作戦会議(先)

 後輩を説得すべく、友村と作戦会議をすることになった。


 いわく、まだ僕が先生に呼ばれていないのは、後輩が気が付いていないか、躊躇っているかららしい。


 どちらにしても早めに行動するに越したことはないが、まったく時間がないわけでもない。


 この辺もやはり後輩次第というのはなんだか、釈然としないけれど。


「まずは関係をはっきりさせておくが、先堂が謝る側だな」


「不本意だけどね」


「で、なんで謝るんだ?」


「相手が怒っているからでしょ?」


 ほかにどんな理由があるというのだろうか。


 しかし、友村はこちらに非難の目を向けてきた。


「なんで後輩ちゃんは怒ってるんだ?」


「僕に聞かれてもわからないよ」


 友村が大きなため息をつく。友村には後輩が怒っている理由がわかるとでもいうのだろうか。


 ため息に対して、ムスッとした表情で返す僕に、思い出したかのように、適当に話し出した。


「そういえば、三日くらい前先生に先堂を呼んでくるように言われてたんだわ。わりい、わりい」


「ちょっと待ってよ。それって、すでにアウトだったってこと?


 っていうか、そんな大事なこと、そんな適当に言わないでよ。こっちは、人生かかっているようなものなんだから」


 他人事のような友村とは対照的に、僕からは血の気が引いていくのがわかる。


 最悪のシナリオが頭をかすめ、責任をだれかに押し付けたい衝動に駆られていたら、「そういうことだ」と友村の声がした。


「そういうことって、後輩が怒っている理由ってこと? 嘘だったの?」


「嘘だよ。でも、なんとなくで謝られても全然許す気になれないってのは分かっただろ?」


「確かに分かったけど、僕と後輩のやつとは全然違うんじゃない?」


「ああ、全然違う。先堂がしていたのは犯罪だからな。俺の嘘とは比べようもない。


 きっと、今の先堂よりも後輩ちゃんは怒ってるだろ。先堂と違って、後輩ちゃんは人生壊されたみたいなものだしな」


「知ってたの?」


「お前、一年生の中で結構有名人みたいだぞ?」


 全然知りたくなかった情報は置いておいて、まじめに謝罪する方法を考えることにした。

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