第5話 ソーサラー

 あれから2年の月日が流れた。

 タケは騎士の称号を授与され、正式な騎士として王宮警護の任に就いている。

 そして、ユキは……。


「本日、長年不在となっていた『魔法使いソーサラー』を任命する」

 玉座の座る王、その脇で大臣が長々と口上を読み上げている。

 タケは玉座に続く長い通路で『魔法使いソーサラー』をひざまづいて迎える。


 玉座には王、その隣には王妃、王の左手には大臣が立つ。

 王妃の右側には一段下がった場所に、3人の男が立っている。

 桃色のローブを纏う騎士団長ナイトマスター『ハルト』ロングソードを片手で振り回す中年の剛腕の騎士。200名余の騎士ナイトの頂点である。

 黄色いローブを纏う魔石帝ハイウィザード『ナーツイヤ』魔石の扱いに長けた、70歳過ぎの老人。30名弱の魔石使いウィザードを束ねる長。

 赤いローブを纏う魔法剣士長ルーンナイト『アキ』魔石を融合させた、炎剣・氷剣の2刀を携える若き剣士。10名の魔法剣士マジックナイトを従える。


 剣技に長けた騎士ナイトの長・魔石の扱いに長けた魔石使いのウィザード長・魔法力を持ち剣技に精通した魔法剣士マジックナイトの長、この職位が不在になったことはない。

 しかし『魔法使いソーサラー』だけは長年不在だった。

魔石使いウィザード』と『魔法使いソーサラー』は似て非なる存在だ。

 魔石使いウィザードは魔石に込められた力を解放させるもの。

 魔法使いソーサラーは魔石を媒体に魔法を使うものである。

魔法使いソーサラー』とは自然に産まれるものではない。

 魔石使いウィザードが自らの身体に魔石を埋め込んで人為的に産み出されるのである。

 しかし、魔石を埋め込むリスクは高く、1個の魔石で融合率は10%以下。

 さらに魔法を発現させるための魔法力は通常の魔石の力を解放させる200倍もの魔法力を必要とする。

 ある時代には、人体実験のように魔石使いに魔石を埋め込むことを繰り返していた、だが現在は資質あるモノの本人の意思に任されている。

 そんな理由で長い間『魔法使いソーサラー』は空席だったのだ。

 それが、今日埋まろうとしている。


魔法使いソーサラーを拝命する者、ユキ 王の前へ…」

 扉が開けられ、玉座へ歩くユキ。

 白いローブを纏い王の前で忠誠を誓うユキの姿を、ひざまづいたままのタケが見ることは無かった。

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