第6話

目を覚ますとそこは───ってもうこのくだりはいいか。

目を開けるとそこはいかにも砂漠地帯の家って感じの土レンガ造りの家だった。

家具類は少なく、質素な感じだが不自由感が無い不思議な感覚を覚える家だ。


「あ、ダンナ。目を覚ましましたか!」


奥の部屋から音がすると思えば小太りの商人が駆け寄ってきた。


「すみません、ここはどこですか?」


そりゃあ、この商人の家だろうがお決まりながら聞いておく。


「私の家です。あなた様がお倒れになったので勝手ながらここまで送迎いたしました。この度は私たちの村の商人団をお守りいただきありがとうございました。私はこのアーケン村の村長兼、商人をやらしていただいているロベルトと申します。」


ロベルトを名乗る商人がペコリと頭を下げた。

礼儀作法は万国共通なのだろうか。


「こちらこそご丁寧にどうも。俺の名前は黒木すず…いや、スズカゼと言います。」


苗字を伏せたのはこちらの世界の苗字と名前の順番が分からなかったからだ。

単純に名前だけ言っておけば間違い無いだろう。

間違ってたら恥ずかしいし、しょうがないよねっ!


「スズカゼ…珍しい名前ですね、どこから来たのですか?」


商人改め村長が不思議そうに聞いてきた。

ここはお決まりに極東とでも言っておくか…?

いや、あえて濁しといたほうがミステリアスだしかっこいいよね


「うーん、あのですね…」


「お兄ちゃん!!!!」


俺のミステリアスな言動を遮るように村長が来た方向から声とドタバタという足音が聞こえた。

5秒ほどすると勢いよくと扉が開き、中からスキンヘッドにさらわれかけた赤髪の女の子が姿を現した。


「大丈夫!?怪我は無い?」


顔の前でそう言う。

俺はそっち側の人間じゃ無いがこんな事されると惚れそうになる。


「こらっ!アルマ、スズカゼさんは疲れてるんだぞ!」


村長が叱責を入れるとシュンとした顔になり、離れる。

聞き分けがいい子だ。


「こちら、私の娘のアルマです。助けていただいたことが嬉しかったようで…すみませんね」


「いえいえ!全然大丈夫ですよ。」


むしろもっとひっついて欲しいくらいだ。

もう一度言っておくが俺はロリコンでは無い。


「ねーねー、お兄ちゃん、お兄ちゃんって冒険家さんだよね??」


アルマが距離を詰めてそういった。


「その事は私も気になっておりました。格好を見れば冒険家のようですが…」


そう言われ、自分の格好を見ると、よくあるRPGの初期装備のような革の服を着ていた。

あまり違和感がなかったので今まで気づかなかった。


「あ、あぁ!そうだよ!俺は冒険家をやってるんだ」


正直、そこのところは考えてなかったので白々しくなってしまった。

あの時はテンパってテキトーに言ってしまったんだが…

流石に怪しまれたか…?


「やっぱり!戦ってたとき言ってたもんね!」


「やはりそうでしたか!しかもあの精霊術…相当の手練れですね?」


こいつらが従順で助かった!

しかしこのあとどうするかな…

泊まるあてもないし…


「どうです、いっときこの村に滞在になってはどうですか?こちらもお礼がしたいので!」


ほんとこの人たち思い通りの動きをしてくれるな!

騙してる感じでなんか悪い気するけど…

まぁ、ありがたく受け止めよう。


「ほ、ほんとですか!ありがとうございます!」


できるだけありがたそうにそう言う。

表情をコロコロ変えることができるのはあの会社で学んだこと。

顔色ばかりうかがった結果だ。

情けない自分に嫌気がさしてくる。


「?どうしたの?暗い顔して」


アルマが心配そうにそう言う。

顔は変えてないはずなんだけどな…

子供の純粋な目には分かるのか…。

なんかさらに情けないな。


「とりあえず、外に行ってみてはどうですか?私の自慢の村ですので」


「アルマも行くー!」


村長の方も気を使ってくれたようだ。

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ゼロ・リミット≠メモリーズ_社畜は今日も旅に出る。 松風 @matsuwind

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