ヤンデレの社会学

 書くことが特にない。

 じゃあ書かなきゃいいじゃねぇかと思うかもしれないが、更新はしたい気分なのである。

 食べたいものないけど食事はしたいんだよね、みたいな。何そのワガママ。


 ワガママと言えば、高校時代くらいに必ず一度は「一人は好きだけど、独りは嫌い」みたいなポエム成分100%の思考に至ると思うんだけど、あれは何という病気なんだろうか。


 大体、書きたいトピックがあるから書くならともかく、そうでもないのに書きたいというのはもはや日記の世界なので、そんなの10年前のmixiでやれ、とドヤされるに違いない。いや、今のmixiでやっても誰も読まないだろうよ。



 あ、でも書き殴ってたら、書きたいことが見つかりました。安堵のあまり口調も変わりました。

 唐突ですが、愛するヤンデレについて書いてみようと思います。



 まあね、大好きなんですよ、ヤンデレ。昔、会社であまりにも眠いときに、洗面所に水溜めて、ヤンデレに顔押し付けられる体で顔突っ込んでバシャバシャやってましたもん。何なんだよその特殊な目覚まし。


 でですね、ヤンデレに惹かれるファクターって何だろうって考えたんですけど、おそらく、アニメ等で強調されがちな、「あの女、○○君に近づきやがって、殺してやる」「私がみんな倒して、○○君のこと守ってあげるから」みたいな、あのイノセントな破壊衝動んだと思うんですよね。


 それってヤンデレになった結果論の話であって、その衝動とか破壊そのものには大したカタルシスは存在しないと考えてます。


 じゃあ何なのか。自分はヤンデレの何に惹かれているのか。


 多分、もっともっと単純に、「ワタシと君の世界」で完結する、あの思考が良いんですよね。

「あ、この世界にはワタシと○○君だけ存在してればいいんだ」って気付いて、行動基準と倫理観がどうしようもないほど誤った回答を以って固まった、そのタイミングの彼女が最高に魅力的です。

 彼女の中で、世界を閉じた瞬間であり、彼を綴じた瞬間であり。



 でね、それって羨望だと思うんです。自分は彼女より少しだけ「まとも」に生まれてきてしまったから、そんな風な一途の極みにはなれない。

 まるで乳幼児みたいに、ただただ想いのままに想える。占めたいだけ占められる。

 そこに対する嫉妬が、結果的に彼女の魅力を強からしめてる。


 そしてもちろん、その思考と嗜好は、「社会」全体としては狂気であって暴威であって。

 例えば、彼の中では継続しているコミュニティーが彼女にとっては不要になるが故に破壊衝動が起こるわけです。


 加えて、彼女の中で「彼の存在」が有機無機を問わないとすれば、彼自身を亡き者にしたところでさして問題はない。



 つまり、社会全体で見たとき、彼女の存在は完全に「失敗」なわけです。

 社会の枠外に孤立してるわけです。



 そんなわけで、デウス・エクス・マキナでも起こらない限り、ヤンデレの登場する作品はハッピーでは終わり得ません。


 でもそれが逆に良いのかな、と。


 純粋に、情動を「好きだ」という想いのみに特化させて、社会的・精神的拘束の手枷を外した人間はこのようになる、という想像のキャラクターは、見ていて怖くもあり、興味深くもあり、そこが堪らなく愛しいんですよね。



 かくして、「一見、社会からように思えるヤンデレは、実際のところ最も社会から、ただの愛情の権化なのだ」という仮説が成り立つわけです。


 そして、こういうことを書きながら、「大学で学んだ社会学が2%くらい活かされているかな」としみじみ思うわけです。

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