プロムの後に ⑤
「私は、無茶なんてしないわ!」
ケルシーは怒ったように叫んだ。
「…君が、それに気づいてないだけだよ」
ジェイソンはどこか寂しそうな表情で呟いた。
「…僕は何度も見た」
「君が、ピアノで顔色が青白くなってフラフラするまで無茶してたのを」
ジェイソンは寂しそうな表情から、打って変わるように悲しげな表情になった。
ケルシーはジェイソンの表情を見て、口を噤んでしまった。
「…僕は、とても心配したよ」
「君が…いつか倒れるんじゃないか、って」
不意に、ジェイソンはケルシーの手を引いて自分の方に引き寄せ、優しく抱き締めた。
ケルシーは驚いて目を見開きつつ、ジェイソンの温もりに目を細めた。
「…もう、君には無茶はしないで欲しいな」
ジェイソンは優しい声で呟き、ケルシーの頭を優しく撫でた。
ケルシーはジェイソンの服を握り締め、大粒の涙を零して身体を震わせた。
「っ、ごめ、なさ、じぇいそ、ごめ、なさ、っい、っひ、っく」
ケルシーはわんわんと泣きじゃくりながら、何度も何度も謝罪の言葉を口にした。
「…ケルシー、謝らないで良いよ」
ジェイソンはケルシーを少し引き離すと、笑顔でしっかりと目を見つめた。
そして、指で優しくケルシーの涙を拭った。
「それと…ケルシーは泣いてる顔よりも、笑った顔の方が魅力的で素敵だよ」
ジェイソンは笑ってケルシーの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「…ありがと、ジェイソン」
「私の事、凄く心配してくれて」
ケルシーはふわりと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます