②:1話の解説

・夕立の亡霊

 悲劇から数日、提督は時雨の挙動の変化に戸惑います。


 今まで何かに怯えるようにしていた彼女が、

 突然自分に向けて好意を向け始め、

 そして更には死んだはずの夕立が生きているかのように振る舞い始めたのです。

 

 夕立の発言は多重人格のように時雨の口から発せられます。

 その異様さと恐ろしさ。


 提督は、時雨が現実逃避を起こしてしまったと誤認します。

 彼は幾度と無く、彼女に真実を告げようと試みましたが、

 時雨を想う夕立にそれを阻害されて徒労に終わってしまいます。



・提督の決意

 提督は時雨の目も当てられない行動に自戒します。

 ”こうなったのは自分の責任だ。”

 そしてその責任を取るため、時雨に指輪を渡す決意をします。

 悲しいことにそれは彼女への愛ではなく、自分の罪の償いでした。




・時雨の嫉妬

 時雨は生前の夕立が提督にどう接していたかを知っていました。

 それでも尚自分に指輪を渡したのは、

 単なる能力の向上ではないと信じていました。


 ですが、提督はここで失言をします。

「カッコカリなんだってば」

 彼女は悟りました。

 この指輪は自分に対する愛の証ではないこと。

 抱き合う夕立に頬を染めている彼が、夕立を好きだという事実。

(実際に彼が頬を染めたのは、突然抱きついてきた時雨への戸惑いでした。)


 提督を溺愛している彼女は、二人に嫉妬を抱いてしまいます。

 提督が自身の想いを伝え切れていれば、こんなことは起きなかったでしょう。



・時雨の誤算

 記憶を失い、嫉妬に苦しむ彼女は思いがけない行動を取ります。

 摘出したナノマシンを利用して提督との意思疎通を試みたのです。


 夕立以上に提督の挙動を読み取る力が手に入れれば、

 更には提督と一緒にいるときの自分の気持ちを提督に上書きできれば、

 きっと自分への好意を高めてくれると妄信してしまったのです。


 彼女は摘出したナノマシン入りのお茶を提督へ飲ませてしまいます。


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