第13話 王家の魔剣
「ユキ……まさか……」
タケの脳裏にユキの紫の瞳が過る。
(これが狙いか?いやなんのために……ユキ何を考えている)
王都の防衛は無いに等しかった。
ゴーレムはユキがいなければ動かない。
ゾンビは見境い無く暴れ回るだろう。
頼みの騎士団は人数を縮小され、王宮の警護すら足りないほどだ。
玉座はアキと近衛兵が護っているが、実際、戦えるのは数名である。
質素な暮らしが仇となり、籠城もままならない状況。
王都に四方から兵士がなだれ込むのは時間の問題であった。
「降伏しかないな」
以外にもアッサリとタケはアキと大臣に言った。
「バカなことを…」
大臣が首を横に振る。
「一般人を巻き込みたくない…そんなトコだろうが、抵抗しても、降伏しても同じことだ」
アキがタケを諭すように言う。
「ユキは?」
タケが大臣に聞く
「ユキ様は、以前…行方が掴めぬままです」
「タケ!この反乱はユキの策略だ!解っているんだろ?」
アキが声を荒げる。
押し黙るタケ。
「タケ王……城を抜け出しましょう、今は逃げるのです、アナタは王らしからぬ、良き王でした」
大臣が涙を流す。
「アキ殿!王をお頼みします」
大臣の言葉の意味を理解したアキがタケを隠し扉へと促す。
「すまない……」
タケも大臣に詫びる。
「タケ王、通路の奥に、王家の魔剣があります。私にはどのようなモノか解りませんが…王家に伝わる剣。あなたがお持ちください、そして…また、この玉座にお座りください、その時まで王家の魔剣はあなた様にお預けします。約束ですぞ」
大臣がニコリと笑う。
あと数時間もすれば、この城は包囲される。
抵抗すれば、それだけ犠牲も増える。
「さぁ…行ってください」
アキがタケを隠し通路へ押し込むように玉座を後にする。
定期的に魔石が配置され、タケが歩を進めると順番に緑の光を放つ。
石煉瓦の冷たく、狭い通路と階段、途中の小部屋にその魔剣はあった。
禍々しい鞘に納められた一振りのロングソード。
タケは魔剣を手にアキと通路を抜けた。
王都の外れ、小さな湖のほとりに繋がっていた。
タケとアキが外に出て数秒後、ガラガラと通路が崩れていった。
最後の魔石が点灯すると奥から順に爆発するようになっていたようだ。
「よくできているな…」
感心したようにアキが言う。
タケが無言で苦笑する。
ほとりで腰を降ろして、十数分後。
王都の拡声器から大臣の声が流れた。
「全面降伏する」
「タケ王は、我らを見捨てて逃亡した…すでに玉座は空席である…よってここに降伏を宣言する」
大臣は人望熱いタケ王の復帰を信じ、この先、生まれるであろう反乱の芽を摘むつもりなのだ。
あえて、タケ王に汚名を着せたのである。
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