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朝6時。いつもより大分早い時間に起きたが、何時もよりだいぶ目覚めが良かった。
ふわふわのベッドから降り、真っ白なカーテンを開けて、相変わらずどんよりとした曇り空だがそれすらも色の1つとする町並みを見下ろす。
知らぬ間に連れてこられて起きた時に「ヨーロッパの町だ」と言われても信じてしまうぐらいにヨーロッパ風の町並みを照らしていた街灯は消え、カーディガンを巻いたおばあさんがその下を歩いていた。
朝御飯は7時以降、と聞いていたので、外に出ることはなく、それぞれの客室に備え付けられているらしいテレビを就ける。
『ーーですが、猛烈な勢力で伊豆諸島の海上を北東に進んでいます。紀伊半島までの太平洋沿岸部は風速 メートル以上の暴風圏の中に入っており、奄美諸島から陸奥北部までの広い範囲が強風圏の中に入っています。気象庁は不要な外出を控えるようーー』
やはり、上陸の可能性は無くなったが、これほどのモノが来るのは久しぶりらしい台風のニュースばかりだった。
神戸の天気予報を確認してからテレビを切り、昨日読んでいた本の次の巻を読み進める。そして7時になったので、昨日の記憶を頼りに食堂へ向かう。
「おはようございます、二ツ目さま」
「おはようございます、藤谷さん」
1人住まいの多福家の家事を取り仕切る使用人の片方である藤谷さんからお茶碗を受け取り、もう片方の藤田さんが私の前におかずを並べていく。
この家での作法は聞いていたので先に食べ始め、4分の1の所で多福さんが、
「では、玄関で」
「はい」
準備を済ませ、玄関で昨日と同じような出で立ちの澁谷さんと合流して、北御影駅から各停に乗る。
岡本、芦屋川、夙川、西宮北口で乗り換えて門戸厄神、甲東園と進み、西側が日本人の高級住宅街である仁川駅で降りる。駅名の由来になった仁川沿いに下り、武庫川が見える所で左に曲がって堤防を歩き、階段で下に降りる。
そこには、石碑がたてられていた。
『悪竜、ここに堕ちる』
そう彫られた石碑は、あの事件の巻き添えを食らって亡くなった人々を悼む物であり、今も花や供え物が沢山あり、そして落書きされた時には時代を彩った古老の名優の死よりも多きな扱いになっていたものだ。
その石碑に、それには名前が刻まれていない兄に手を合わせてから、私達は辺りを見回す。穏やかに川が流れ、野球少年の声や犬の鳴き声が響く普通の日常の光景がそこに広がっていた。
「結局、ドラゴンはこの上空でとどまり、その後から苛烈な攻撃にあったのですよね?」
「ええ。そして、人間で言う喉仏に当たったミサイルが致命傷になって目の前に堕ちたわ」
「そして……武庫川より東に行こうとしなかったかというのは未だに謎になっている」
「武庫川の上でとどまったから向こう岸に被害なく、更に防衛態勢を整える事が出来た」
その原因は、
だが、警察もその他も調べ尽くしたであろうこの場所を探ろうとも思わず、私達はこのじめっとした所から歩みを早めて去る。
仁川の駅に戻り、多福さんの家ではなく、その先の三宮より更に先の方へ向かう。
「ここには、この地元の新聞が発行した新聞全てがおさめられていて、神戸市外の人でも自由に閲覧できるわ」
「身分の確認も無いしやりやすいですね」
「ええ」
いざ出陣……と言いたい所だが、長期戦となるのは間違いないので、その前に近くの洋食屋で早めの昼御飯を食べる。
頼んだメニューは兄とは似てなかったらしいそれを済ませ、今度こそ出陣である。
「私は前半3ヶ月分を、 さんは後半3ヶ月分をお願いします」
「わかったわ」
恐らく周りの人からは、大事件や謎めいた事件の時に時々いる人に見え……ていたら良いな。
とにかく、時折休憩はしつつ、あの事件の記事を探し、全国紙より当然地元に密着している新聞の証言などを書き込んでいく。
「どうでしたか?」
「巷で言われているのとあまり変わらないわ」
「こっちもです。1つを除いて、ですが」
「どれ?」
それが乗っていたのは事件翌日の朝刊で、日本どころか世界的にも珍しい事件なので、地元紙は全面事件の事を書いている。その中で、ある面は目撃者の証言がずらーと載っていた。
その1つが、仁川と豊辺空港跡を結ぶ
「ドラゴンの頭の方に火花が見えた……か」
「はい。そして、この人の名前を検索してみたのですが、こんな記事が出ました」
「霞ヶ浦で夜釣り中に転落して溺死、か」
「はい。ただし携帯が無くなった上で、ですが」
「……記者の方は?」
「ここに一覧が書いているのですが、見事に一致してしまうんですよ」
「……六甲山地の山小屋で火事。寝ていた全員が煙に巻かれて亡くなる、か」
偶然、ではないだろう。
「調べて貰うわ」
「お願いします」
いよいよ黒めいて来たな。
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