先輩と友人(先)
「先堂をこき使っている後輩を知ったんだが」
「そうなんだ」
放課後、友村から言われた言葉に、僕は素っ気なく返したけれど、心のどこかでは同情してくれるのではないかと期待していた。
「ちょっとやりすぎだよな」と一言もらえれば、少しはモヤモヤする気持ちをが晴れるだろう。
同時に馬鹿にされるのではないかという不安もあった。
友村の言葉をたった一人緊張して待っていたのだけれど、やってきた言葉は僕が想像していたものとは全然違っていた。
「羨ましいよな」
「・・・・・・なにが?」
「なにが、じゃねえよ。あんな可愛い子に相手してもらえるんだろ?
むしろ、ご褒美じゃないか」
「相手してもらえるって言うより、虐げられてるんだけど」
「可愛ければいいだろ」
ちょっと、友村の考えが理解できない。
というか、引かざるを得ないし、友村の将来が心配になる。
しかし後輩はそこまで言えるほどに可愛いのだろうか。
人の少なくなった教室のドアが、音を立てて開かれる。
現れた後輩に、嫌気からため息をつきたくなるが、一度冷静になって教室を見回す。
残っていた十数人ほどの級友は、一様に後輩を見つめて、ひそひそと話している。
なるほど、顔は可愛いのかもしれない。
でも、ずんずんと僕の前にやってきて、「先輩、鞄もってください」と言う後輩を、可愛いとは認めたくなかった。
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