第14話 彼女が無限来夢に行く前の虚無での思い出

 僕が十九歳のクリスマスに、かおるが僕にくれたのは、手編みの青色に白文字の二人用マフラーだった。三カ月も編むのに費やし、結構大変だったみたいだ、だがその間、以前夜のバイトでプレゼントをしようとしたときのように、お互いの合う回数が減ることはなかった。二人用マフラーの両端の裏表には、僕とかおるそれぞれの名前が編みこんであり、手が込んでいた。そういえば、僕は何を送ったかなー?、、、確かバラにカスミソウの花束と、オルゴール。とにもかくにも、素晴らしくうれしい夜だった!!!

 年を越して大学一年の二月後半、東京の証券会社の内定を受け、福岡で研修を受けていたが、その後、二年の時、僕は大手電機メーカーに就職をして、九州を離れ、大阪へ赴任することになった。

 遠距離恋愛が始まった、高校を卒業した彼女は、父親が高校一年生の時に亡くなっていたので、母親の実家のある東海地方へと勉強するために九州を離れた。毎日欠かさない三十秒の電話でのやり取りや、手紙のやり取りで我慢していた遠距離恋愛が実を結び、そして七月、僕は二十歳の誕生日を迎えた。かおるは、付き合いだして二度目の誕生日にして、珍しく僕にプレゼントに何がほしいのか聞くのだった。夕食を済ませたファミリーレストランで、僕たちはまたそれぞれのきんきょうなどをはなしあっていた。

 かおるの学生生活のことや、僕の新人研修や人間関係など、さまざまな話で、その日の僕は、ずいぶんとおしゃべりだった。話が一段落をするのを待っていたかのように、かおるが僕に聞くのだった。

 ねえ、かずくん、プレゼント何がほしい?

 え?プレゼント、そうだねー、、、、、

 僕はいろいろなことを考えてみた、そしてふと思いついた答えを、口にしようとした。

 いや、ふと、ではなかったか? それは、ずいぶん前から。でもなぜか、なかなか口に出す機会を見つけられなかった、、、、、

 かおるの問いに答えるとき、僕の周りの音は潮が引くように遠のいていた。かおるをだきたい、、、、、!

 かおるが不思議そうな顔で、僕を見つめている、、、、、

 目を合わせられない、、、、、

 音がさらに遠くへ消えていく。僕たちのテーブルの周りだけに静寂が満ち溢れていた、、、、、

 かおるが僕の目を見つめながら、少し照れくさそうに言った。

 かずくんは、今まで出会ってから二年間、私の心を力いっぱい抱いてくれたから、いいよ、、、、、

 僕は自分自身に問いかけ、心の中で、ガッツポーズ、をした後、 一変して音が、このテーブルに戻ってきたような感じがした。

 その夜僕たちは初めて結ばれて、今までにない二人だけの特別な時間を過ごした。

 そして、僕たちは今までとは違い、未来へ向かうためのはなしをたくさんし、幸福な時間を過ごした、、、、、

 遠く離れていても、こころはつながっているよね、、、、、

 僕のうでのなかで、かおるがつぶやく。

 うなずくと、かおるが起き上がって、いつものように、自然に、ひざまくらをしてくれて、九州の海みたいな気分がしていた、そして耳元で、力いっぱい幸せな結婚生活をしようね、いつか、絶対だよ、の言葉を言ってくれた、、、、、

 その夜から、僕たちは結婚についていろいろなことを話すようになっていた。

 仕事とかおる、半年に一回の僕の転勤について、そうしながら一人暮らしには、もうとうの昔に慣れている。僕は今までにない充実感を覚えながら、福岡で、一人暮らしを送っていた、、、、、!

 かおると心はつながっている、確かにそう思えた一年間。まとまって休みが取れると、旅行やドライブをしたりしていた、、、、、!

 かおると時間を共にした一年が過ぎた。佐賀に転勤になり、僕たちは結婚の約束をしかおるのお母さんとも仲良くなり、結婚の承諾を得るための挨拶もした、、、、、

 その年の桜の季節、僕たちは二人で、ちょっと長めの旅行、一週間の日本一周旅行に出た。思い出に残る幸せな旅行、、、、、!

 その約二か月後のある日、佐賀の一人住まいの僕のアパートの電話がいつものように鳴った。

 かおるの、か細い声が、聞こえてきた、、、、、

 え、ごめん。もう一度行って。

 電話の向こうで、かおるが、もう、と軽く文句を言うのがわかる。

 、、、、、赤ちゃんができたのよ、かずくん

 赤ちゃん、ほんとうに!!

 うん、夢がかなったね!

 ほんとうだね! 結婚しよう、、、、、

 冷静に言ったつもりだが、鼻の奥がツンとした!!

 僕は何とも言えない気分にみまわられて、言葉を失っていた。いや、それは僕がそう思っただけで、実際には矢継ぎ早にいろいろなことを質問をしていたらしい。男か女か、生まれてくるのはいつか。体は大丈夫なのかなどなど、、、、、!

 後でかおるが、最初は冷静だったけど、あまりにも定番すぎる質問ばかりだったので、笑い出しそうになった、と教えてくれた。

 構うものか、定番、上等! 世のなかの男親の心配することなんか決まっている。

 むしろ、僕自身も、普通の男だったことが証明されて、うれしさのあまり喜んだ、、、、、!

 アパートで一人の夕食時、僕は缶ビールを、高々と掲げてうれしいしらせにかんぱいした、、、、、!

 新しい命は、僕らに希望を与え将来の人生設計を立てるように促した。それと同時に新しい命は、僕にやる気や生活の張りをもたらし、しごとにも熱が入るようになる。かおるとその子の二人を守り、支えるための計画が僕の中で着々と進んでいった。やがて、具体的な式や段取りを、かおると話し合い、僕の実家に、かおるを連れてくる日が近くなってきていた、、、、、!

 そんなある日、いつものように八時ころ、アパートに帰った僕は、真っ先にネクタイを外した。そして冷蔵庫の中から麦茶のビンを引っ張り出し、流しにつけてあるコップをすすいで、ついだ麦茶を一気に飲み干した後、いつものようにかおると電話で話をした後、眠りについた。

 その日の深夜、僕のアパートの固定電話が鳴った。


 かおるが交通事故で死亡したと伝える電話が、その日になった、、、、、


 彼女と、お腹の赤ちゃんが無限来夢に旅立ち、僕には「響」こえが聞こえるようになった。

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