の事実でしょう? 方法は任せます。設備、資金は要望があれば必要なだけ引っ張ってきますので」
「暴君かお前は。なんで俺に押し付けんだよ
「その
「………………チッ」
信頼の念がこもったその言葉に、
「そうは言っても、一ヶ月じゃ出来る事と出来ない事がある。それはわかってるだろう?」
「ええ、勿論──
「つまり、基礎じゃなく応用を習得させろってワケだ──どころか、対
「はい。貴方もいずれはそこまで
「…………わーったよ、引き受けてやる。だが最後にこれだけは答えろ。一ヶ月後が期限って事はつまり──」
「ええ、
「故に。
△△△△△△△△△△△△△△△△
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「──なんかテンション低いですね
「んー…………そうだね。それはよかったよね。ホントに…………」
夜。
警察庁からの帰り道に【鳳凰機関】直轄の病棟に寄り、
結果、全員そこまで重い怪我というワケでもなく──しばらくすればすぐに退院出来るとの事だった。
そしてそのまま帰路についた二人だったのだが。
ピローン♪ と、結の
「…………あ、ししょーからだ。んー…………ワタシと
「ほぇ? ってことは暇ですか? リラックスしていいんですか? 優雅にバケーションですか?」
「んな美味い話があるワケないっしょ。一ヶ月ぐらい学園の授業含めて、ミッチリと対
「ぐえー………………ま、それは仕方ないですか」
と、そう何の気なしに言う
「…………んー、もっと喚くかと思った。『鍛練なんていやですぅー!』みたいな」
「あ、いえ、嫌といえば嫌ですけど。ただ、それでも一応局員になったわけですし、嫌がってても仕方ないですよねという」
「ふむ…………うぅん、まだ会ってから二日も経っちゃいないんだから当然だけど、ワタシまだあんたのキャラをいまいち掴めてないんだよね…………ええっとさ」
夕焼け空を見上げながら、
「
「………………」
「…………いや、別に、答えたくないなら──いいんだけどさ」
「…………いえ、別にもったいぶるほど大層な理由じゃないですよ。ホントに。ええっと、そうですね。何の為と問われれば──
──念の為、でしょうか」
曖昧な方向へと視線を遣りながら、
「…………どういう、意味かな?」
「いや、そのまんまですけど…………転ばぬ先の杖的な…………え、えーと、そのですね。ほら、地震とかあるじゃないですか。大地震。首都直下型だの南海トラフだの」
「…………? うん。まぁ。あるけど」
「そういうのって、怖いでしょう? でも誰も特に気にしないまま生活してる。いつか大災害が降りかかるってわかってるのに、何をするでもなく当たり前に日常を過ごしてる。いや、そりゃどうしようもないからって言われると返す言葉はないんですけど」
「…………」
「で、去年のクリスマス。
「…………ん?」
流石に、そこで
「だから【死対局】に入ったというわけです」
「いやいやいやいや、話が飛んでるでしょ。『だから』じゃないってば」
「あ、いや、えと、その、つまりですねぇ。『一般人』として
「………………」
「…………あ、えっと、ご、ごめんなさい。意味わかんないですよね、矛盾してますよね、はい」
「…………んにゃ」
わからなくも、ないかも。
と、
他ならぬ
何も知らないままでいるのが、嫌だった。
何も出来ないままでいるのが──怖かった。
だから
それがどういうことかわかっていながら。
つまり、
それは、
本末転倒と言われればそれまでだろう。
「ア、アタシにだけ言わせないで下さいね、
「んー…………そうだねぇ」
──それでも。
止まっていられなかった。
留まっていられなかった。
果てしなく開いてしまった
縮め続けたかった。
非力だろうと、無力だろうと。
呟いた。
「届かない星に、手を伸ばす為──なんていう、月並みな理由だよ」
「…………………………………………
………………えっと、すみません。ちょっと何言ってるのかわかんないです…………」
「いやそこはわかったようなフリしとけやああああああああああああぁぁぁぁぁッッッ!!!!」
絶叫した。
半泣きになりながら
「えぇ…………
「空気を! 雰囲気を! 行間を! 読みなさいっ!!」
「無茶振り止めてくださいよ読めませんよそんなの。わかんないものはわかんないですって…………あぁ、いえ、その、
「は、はあぁぁぁぁぁ!? んなっ、なぁに抜かしちゃってんの、あんっ、あんたぁ! ジコトースイとかぁ! しっしっつれいなことぉ!」
とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、
「…………あぁ、あれですか? 『星に手を伸ばす』と『月並み』で、『星』と『月』の天体繋がりで上手いこと言ったと思ってるんですか…………? そうなんですか…………? …………うっわぁ…………」
「お"ッッッ! お"前ぇー! お"前お"前お"前お"前お"前お"前お"前お"前え"え"え"えええぇぇぇッッッ!!!!!!」
──夜の東京に、少女の悲愴過ぎる慟哭が響き渡った。
…………憤怒に駆られながらも、それでも彼女は最後まで暴力に訴える事はしなかったのだと、少女の名誉の為にここに追記しておく。
◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□
□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇
「大方の準備は整った、って事で良いんだな?」
「君らが十全な働きをしてくれた、というのならね」
夜の東京の人気のない街並みを、少年と青年が並んで歩いている。
片方は髪を金髪に染めているらしい、周囲にあからさまに軽い印象を持たせる風貌をした青年。
そしてもう一人が──無骨なガスマスクを装着した、やせぎすの少年だった。当然ながら、その表情は伺えない。
「…………それで。【
「あー。なんか晩飯買ってきてくれるって言ってたから頼んどいた」
「…………は?」
ピタリ、とガスマスク少年の足が止まった。
「あいつに、金を、渡したのか?」
「? おう。そりゃ金がなきゃ何も買えねーだろ」
「金があっても何も買えないんだよあいつは…………!」
途端に駆け出すガスマスク少年と、それをおうチャラついた青年。
「おいおい、どこいくんだいきなり?」
「あいつが買い物にいくとしたらコンビニだ…………あっちのセブンは確かすぐそばに公園があった筈…………!」
そのまま走り続け、やがて目当ての公園へとたどり着いた。
公園のベンチ。
ニット帽を被ったダウナーな雰囲気の少女が、スマフォを操作していた。
「来る…………次は絶対来る…………確率は収束する…………もう三百連近く回してるもん…………今度こそ…………」
少女の座るベンチの上には何枚もの
「おまっ…………! てめえこら俺の諭吉何枚つぎ込みやがった生活費まで入ってたんだぞゴラァ!!」
「…………喚くな【
ガスマスク少年の言うとおり、少女は目前に立つ二人の事などまるで目に入っていない様子で、ひたすらスマフォの画面をタップし続ける。
そして。
「お"っ………! キタ。キタキタコレキタコレキタコレキタコレ、キタキタキタキタキタキタキタキタキタキタアアアアァァァァ! おおっしゃ確定演出! 勝ったッ! 第二章、か、ん…………」
途端に目から光が消え、呆然とする少女。
「………………」
「………………」
それに引けを取らない陰鬱な表情で立ち尽くす二人。
やがて少女はブルブルとその身体を震えさせ──絶叫した。
「あ"あ"あ"あ"ああああぁぁぁぁぁッッッ!!!! また爆死したあああああああ"あ"あ"あ"あ"あ"ッッッ!!!!」
チュ、
ドオオオオオオオオオンッッッ!!!!
と、その場に大音量の爆発音が轟き渡る。
公園のすぐそば。
乱立するビルの二階にある不動産会社が、凄まじい爆発により木っ端微塵に吹き飛んだのだった。
「う、うぐうううぅぅぅぁぁぅぅ…………もう二度とピックアップなんか信じない……………………あれ、【
「てんめえええを追いかけてきたんだよこのクズ! 生活費返せコラこの魔法のカード全部ヴァリアブルじゃねーかまさか限度額の五万突っ込んだのか!? 一枚につき!!?? 何十万溶かしやがった腐れアマぁ!!」
「はぶっ!?」
脳天をひっぱたかれる少女──【
「…………はぁ。大丈夫なのかなこんな調子で…………せっかくちまちま小賢しい小細工を積み上げてきたんだ、決行日はもう少し真面目にやってくれよ?」
「このバカ女に言え」
「わ、わたしだってちゃんとするよ。ちゃんと」
ガスマスク少年──【
──いずれも
「【GRIM NOTE】での仕掛けは上々。細工は流々仕上げを御覧じろ──だ。この目論見が上手くいけば、もう【
ニタリ、とガスマスクの奥で【
「祭りの開催日はゴールデンウィーク。開催場所は──
──仙台だ」
◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■
■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆
「──ここにおられましたか、
東京某所、豪奢な屋敷の一角にて。
黒き
「久しぶりねー、にっしゃん。よく
高級そうな、というよりは間違いなく高級であろう紅茶を啜りながら、【
その側に佇むのは、黒と赤を基調とした服に身を包む、高貴な気配を漂わせる女性だった。
「いえ、大したことでは…………それで、私を呼び出したのは何用ですか」
「いや、ちょっと他のメンバーに言伝てを頼もうと思って。…………私が言ってもみんな無視するからさー。メッセージ送っても既読スルーされるし…………なんでだろうね…………私ボスなのに…………リーダーなのに…………」
「…………日頃の行いとしか言い様が…………いや、何でもありません。それで、言伝てとは?」
「…………えーっと。ほら、最近
「あー…………なにか、やってましたね。よくは知りませんが」
「うん。私も良くは知らない、知る気にならない。羽虫の羽音を逐一気にする程神経質じゃないものね。他の十五人もそうでしょう」
この上なく気軽そうに、
今、この東京を起点とする騒動など。
本当に、歯牙にもかけていないようだった。
「しかし、気にせずにはいられない、という事ですか?」
「そう。今は確かに小さなうねり。けど、このうねりはやがて少しずつ大きくなり──ひょっとしたら【
「かもしれない、ですか。私には到底そう思えませんが…………らしくもなく、警戒しているのですね」
「警戒半分、楽しみ半分、ってとこかしらね。いや、この一件自体はは本当に大したことじゃないし、大したことにならないと思う。あくまでこれは起爆剤なのよね──けれどこの小さく爆ぜた因縁が、連鎖誘爆を繰り返し──そしていつかはこの
「奴ですか。私には所詮は小物に過ぎないとしか思えないのですが──」
「いや、それは合ってるよ。あの子は紛れもない小物。けど──小物が大事を成せないなんて決まりは無いしねぇ。うんうん。その向上心、挑戦心はやっぱり楽しみだし、私としては嬉しくもあるんだけど──ねぇ?」
一転し、死神女王は。
底冷えするような、酷薄な笑みを浮かべる。
「そう簡単に私の
「…………それで、つまらない叛逆の意思は早めに摘んでおく、という事ですか。──【
赤黒き衣を纏いし女死神が、そう
しかし。
「いや、にっしゃん──【
「…………はぁ。まぁ、その言葉はありがたく思っておきます」
「うん。いや、にっしゃんを軽視してるワケじゃないのよ? 本当に。
「ありがとうございます…………それでは誰に声をかければ? 【
「んー。めいちゃんも、今回はいいや。あれから自力もつけてるみたいだし、実力は認めてるけど──流石にまたぞろ
「…………多分手遅れだと思いますが…………いえ、何でもありません。では誰を──」
「んー、そうだね──
──十の中から、二人。
で、どうかなーと思ってるんだけど」
「……………………は?」
赤黒き死神──【
自らの耳を疑った。
「だからぁ。十から、二人出そうかなーって」
「…………正気ですか? い、いくらなんでも、大人気無さすぎでは…………」
「そっかなー? クリスマスには六から一人、十から一人出して、結果は返り討ちだったでしょ?」
「いや、それは、相手があの【
「でも、来るよ? 多分。
──
愛する白き死神の名を告げた。
▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「──ああ、わかってる。
とある高層ビルの屋上にて。
白き死神が電話をかけながら、夜闇に瞬く眠らない都市を見下ろしていた。
『って事は二人きりですねセンパイ! 仙台ですよ仙台! 一緒に牛タン食べに行きましょう! 牛タンデートです!』
「未だかつてないレベルで色気を感じさせないデート名だな…………」
『おっ! 意外と好感触!? やぁったぁー! センパイと仙台デートだひゃっほー!』
「…………お前の知り合いの女刑事がスッぱ抜いてくれた情報通りの作戦決行日時に現地集合だ。おれは当日にしか出向くつもりはない」
『え、え"ーーーーっ!? 何でですか何でですかせっかく行くんだから時間つくって観光しましょうよ』
「真面目にやれ」
『大真面目ですっっっ!!!!』
「はぁ……………………やることが全部終わってからなら、飯ぐらい付き合ってやるよ」
『……………………え、マジで?』
電話の向こうで素の声が漏れていた。
「それじゃあな」
『あっえっ、ちょっと待ってセンパイ具体的なデートプランを──』
プツリ。
「…………緊張感ってもんがないのかね、アイツは…………まあいい。久々の、派手な
そう言った【
微かな笑みが、浮かんでいた。
「さて、征くか──祭りの時間だ」
因縁は収束し、宿命は収斂し。
新たな死闘の、幕が上がる──
忘却の淵より、終末の穹へと宛てて。
わたしは肪の
あなたは鎖されぬ
わたしは酔い潰れる
あなたは憂いを喰む
わたしは
あなたは
わたしは欺かれし
あなたは神聖なる
十王、九死、八極、七星、六道、五輪、四獣、三界、二天、一生。
啼き喚く
鴉は
叡智の欠落せし楽土。
黒白なりし庭園にて、あなたを待つ。
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