第13話 無限地獄へと行こうとした僕

 何をしているのだ!!!!!

 背後で怒鳴り声がして、僕はぎょっとして振り向いた。知らない五、六十代の男性が、僕のほうへと近寄りながら何やら怒っている、何を怒鳴っているのだろう???

 そして自分でも意外なことに、僕はその時そのおじさんにはっきりこう言ったのだ。

 かおるとお腹の赤ちゃんが、交通事故で死んだので、もう少し先に行けば会えるのです、、、、、!

 僕は、海の中に立っていた。浜辺はすっかり暗くなっていて、もう胸より上を小さな波がゆっくりと体をゆすっていた。どうやらゆっくりと砂浜から、沖のほうまで歩いてきていたみたいだ、、、、、!

 そのおじさんが、さっきより近くに来てまた何か怒鳴りだした。でも、何を言っているのか意味が分からなかった。だが、何のためにここに来たのか分かった。僕は死ぬつもりだったのだ、、、、、!

 なあんだ、そうか。それなら何もぐずぐずすることはなかったのに、かおるが絶対に右にはいかないといった、絶壁から飛び降りていたらもっと早く死ねたのに、と考えながら。僕はなぜかホッとして再び沖へ向かおうとした、、、、、!

 砂浜から二十メートルくらい離れたところで、しばらくするとおじさんの手が僕を背後から激しく揺さぶった。彼は海に入り込んで僕のそばまで寄ってきていた。揺さぶりながらまだ何かを口にしている、、、、、?

 僕はその男性を改めてみた。やっぱり知らない人だたまたま通りかかった人に違いない、、、、、!

 そのわずかな瞬間、彼はタクシーに、喪服に黒ネクタイで乗ってきてこんなところで、お金はバッグの中に全額っておかしいだろう、、、、、!

 しばらくしてからだった、僕のしびれた頭に彼の言葉が飛び込んできたのは、、、、、!

 お前男だろうが!!!

 おとこ?僕はつぶやいた、、、、、?

 そうだ、ちゃんと二人を弔ってやるのが男ってもんだ!!!

 僕の体の中で何かが、カチリ、と音を立てた。そうだ、僕はおとこだ。平和な光を、放ちながら平和のために働く男になるはずだったのだ、、、、、!

 そう思ったとたん、涙が堰を切ったようにあふれた。声は出さず、ただ涙だけ流しながら僕は泣いた、、、、、!

 そうだ、僕にはやるべきことがあったのだ。ね、かおる、、、、、!

 そう感じながら二十数年前の、僕は海の中にへたり込んだのだった。精神的、身体的な疲れが一気に吹き出したからだ。僕は彼の助けで暗闇の海から這い上がり、タクシーに乗って電話のある場所まで行き、かおるのお母さんと、仲のいい、かおるのことを知っていた女友達二人に、無事を連絡して、佐賀の会社と僕の実家の、中間地点にある福岡の、中九州支店の近くにある、一度胃潰瘍で入院したことのあるかかりつけの病院まで、タクシーで連れて行ってもらうようになり、そのまま眠った。時計は午前三時を回っていたのは記憶に残っている。気がつくと病院の先生から、緊急入院ではないが、胃潰瘍と精神的なもので、一か月間の入院と安静が必要と診断されたが、会社のこともあり、そのまま入院というわけではなく

 薬を飲みながら、半年後に、入院となった。その後、かおるの死と、事故の被害者として、いろいろなことがあり、佐賀のアパートも引き払って、佐賀の健康センターからの会社通いとなった、、、、、!

 そのころあいつらは大変な思いをして、捜してくれたのだ、、、、、!

 歩道橋の上の僕は、ポツリとつぶやいてみた。あのころから僕の頭の中で雑音が聞こえるようになり始めた、吸うのを忘れていたタバコの灰が、いまにも落ちるぞと言わんばかりに反っている。僕はそっとその灰を、携帯灰皿に落とし込んで、雑音が聞こえる青い空を見上げた、、、、、


無限来夢かー?

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