第6話 小国の挙兵
ユキが
王が各師団長を集めた。
4つの師団のなかで唯一兵を持たない師団、それがユキである。
ユキが広間に入ると、すでに他の3名の師団長は揃っていた。
壁を背もたれにし腕組みをしている、
王が座るであろう上座の右手に座る、
窓から街を見下ろしている、
ユキを
少し遅れて大臣が入室し、師団長全員に席に着くよう
ナーツイヤが斜め前のユキに話しかける。
「ユキ殿、その仮面、王の御前では外された方がよいのでは?」
「この仮面は顔に埋め込んだ魔石の魔力を抑えるためのもの、ここで外すわけには……」
ユキの顔は2/3ほど仮面に覆われている。
「道具に魔石を埋め込むような感覚で、身体に埋め込むとは、
ハルトが正面のナーツイヤをニヤニヤしながら見る。
「ハルト殿、ナーツイヤ様に何がおっしゃりたいのか?」
アキがわざとらしく聞く。
「アキ殿も
ハルトが答える。
「アキ殿も、ユキ殿も才気に溢れておったゆえ……厳しく育てたかも知れませんな」
ナーツイヤが白く長い顎鬚を撫でながら答える。
「私は、ナーツイヤ様のご指導を受けた覚えはありません。司書でしたから」
ユキが少々キツイ口調で返す。
しばしの沈黙の後、王が姿を現した。
「余は予てより、隣国のシキ王には苦渋を飲まされておってな……」
静かに話始めた。
「そこで…だ…隣国への挙兵を決めた」
「王…それは、あまりに急なお話、そもそも、シキ王の軍は我が国の5倍ですぞ」
ハルトが王の言葉を遮る。
「ご心配なく」
ユキが立ち上がる。
王以外の4人がユキを見る。
「予てから、シキ王の強引な外交には思うところがありまして…王に挙兵を進言いたしました」
ユキが王の後ろへ立つ。
「ユキ殿…失礼ながら貴公、師団長とはいえ1人ではないか、まさか我々の兵をあてにしての無謀な進言ではあるまいな」
アキがユキをバカにしたように言う。
「ふっ…中庭へ移動しせんか?」
ユキが促す。
「中庭に千の兵でも用意しましたかなホホホホホ」
ナーツイヤが笑う。
…………
中庭に移動すると、土で作られた人型のオブジェが1体置いてある。
「これが兵です」
ユキが言うと師団長が笑い出す。
「話にならん!」
ハルトが怒鳴りだす。
「ハルト様、いかがですか?この土くれと戦ってみては…」
ユキが怒るハルトを煽る。
「フハハハハ、俺がか…バカにしおって、おい!そこの、この土くれを壊して片づけろ」
ハルトが手招きしたのは、警備していたタケである。
「はっ!」
タケが走ってくる。
(ユキ…なのか…あの姿、もはや面影も無い)
「この騎士でよろしいか?ハルト様」
ユキが土くれに粉を振りかける、すると、土くれがビクンと動き出す。
「その騎士を殺せ!ゴーレム」
(殺せ?なんのことだユキ)
ゴーレムがタケに襲いかかる。
タケが身構えるより早く、ゴーレムはタケを殴りつけた。
地面に転がるタケ。
「なっ…」
アキが驚いたようにユキを見る。
「貴様!」
ハルトがユキの胸ぐらを掴み締め上げる。
「やめい!」
王がハルトを制止する。
「ハルトよ、そのゴーレム倒せるか?」
王が興奮しているハルトに問う。
ハルトは無言で腰のロングソードを抜いてゴーレムを斬りつける。
しかし、剣は土くれを裂くだけ、ボトリと落ちた腕もすぐに復元される。
「これは…」
ハルトの動きが止まる。
「バカめが…」
ゴーレムを炎が包んだ。
ナーツイヤが杖に仕込んだ炎の魔石を発動させたのだ。
だが、表面を焦がすだけでパラパラと剥がれては再生する。
「ちっ!」
炎剣・氷剣を両手に構えたアキは斬りかかるのを止めた。
「これを1000体用意いたしますゆえ、皆様の兵は不要にございます」
ユキが王に
「うむ。挙兵を許そうユキ、師団長はユキのサポートを頼むぞ」
そういうと王は自室へ戻った。
(これが…禁書から得た力…)
ナーツイヤが睨むようにユキを見ていた。
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