第12話 乱世再び
タケの王就任には否定的な意見が多かった。
当たり前である。
名も無い騎士が、1夜で軍事大国の王だというのだから。
ユキの後ろ盾が無ければ、反乱が起きても不思議ではない状況のなかで強引に戴冠式を済ませてしまったのである。
反乱の芽は、ユキが早めに刈り取っていたとはいえ、タケの私利私欲ない性格が国民に受け入れられるのは、思いのほか早かった。
シュウ王が散財し、傲慢な王であったことも幸いし、タケの慈悲深い、民衆目線な発言。
「難しく考えなくてもいい、こうしたら幸せだという発想を政策とすればいい」
このスタンスは新王制の礎となり、軍事技術が広く国民の生活に役立てられていた。
とはいえ、綺麗ごとばかりで国は成り立たない。
その後ろではユキが暗躍していたのである。
当初、困惑していたタケ、ユキがなぜ自分を王にしたのか?
そればかり考える日々を抜け、今は王として出来ることを模索している。
従属として重税を課されていた国を協力国とし解放し自治権を与えた。
これはユキの提案である。
正直なところ、ユキからの提案は気持ちが悪いほど、平和を前面に押し出した案ばかりだった。
タケはシュウ王の軍事増強路線はユキの影響と思っていた。
正直、王の話を持ち出してきたときも、ユキの紫の目には悪しきナニカを感じていたのだ。
だからこそ、引き受けた王の座。
タケはユキの暴走を止めるために、それだけのために王となったのだ。
しかし、タケの予想に反し、ユキの提案や行動は実に平和的だった。
そして、軍を縮小して2年……それは起こった。
タケの王就任から3年が経った夏の夜のこと。
ユキが王宮から姿を消して10日後のこと。
シュンカは他国の連合軍から包囲され、攻め落とされようとしていた。
ねらいは魔法炉。
無限の魔法力を無尽蔵に産み出す悪魔の技術。
ユキという悪魔が産んだ火種。
大陸は再び戦乱の時代を迎えた。
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