世界史分野

大航海時代①~香辛料迷信と東方幻想~(世界史・15~16世紀)

 さて、大航海時代と言えばコロンブス、ヴァスコ・ダ・ガマ、マゼラン辺りは学校で習う人物でしょうか。


「何か突然胡椒求めて、船使ってあっちこっち行くようになった」


 そんな感じがするかもしれません。

 しかし、そのままの知識では勿体ない。

 大航海時代の始まりの背景について、ちょっと深く見てみましょう。




 大航海時代に突入した理由は大きく分けて5つほどあります。


①香辛料の需要の増大

 西洋では肉料理を食べます。

 そのため、肉の調味料や防腐剤の役割を果たす香辛料は非常に貴重なものとなっていました。

 この辺りは学校でも習う所ですね。


 もうちょっと詳しく言うならば、当時は冷蔵庫などありませんので、肉を食べる度に家畜を屠殺する必要がありました。

 また、冬になれば飼料が少なくなりますので多くの家畜を殺し、塩漬けして保存していました。

 この臭い消しに香辛料が使われたのです。


 他にも、当時は病気が悪い空気(瘴気)によって引き起こされると考えており、良い空気を吸う事でそれらから逃れられると考えられていました。

 そのため、当時のペスト医師などは鼻にくちばし状のマスクをつけ、その中に香辛料を詰めていたそうです。

 治療でも香辛料は採用されており、匂いを嗅ぐことが治療だったようです。

 この辺りはボッカチオの『デカメロン』でも描かれています。


 需要が高い上、香辛料を得られるのはアジア貿易のみ。

 そのため、アジア→アラブ→ヴェネツィア→欧州全土と商人の手を経由していくため、値段が非常に高くなっていました。


 あまりに高価なため、当時の方々は親指と小指でつまんで香辛料を使っていたそうです。

 その際、指が濡れていては多量の香辛料が指につくため、普段コップを持つ際に水滴が付かないよう小指を立てていたと言う話です。




②マルコ・ポーロ(1254 ~ 1324)

 ヴェネツィア共和国出身の人物。この方は外せませんね。

 アジアを旅し、フビライ=ハンにも謁見しています。

 帰国後にジェノヴァとの戦争で捕虜になり、囚人仲間に当時の事を話したことがきっかけで『世界の記述(東方見聞録)』が作成されます。

 日本も「黄金の国ジパング」と紹介され、欧州の方々はまだ見ぬ世界へ想いを募らせたのです。


 とはいえ、実在や、元への到達が疑問視されている学説もあり、何とも言えない所はありますが、東方見聞録という書物が遺されたことで多くの人々に影響を与えたのは確かです。


 特にクリストファー=コロンブスへの影響は大きく、航海への動機にも繋がっています。彼は個人で東方見聞録を所有して注釈までつけていたそうです。




③科学発展

 マルコポーロなどのヨーロッパ人は中国より方位磁針を持ち帰ります。

 その後、羅針盤が実用化されます。

 このため方位を計測しての、大規模航海も可能となりました。


 また、1474年にトスカネリ(1397 ~ 1482)が「地球球体説」を提唱します。

 これまで、世界の果ては断崖絶壁になっていると考えられていたため、インドへは東回り航路一択だと考えられていました。

 しかし、トスカネリは地球が球体であること。西回り航路でアジアや香料諸島へ到達できると主張しました。

 コロンブスはこの話を元に、西回りでのインド到達を目指したのです。



④ビザンツ帝国(東ローマ帝国)の滅亡

 大航海時代から少し前、1453年にビザンツ帝国(東ローマ帝国)が滅亡します。

 それにより、この地域(トルコ)をオスマン帝国が支配することになります。


 オスマン帝国はアジアへの通称ルートを占領し、これまで用いられていたシルクロードによる交易が使えなくなってしまったのです。


 これに困ったのがイタリア商人。

 これまでアジアルートから地中海、イタリアへの交易ルートがあったために発展していたのに、そのアジアーイタリア間の陸路が使用不可能になってしまいました。


 ならば新しいルートを開拓するしかない。

 陸路がだめなら海路でアジアへ向かうことになります。

 これが大航海時代への幕開けになるのです。




⑤スペイン・ポルトガルの参戦

 これまで、イタリアの諸都市が東方貿易を独占していました。

 しかし、陸路の廃止により、アジア交易ルートは再開拓がはじまります。

 一番最初に航路を開拓した国が交易ルートを独占できるのです。


 そこに参戦したのがスペイン・ポルトガル。

 この国は世界史でもここまであまり欧州の歴史に関わってくることが少なかったのですが、ここで表舞台に登場します。


 実はこの二国。

 イベリア半島を巡って、昔からイスラム勢力と争い続けていました。

 718年、キリスト教の西ゴート王国がイスラム教のウマイヤ朝に滅ぼされて以降、イベリア半島を取り戻すための戦い。通称「レコンキスタ(再征服・国土回復運動)」が行われ、1492年のナスル朝滅亡まで続きます。


 ようやくレコンキスタが完了し、遂にヨーロッパの利権争いに乗り出します。

 出遅れていたスペイン・ポルトガルですが、ちょうど大航海時代と言う事もあり、タイミングが良かったとも言えます。


 そして、そのタイミングでスペイン女王イサベルに西回りインド航路の話を持ち掛けた人物こそ、コロンブスだったのです。




・終わりに

 大航海時代は非常に大きな転換期と言えますが、様々な要素が絡んで始まり、そしてその後のスペインの隆盛へと繋がっていきます。

 コロンブスらの話もしたいところですが、この時はスペイン・ポルトガルともに違う動きをしているため、その辺りは別の機会にします。


 それでは、この辺で。


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