20.地雷
「【
──【
第四十五期、入局式が行われていた。
壇上に立ち、挨拶を行っているのは──【
若くして【
「
水のような冷淡さと火のような苛烈さ。それら両方を内包した可逆的な声色で、
「仮入局期間を経てここにいる者もいれば、そうでない者もいるでしょうが…………何れにせよ、今【
ジロリ、と壇上より、まるで人波を値踏みするかのように睨め付ける
「人智を越える存在である
「──私からの挨拶は以上です。この先の
「は、はッい!」
「…………うっわー。
「手と足が一緒に出てる…………小学生の運動会みたいだな」
その様子を見た同級生──
ともあれギクシャクとした歩調でどうにか壇上に上がった
「し、新局員の皆さん、初めまして!
「あんたが言うか、
「お前が言うな、
非情な二人のツッコミを知ってか知らずか、辿々しく
「…………この
ボソリ、と小さく訊ねたのは、檸檬色の髪の少女──名前は
…………
「予定だと、確か二十時までだったな。まあ進行ペース次第で多少は前後するだろうが」
「…………時間の無駄ですね。わざわざ
隣に立つ青年──
「そう言うなよ。なんせ入局者数がこれまでの三倍以上にまで跳ね上がったんだ。応対する人員はそりゃ増やさなきゃな。これも仕事だぞ、
「…………わたしの仕事は
「生憎とそれは通らん。この【
「………………」
講堂の壁を背にして立つ四人の
「し、しかしあれだよねー。せっかく召集したってのに半分しか集まらないんじゃ意味ないじゃんって気がしちゃうよね、うん。いやまあ
心なしか重くなったような場の空気を変えるため、
「そもそも
話題に応える
「んっと…………もう場所移動か。確か次は訓練室で初の戦闘訓練でしたっけ?」
「ああ。といってもほぼ
「──おいぃぃいっす! 邪魔すんぞーーー!!」
と、講堂内を揺るがすかのような威勢の良い声を上げながら、誰かが講堂内へと入ってきた。
「あ"」
と
「え"」
と
「うぐっ」
と
「………………チッ」
と
「ゲーッ!」
と
…………という風に、露骨な嫌な表情をして
「ようよう
「………………ど、うも。
引き摺った笑みを浮かべて、なんとか
その場の新局員と
しかし中年といっても、その姿に衰えなど微塵も窺えない。大柄な体格と無精髭が相まって、まるで熊か何かのような印象を周囲に振り撒いている。それがとてつもない大声を上げるものだから、周りは萎縮して当然といった有り様だった。
「んだよテンションひっくいなー。若いんだからもっとアゲてけや! ワカモンは元気が一番だぞぅ!」
「あ"""""ーーーーうっさい! 怒鳴るな! 邪魔すんなぁクソ親父!!」
「お前も怒鳴っとるだろアホ娘! ブーメランというヤツだな!」
ギャイギャイと言い合うのは──神前
侃々諤々な二人の衝突に、四人の
「あいっかわらず
「あの年頃の女子って大抵あんなもんじゃねぇの? 姉ちゃんもあんな感じだったな……」
「へぇ、
「じゃあ父親の下着と一緒に自分の下着洗濯出来るか?」
「は? 出来るワケないじゃん」
「…………父親って哀しい」
そんな
「なぁーに! しに! 来たんだっての! 邪魔になるからどっかいってよ!」
「ただの人探しだよ! 多分新局員の中に紛れ込んでやがんだって…………ええい、お前は引っ込んでろっての…………お"ぉい
「ヒッ!」
と、怒声を浴びて、新局員の中から小さな悲鳴が上がった。
「おいーっす、お前ら、ちょい退いてくれーぃ。そう、そこの紅緋色の髪の小娘だ。踞ってるヤツ」
新局員を掻き分けて、
「ひ、ひぃいぃぃぃぃいぃぃ! ご、ごめ、ごめんなさいごめんなさい
「知るかっっっ!
「だって
「知るかっっっ! んなもんよりオレの言いつけを優先しろバカタレ」
「理不尽ですよ不条理ですよ勘弁してくださいよおおぉぉぉぉ…………」
憚る事なくべそをかきながら泣き言を漏らすのは──紅緋色の艶やかな髪を、俗にいう姫カットにした少女だった。
「…………ちょっと親父。誰よその子? 新局員でしょ?」
「おう。確かに今期入局だが、仮入局してもうそこそこ経ってる筈だぞ」
「だいたい三ヶ月ぐらい、ですぅ…………」
「はぁ…………いや、だから新局員に親父がなんの用なのかって…………」
「いや、こいつ、オレの弟子。一応」
「……………………は?」
父のその言葉に、娘である
「で、お前らの同僚、かな?
ベシ、と後頭部をはたかれ、はうっ、と悲鳴を上げる。
叩かれた勢いでそのままトテトテと他の
「え、えと。あの。その。ぽの。………………
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