第9話 ユキの真意
ユキの
『シュンカ』は軍事大国、そして魔法技術先進国としての地位を確立していた。
すでに、シュンカに攻め込むような国は無く、進んで同盟を結びに来る。
自国に不利な不平等条約を結ばせ、同盟国から、あらゆる資源を搾取する。
一般にはシュンカ国シュウ王の政治手腕を称える声が大きく、シュウ王もそれに、ご満悦ではある。
しかし、実情はユキが後ろで暗躍しているゆえの繁栄であり、表面からは視えない恐怖政治国家であることも1部周知の事実である。
数年前まで特権階級であった、各師団員は今や国民の奉仕者である。
もともと反乱の種を抱えているユキの政策、ユキは反乱を防ぐために王への忠誠と言葉を置き換え、魔法による契約を交わしている。
反乱の気持ちを抱けば……死。
契約という名の呪いである。
契約を結んだ、師団員は王宮近くに配置され、その家族も特権階級を与えられ豊かな生活を保障されている。
未契約の師団員は辺境の警備、すなわちゴーレム・ゾンビの管理などに回される。
その家族は、城に仕え雑用を与えられるのである。
明確なカースト制度で管理された国家、それが今のシュンカだ。
タケは契約を拒み、辺境の警備に就いている。
家族はすでに他界している、脅されることもない。
主な任務は、魔石採掘場の管理だ。
劣悪な環境での採掘、採掘に従事しているのは犯罪者や未契約の反逆者と親族だ。
ユキは自らに頭を下げるものには寛容であるのだが…下げぬ者には容赦がない。
各師団長では、
桃色のローブを纏う
黄色いローブを纏う
赤いローブを纏う
アキはタケと行動を共にしていた。
辺境に身を潜め、名を偽りタケと共に暮らしている。
2人はユキの真意を量ろうとしている。
確かに国は豊かになった。
国民にも飢えは無く、平和に暮らせる。
だが、このゴーレム・ゾンビを見て、他国の疲弊を目の当たりにするに、ユキの真意には黒いモノがあるように思えてならない。
タケが最後に見たユキの紫に光る眼…。
(あれは…闇の光を宿している)
そう思わずにはいられないのだ。
…………
王宮の地下、『魔法炉』が設置してある部屋。
厳重に魔法でロックしてあり、ユキ以外が立ち入れない部屋がある。
ユキは魔法炉の中を覗き込み話しかける。
「あなたのおかげですよ…ナーツイヤ様……私を軽く扱った報い、高くつきましたな…あなたは国の宝です、私のかな?フフフフフフ」
薄く笑うユキ。
魔法炉の中にはゾンビ化したナーツイヤと50体ほどのゾンビが緑色の水に浸けられている。
『魔法炉』とは魔法力を持つものを不死化させ永遠に魔力を調整・放出し続けるもの。
外部から送られる魔法力を取り込み、調整して出力する生きた媒体を保管するための器具。
生きた人間では、あっという間に疲弊し死に至る、ゾンビならば死なない、苦痛も感じない。
年老いた魔石使いの末路である。
ゾンビとは魔法炉の作成過程で生み出された副産物に過ぎない。
その人体実験の第一号がナーツイヤであった…ユキにとっては、ただそれだけのこと……。
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