26.DANGER
「──この子の事はもういいでしょ。時間ないんだからさっさと本題に入らせてくれる?」
そんな風にさっさと話を進めようとする
『そっけないねー
「あ、えっと、すぐ、
【
『すぐ、また? うしな? ふぅむ、独特な名前だねぇ。どういう漢字?』
「え、えーっと、ええっとですね、
『あーはいはい。
「…………は? いやいやいやいやいやいやなんでわかんの!? なんで? ぜんぜん意味不明な喩えなんだけど!?」
『伊達に長生きはしてないのだよ。ちなみに
「えと、
「どっから出てくんのその語彙…………?」
まさか
「で、
『なるほどなるほど。それで「
「あー、まぁ、自分ではそんなにいい名前とは思ってないので、はい…………ようは──不良品ってなもんですからね、はい…………うへっへ」
いつもの三割増しぐらいに卑屈な笑みで、
『クックックック…………なるほどなるほどなーるほどね。うんうん…………いやー面白い面白い。
本当に愉快そうに、焼け爛れた顔で【
「………………はい、自己紹介終わりね! さ、もういいでしょ! 本題入るよ!」
『わかってるわかってる、まったくせっかちさんだねぇ
はぁあ、とため息を吐き──いや、水溶液の中で呼吸が出来るワケがない、というかそもそも喉も肺も【
『で、
「ご明察。古びたオンボロ
『ほほう、無銘達が? そりゃ確かに奇矯だなぁ』
ピ、と
「わぁ…………ハイテクぅ」
気の抜ける
「今日にワタシが解決したのを含めて、ここ1ヶ月で六件。…………
『ははぁ。つまり無銘達が
「あ、あのう、初歩的な質問で悪いんですが」
と、そこで
「犬型の
「あー…………まぁそっか。そうなるよね、普通…………」
『まぁピンとは来ないかな? 若い子にはねぇ…………けどね、犬っていうのは古来より【死】と縁があるものなのさ。低位の
「犬、と、死が? 縁?」
やはりピンと来ていなさそうな
「んー…………ほら、一番有名なので言ったら、あれだね。ケルベロス。アレ、冥府の番犬でしょ?」
「ああー、はいはい、ケルベロスですか。あー…………確かにそう言われてみれば、色々と浮かんできますね…………えぇーっと、確かエジプトの…………アヌビス? でしたっけ。犬の顔した冥界の神様」
『そうそう、そんな感じ。そういう神話を始めとして、「死にまつわる犬」は世界を見渡せば幾らでも散見される…………知っての通り、犬は古来より人類の頼れる相棒として付き添ってくれた。猟犬──命を狩り獲るモノとしてね。やがてその認知は、転じて命を司るモノという存在に昇華されていった…………その
「とはいえ、流石に現代ではその認知も薄れてるみたいで…………そういった死にまつわる犬は、
「な、なるほど…………なんとなくわかりました…………」
「…………ホントに?」
「ほ、ホントですとも!」
『ま、流石にケルベロスやアヌビスなんかのビッグネームとなれば相当な存在強度で顕現するだろうけどね…………掛け値なしの、
「ま、そんな感じ…………あー、また話が逸れた。んで、あんたはどういう風に観るの? これらの案件を」
再び話を元に戻す
『んー、まぁ確実に
「んな事わかってるよ…………問題は何が居るのかってコト。捕縛した
『ほー? そりゃ少し意外だね。口の固い
「そりゃあんたみたいなフワッフワな口の軽いヤツからすりゃそうなんじゃない?」
『辛辣だなぁ。事実だけれども。──いや、真面目な話、そもそも
「……………胸くそ悪い話」
『ま、その無銘を使い捨ててる、という事には変わりはないみたいだけど…………うーむ。それにしたって無駄に手が込んでるみたいだね。私からしたら小細工が過ぎるというか』
「言うじゃん。流石は腐っても、腐りきっても、
『腐って腐って腐りきった
「……………うん、まあそれは確かに納得いく」
【
『かといって、無銘共が自力で画策した、というのもしっくりは来ないねぇ。んな発想と、それを実現する
「……………
『そこまでいくかどうかも微妙だね、所感で言わせてもらうなら。繰り返して言うけどマジもんの大物
「…………………」
そこで一旦両者の間に沈黙が降りる。
その沈黙を破ったのは──当然空気の読めない
「…………あー、まぁ細かい事を考えだすと切りがないんじゃない、でしょうか? えっと、つまり──『弱くはないけどそんなに強くもない』
「……………ま、そうなるかな」
『そうだねぇ。…………個人的にはどうにもキナ臭いなぁ。まったくもって胡散臭いよ。歯車が噛み合わないというか──歯車が足りないというか』
「……………あんたでさえも、そうなるのか、やっぱり。【
『おいおいこうまで話させておいてそれかい!』
流石に呆れ気味の言葉を飛ばす【
「ワタシだってガッカリだっての。わざわざこんな穴蔵まで来て得るもの無しとかさ…………」
『
そこで機械音声でのアナウンスが鳴り響く。
「──ってワケだから、帰らせてもらうわ。ごきょーりょくどーも。…………はー、終わった終わった帰ろ帰ろ」
『うわー、酷い。心ない。やれやれ…………せっかく助言してあげてるのに随分と辛辣だよねぇ。こういうのアレだろ? 塩対応っていうんだろ? ──ねぇ?
「は、はひっ!? アタシですか!?」
ビクリ、と飛び上がって
『うんうん。少しの時間だったが私は君が実に気に入ったよ。次の機会にも是非君が来てくれたまえ。なんなら一対一で』
「──ダメに決まってんでしょーが。行くよ
「あ、え、は、う、ら、らじゃです」
『また会おう、二人とも。また、きっとね──』
【
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