飲み物

「先輩、質問なんですけど」


「なに?」


 夕暮れの放課後、一組の男女が一緒に歩いていた。


 やや上機嫌の少女と、不機嫌な少年の組み合わせは、端からだとちぐはぐに見える。


「何で今日、お茶買ってきたんですか?」


「後輩がなにも言わなかったから」


「確かになにも言いませんでしたけど、普通訊きませんか?」


「・・・・・・訊いたら『自分で考えてください』とか言ったんじゃない?」


「まあ、そういうことにしておいてあげます」


 背伸びをするように両手をあげた少女が、そのまま腕を後ろに回し、組んだ。


 少年は、不服そうな顔をして、ぼそっと「やっぱり嫌いだ」とつぶやき立ち止まる。


 耳聡く少年の言葉を聞いた少女は、振り返ることなく「私もです」と前を歩いていた。

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