第4話「真っ暗闇」
「セクト……?」
セクトの身に何かが起こっている。
セクトが倒れて、体温が上がって、体から何か黒いものが溢れて…
その黒い何かに、私とフロウは突き飛ばされてしまった。
目を開けた先では、セクトが下を向いて立っていた。
近くに寄って、話しかけてみる。
「ねぇ、セクト、ねぇ、大丈夫?」
セクトの口元がニヤリと笑った。
次の瞬間。
バシンッ
セクトが私の頬を殴り、突き飛ばしたのだ。
あまりの衝撃で動けなくなった私達に近づいて、低い声でゆっくり話し始めた。
「全てのものを、この手で壊す」
白にさえも染まらなそうな真っ黒な羽根を生やして、空高く飛び上がったセクトは…
********************
あの空間だ。
真っ暗で、寒くて、私が嫌いな空間。
手首足首がひんやりしているのが感じられる。
動けない。
そうか。
私は繋がれているんだ。
必死に抵抗するも、その鎖はびくともせず、私の体を締め付けた。
…国? 国が見える。
視界には何故か国が見えていた。
私の視点だろう。
でもその視点はさっきから激しく動いている。
上下左右、私まで酔ってしまいそうだ。
不安定な視界に映っているのは…
ウェル…?
ウェルが必死に叫んでいる。
泣きながら。
体を赤く染めながら。
どうしたんだろう。
ウェルが肩に掴みかかった。
両肩に重みを感じた。
周りは真っ暗、なのにしっかりと視界が開けているこの状況に戸惑っていた。
ウェルの温もりを感じた。
その温もりはだんだん私を包みこんで……
********************
目の前のセクトの体が温かくなっていく。
今までの黒いオーラがだんだん薄くなって……
私が手を置いた肩が、いつものセクトの肩になっていた。
状況が掴めていないのか、キョロキョロと周りを見回して、それから私とフロウを交互に見た。
「ウェ、ル? フロウ……?」
目の周りが熱くなっていって…
「良かったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
思い切りセクトに抱きついた。
セクトも、戸惑いながらも優しく抱き返してくれた。
戻った。 いつものセクトだ。
フロウが後ろから近づいてくる。
大勢の国民が私達を大きな輪で囲んでいる。
「大丈夫ですか? 怪我は無いですか?」
「怪我は無い、けど… 二人とも……」
私とフロウの鎧や体についた沢山の傷。
今はいないもう一人のセクトがつけた傷だ。
まだズキズキ痛むけど、今はそんなのどうでもいい。
「大丈夫だよ」
笑顔で返してみせた。
心配させたくないから。
セクトの悲しい顔を見たくないから。
フロウも同じ考えのようで、優しく「大丈夫です」と微笑んだ。
夕日が綺麗だ。
"あの戦い"がどんなに長いものだったか、肌で感じられる。
ちょっとセクトが心配だけど、今はもういいや。
「帰ろう!」
セクトとフロウの手を引いて、城に向かって走り出した。
よろけながらも、ついてきてくれる二人。
幸せ。
私は今、幸せだ。
あの時よりもずっと楽しい。
ずっと幸せ。
今ここにいたら、喜んでくれるのかな。
OREKABATTLE 1 えいち @Hanarukinoko
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