第5話『椅子』

「なるほど、それは大変失礼致しました!これからもしばらくアスカの事をよろしくおねがいします!」

とアルテミスタ王はそう言って、僕はアルテミスタ王国第一王女『アスカ・ロイヤード・アルテミスタ』の護衛になることが決定した。


-


「わかりました。精一杯尽力をつくし姫をお守りします!」

と、できるだけ礼儀正しくお辞儀をして、僕たちはその場をさった。

うまく出来ただろうか?

そう思いながら、アスカの方を僕は見た。


「思ったよりうまく行ったわね!」

と、美少女アスカが悪魔の笑みを浮かべる。


明らかに父親の扱いに慣れている様子だった。

父親のいうこともある程度聞きつつ、自分の要望もとおしてきたのだろう。こんな美人の娘に何か言われたら、なんでも聞いてしまいたくなる、と確かに思うけど。


「姫様!心臓がドキドキしましたよ!」

と、ちいさな護衛のリリィが言った。


「わたしもドキドキしたわ!」

と、微笑んでくるりと回る姫、アスカ。


「さて、とりあえず部屋に案内しましょう!」

と、アスカが僕の腕を引っ張る。

そうして僕らは、その部屋まで歩いて行った。


「ここがあなたがこれから生活する場所よ!」

とアスカが言ってウインクした


「すごい、こんないい場所をもらっていいの?」

と僕が聞く。


そこそこ広い部屋だった。

宿なし一文無しになるところだったことを考えると、これはかなりラッキーな部類といえるだろう。


「どうぞ!これはあなたの実力の対価よ!」

と、アスカは微笑んだ。


「その実力で私を守ってね!」

と、にっこり微笑んだ。

その笑顔を見て、忠誠を誓わない男がいるのか?と疑問に思うくらいの眩しい笑顔だった。


「そう、この実力もいろいろ確認しないといけないんだよね」

と僕は呟いた。


「確認?」

とアスカが聞いた。


「そう、この能力も手に入れたばっかりなんだ・・・この能力をしっかり確認しないと、ほんとに『腕が立つ』とはいえない・・・」

と僕は言う。


さっきは『腕が立つ』と言ってしまったが、実際には、この能力の底を確認するまで、それが真実とは言えない。


「どうするの?」

とアスカが聞いた。


「この椅子って高価なもの?」

と、僕は僕がもらった部屋においてあった椅子を指差す。


さすがに城においてあるものだけあって、普通の椅子よりもしっかりしている。そう、これは岩よりも複雑なものだ。まず最初の実験は、そういう複雑なものもカード化できるのか、ということだった。


「そうね、普通ね。でもそれで何か実験したいんでしょう?やっていいわよ!」

とアスカがそういった。


僕がやりたいことをなんとなく察してくれたらしい。


「椅子?椅子を何するの?」

とリリィが僕に聞く。


「こうするんだ!」

と僕は、改めて、アスカ、リリィ、ユリカの前で、椅子に触って、スキル『カード化 - カードライズ』を発動させた。

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