某中華レストラン メニュー全制覇の思い出~息もできない~

 学生時代から続けているイベントとして「チェーン店のメニューを制覇する」というものがある。というか、別に趣味でも何でもないんだけど、大学の後輩から「のえるさんは制覇イベントやってるらしい」という噂が一人歩きし、いつの間にか年次イベントと化した。


 学食から始まり、過去に何回も行っているが、ここでその楽しさのカケラもないイベントを振り返り、同じことをするような方々が現れないようにすることこそ、私に課せられた役目なのだ。そうに決まっている。そうじゃなかったらあの時間とお金とカロリーは何になると言うのだ!


 それではまずは、桃のマークのあのお店から。



 ******



「終わらぬ夢がお前達の導き手ならば、超えてゆけ、己が信念の旗のもとに!」


 と、某海賊ばりのテンションを無理やり作り、「ウキウキ感」と名付けた空元気を胸に秘めて、桃印の旗を掲げた海賊団は日曜日に品川店に向かった。


 席に着いて、テンションのナミも収まり、ゾロゾロと運ばれる料理に、大サンジの予感しかしない。いつまで海賊ネタ続けるんだお前は。



【Act.1 前菜】

 フライドポテト、ザーサイなど、スナック感覚で食べられるものから物語は始まった。ピータンとか久しぶりに食べたぞ。

 ところでさ、「ピーたん」っていう名前だったらかわいくない?

「もうっ! アンタはすぐアタシの見た目がちょっと変だからってそうやって遠慮してっ!」ってポカポカ胸を叩いてくるピーたん。少なくともこのとき、このくらいの妄想はできた。



【Act.2 主菜(野菜・海鮮)】

 とりあえずアレコレ油っこい。あと、何でも黒酢をかけておけばいいという直球思考はやめて頂きたい。

 言わせてもらいますけど、メニュー考案者は全制覇する人のことを全然考えてないんですよ! いや、考えないだろそりゃ。

 海鮮食べ始めたあたりから頭に鈍痛が走り出した。血糖値怖い。



【Act.3 主菜(鶏・豚・牛)】

「ふぅ、香港風酢豚……食べ終わった……」

「お待たせしました、黒酢の酢豚になります」

 何なのその天丼ネタ。全然面白くないんですけど。酢豚なのに天丼て。

 ここで黒酢に続く「飽きる味付けシリーズ第2弾」オイスターソースも登場し、いつものことではあるが、「なんでこんなことをしてるんだろう」という疑問が頭をよぎる。ロゴの桃を食べてすっきりしたいと何度思ったか。



【Act.4 主食】

 もう麺も米も何でも来い。バイキングくらいの勢いで食ってやるよ。おお、海賊ネタ復活。

 あんかけチャーハンの味が濃すぎて倒れるかと思った。「ガツンとおいしい!」みたいなキャッチコピーよく見るけど、ガツンと頭を殴られるような味の濃さ。

 これ、おっちょこちょいの店員が味付け間違えたろ。早く謝りに来てよ。「何よっ! どうせアタシが悪かったわよ! ふんだっ!」ってポカポカ胸を叩きに来てよ。おっ、ピーたんも再登場だ。



【Act.5 甘味】

 オーギョーチ超おいしい! すっきり爽やか!

 一方のはちみつ揚げパンとか何なの。油もう要らないって言ったでしょ。バニラアイス有りver.と無しver.で別商品とか、全然嬉しくないんだけど。




 こうして7時間にも終わる戦いは幕を閉じた。

 7人で計40,000円弱。でもすぐに退店できない。そんな余裕はない。こんだけ売上に貢献したんだから、もう少しゆっくりさせてくれ。



 ******



 サブタイトル「息もできない」は「中華一番」のOPでお馴染みのナンバー。なるほど、確かに中華ばっかりだと息苦しくなったわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る