飲み物(先)

 昼休み、後輩から『飲み物買ってくるなら、ついでに私の分も買ってきてください』とメールが来た。


 要約すると『飲み物を買ってこい』だろう。


「先堂、何のメールなんだ?」


「後輩からの脅迫メール、かな」


「なんだそれ」


 友村の言葉に、僕もなんだろうかと首を傾げる。


 本当にどう言う事なのだろう。なぜ僕は後輩の、しかも女の子のパシリをしているのだろうか。


 自業自得なのは、重々承知しているが。


「とりあえず、行ってくるよ」


 手を振る友村に背を向けて、自動販売機に向かった。



 自動販売機を前にして、なにを買えばいいのかを教えられていないことに気がついた。


 後輩に連絡してもいいのだけれど、連絡したらしたで、なにか言われそうな気がして、無難にお茶を買うことにする。


 もしも文句を言われたら、そのときには開き直ろうと心に決めて、一年生の教室に出向いた。


 扉を開けると同時に、数人の生徒から視線を向けられる。


 すぐに「こっちですよ」と呼ぶ声がして、後輩を見つけることが出来た。しかし、後輩は座った椅子から動く気はないらしい。


 一年生の教室に入っていくのは気が引けたのだけれど、このままここで立っているだけでも目立ってしまう。


 行っても地獄、行かなくても地獄であれば、後から後輩にどやされない方を選ぶべきが。


「これでいいんでしょ?」


「ありがとうございました」


 後輩は代金を渡してくれたけれど、それ以上に周囲からの視線が痛くて、一瞬でも早くこの場から立ち去りたくて仕方がなかった。


 だが、ここで逃げ帰ってしまえば、それこそ先輩としての威厳がなくなってしまいそうで、視線に耐えて急ぎすぎないように帰ることにした。

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