第6話 セレスの思惑

セレスは考えていた。どうすれば、自分の祈願を成就出来るか。ここ帝国士官学校に入学してから彼は講義や演習そっちのけで、日々学校入り口近くの木の上から生徒達を眺めていた。生徒達といっても全員ではない。女性、しかも取り分け自分の興味をそそる綺麗な女性だ。それが彼の日課になっていた。


そして、ようやく見つける。四人の美女達を・・・。


「み〜つけた!」


その笑顔はまるで子供のよう。幼い子供が遠くから母親を見つけ出した時の笑顔のようであった。


セレスは動き始める。それまで停滞していたことが嘘の様なその能動的行動。まずは彼女達の身辺調査である。


「気になる女性を見つけたらまずは情報収集が基本だよね!」


セレスはそんなことを呟きながら彼女達をそれぞれ一ヶ月づつかけて入念に調べ上げた。もちろん、すんなりとは行かない。四人の中でも特に苦労したのはれレイラと呼ばれる女性だ。調べが進むにつれ、なぜ苦労するのかも見えてきた。どうやら彼女は視線に敏感らしい・・・。あとの三人はそれ程苦労しなかった。しかし、女性に対しては平等がポリシーである。他の三人に対しての調査も怠ることは無かった。セレスも後で知ったことだが、彼女達四人の小隊はこの学校で知らない者がいない程有名らしい。確かに、他の学生と比べセレス基準においては一段、否、三段は上である。それ程の美貌や雰囲気を持っている。


セーラ小隊メモ(セレスの頭の中のメモである。)


セーラ・アヴァロン中尉

ブロンドのロングヘアー。気品に満ちあふれており、小隊メンバーからの信頼も厚い。ただ、全ての行動が予測出来る範囲で、文字通り教科書通りのお嬢様だ。特質すべきは彼女の家柄。武のアヴァロン家と言えばこのイストリア帝国内外でも有名。現在彼女の父ウォルフ・アヴァロンはイストリア帝国将軍の地位についている。武器は主に長剣を好むが、他の武器にも精通している。それは彼女の演習を見ていても明らかだ。総括としては、彼女の本当の姿を見てみたい。スタイル抜群で、きっと今よりももっと美しくなるだろう・・・。ただ、父親のウォルフ将軍は強敵だな〜。


リーナ・キャロル少尉

栗色のツインテール。綺麗というよりは可愛いという言葉が良く似合う。彼女は家に帰るといつも何かに怯えている。調査の結果、帝国のお家騒動の際、宰相職についていた彼女の父が血筋を重んじ第一王子を押したことにより、失脚。謀反の対象として現女王派に処刑されている。家族に罪無しというおふれがあり、母、娘は女王派の現宰相レイモンド卿の保護を受け存命。その後レイモンド卿が父親代わりとして責を果たそうと何度もキャロル家を訪問しているのを目撃している。レイモンド氏も彼女がどうやって導いてやるべきか、ほとほと困っている様子である。どうせ、彼の著書を読んだことはあるが、どうやらその通りのしつけを施したのだろう。リーナは彼の陰に怯える日々を送っている。学校での明るさはセーラの庇護によるものだろう。必ず僕が彼女の笑顔を取り戻す・・・。ちなみに胸は四人の中では・・・。


追記、今日、偶然、たまたま、彼女の着替えを覗いたら、否見かけたら思わぬ隠れ巨乳ということが分かった。これにはテンションが上がった。


レイラ・オースティン中尉

彼女が一番苦労した。家の場所が判明したのは調査一週間後のことだ。レイラの家は帝国お抱えの由緒正しい狩人の家系。彼女の父も同様の職に就いている。と、ここまでが表の顔、裏の顔は・・・。まあその話しは別の機会に。とにかく四人の中では一番大人びており、小隊きっての巨乳である。この小隊は巨乳ばかりか・・・。髪はシルバーブロンドの巻き毛。言葉遣いや見た目はザ・貴族である。彼女に僕の魅力を伝えるには実力で納得させるしかないと思っている。という訳で、目標は高ければ高い程萌える、否燃える!


メル・ブラットレイ少尉

アヴァロン家と同様、ブラットレイ家も武家で有名。特に三代前の当主は北方戦役にて孤軍奮迅の活躍を見せ、率いていた軍をほぼ無傷で帰還させている。そのことで帝国名誉勲章を受けている。後世の書物でも戦術、戦略眼を持った人物と確認出来る。で、現在のメル嬢だが、なぜか第一人称をーぼくーというようになっている。ここからは推測になるが、彼女の父による教育の賜物だろう。どうやら息子がほしくて叶わなかったらしい。そのため、彼女の部屋に飾ってある家族の肖像画を目撃したが、小さい頃男の子のように育てられている。父親により偏った教育が施されたため、現在の彼女は女性としての魅力が半減。きっと彼女なら良い戦術家になれるかもしれない。また武器も大剣を好んで使っているが、これも間違い。もっと彼女に相応しい武器があるのに・・・。お近づきになった時はその美しい黒髪のサイドテールを解いてあげたい・・・。ちなみに彼女も胸が大きくてタイプである。


さて、情報もそれなりに集ったことだし、どのように攻めようか。まずは女王の訪問スケジュールを確保することが最初の任務である。その後は、そう先日見つけた花園に彼女達を誘い込み・・・。


セレスは考えを纏めると、寮のベッドで嬉しそうに眠りについた・・・。

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