謝罪(先)
後輩がブチ切れてから、僕は後輩に呼ばれることはなくなった。
はじめは違和感があったけれど、何日か過ぎていくうちに、後輩から解放されたのだと気が付いた。
「最近後輩ちゃんに呼ばれないのな」
「うん、せいせいしたよ」
「何やらかしたんだ?」
「ストーカーしたこと謝ったら切れられた」
考えてみたら、こちらは誤っただけだというのに、なんで切れられたのだろうか。
思い出したら腹が立ってきた。
「参考までに、どんなふうに謝ったんだ?」
「『ごめん、悪かった』って」
友村はじっと何かを考えたかと思うと、大きくため息をつく。
「まあ、先堂は後輩ちゃんから離れたかったみたいだからな。良かったと言えば良かったかもしれないが……」
「そんな風に意味深に言われたら怖いんだけど……」
「ストーカーに目を瞑る代わりだったんだから、後輩ちゃんにしてみたら、もう先堂のことを学校に言ってもいいわけだよな」
確かに、友村の言うことも一理ある。
一理あるが、一理あるどころじゃない。後輩の性格を考えたらやりかねない。
もしかしたら、付きまとっていた証拠すら残しているかもしれない。
「ちょっと行ってくる」
「はい、待った」
「友村、止めないでよ。死活問題なんだよ」
「もう授業始まるから、いったん落ち着け。授業中はさすがに、後輩ちゃんも通報できないから」
時計と友村を交互に見て、少し落ち着いた。
だが、今度は妙な不安で授業に集中できそうになかった。
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