第7話 タケの初陣

 千体の土人形は各師団の兵が国境近くの丘で4日間で作られた。

 5日目の朝、日の出と同時にユキの号令と共に進軍を始める。


 ゴーレムは半日でシキ王の城を取り囲み、籠城まで追い込んでいた。

 攻め落とすのは時間の問題。


 ユキはシキ王に降伏を薦めるために前線へ行く許可を王に求めた。

 王は万が一のためと、ハルトに騎士を20名護衛に就けよと命令する。


 ユキは専用の馬車で城の城門の前に立つ。

「シキ王よ、聴こえるな!我はシュンカ王国の魔法使いソーサラーユキ、シュウ王に仕えるものである。抵抗を止め、降伏すれば国民の命は保障する。」


 頭に直接響くユキの声、もちろん魔法の成せる業である。


「国民の命だと…我の命は保障せぬということか!」

 怒り狂ったシキ王。

「アーチャー、あの魔法使いソーサラーを射抜いてしまえ!」


 ユキめがけて矢が雨のように降り注ぐ。

 騎士団が盾でユキを守る。

 数人が矢に射られ倒れるている。


「バカが…邪魔だ!どけ」

 ユキが騎士団をどかす。

 球形の透明な泡に包まれるユキ、スーッと宙に浮かんでいく。

 矢は泡に阻まれユキには刺さらない。


「騎士団、城門をこじ開けゴーレムと進軍しろ!私は先にシキ王のもとに行く」

 そういうと、宙から城へ入って行った。


 シキ王の前に立つユキ。

「お初にお目にかかります」

 深々とお辞儀するユキ。

「先ほどの声の主じゃな…」

「ユキと申します」

「我をどうする?」

「自害してはいただけませんか?」

「ふざけるな!」

 シキ王の怒号と同時に、宮廷魔石使いウィザードが炎や氷をユキへ飛ばす。

 一呼吸遅れて、近衛兵が斬りかかる。

 その全てがユキの身体に届かない。

「あくまで、抵抗か…バカが…死ね!」


 ユキを中心に空気の刃が部屋中に飛び交った。



 一人の騎士が玉座の間にたどり着いた。

 騎士が見たものは、血まみれの部屋にズタズタに裂かれた10数名の死体。

 玉座に腰かけるユキ。

 魔力の力か水晶玉にシキ王の首を入れて、足でコロコロ弄んでいる。

「ん?なんだ1人だけか…」

 ユキが騎士に気づいて呟いた。

「お前…戻ってハルトに報告しろ、制圧終了だ。安心して入ってこいとな」

「ユキ…」

 兜を脱いだ騎士はタケであった。

「タケか…どうした…報告に行けよ」

「ユキ…お前…」

 一歩ユキに踏み出すタケ。

「行けよ…タケ…」

 ユキの瞳がギラリと光る。

 比喩ではなく、瞳は紫色に光っている。

 タケはユキに恐怖した。

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