第7話「地球到着まで115日」
「定時連絡。カリロエⅥ、全て問題なし。地球到着まで115日。命とはなんて素晴らしいんだ! 人間とはなんて素晴らしいんだ! 俺は今日この日を絶対に忘れないだろう! 宇宙の全ての生命に、愛を! 以上、通信を終わる」
計器の電源を落とし、俺は少女に……その腕の中ですやすやと眠る小さな命に駆け寄る。
しわくちゃの顔、細い手足。
それは俺の思う『可愛さ』の基準からは全くかけ離れた生物だったのだが、しかし、それでも宇宙で最も可愛い生き物であると、俺は確信できた。
細い手を指先でつつくと、その楓の葉のような手のひらはしっかりと俺の指を握る。
その力強さに、俺は涙があふれるのを止められなかった。
「……ごめんなさい」
「何を謝る必要がある。……ありがとう」
本来宇宙船では使用に制限のある『お湯』と、ほとんど全てのTシャツを使い、メディカルセットのハサミや医療用ホチキスを使って何とか生まれたこの命は、俺に生命と母性の偉大さを教え、かけがえのない大切なことを気づかせてくれた。
俺は心の底から少女にお礼を言い、少女と赤ん坊を抱きしめる。
大きな声で泣き始めた赤ん坊を抱き上げ、俺はなれないながらも一生懸命に、子供をあやし続けたのだった。
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