第5話

「お、おい!野郎ども!お前らで精霊術使えるのは誰だ!」


すると荷物を詰めていた部下が3人ほど手を挙げた。


「お前ら!あいつに攻撃しろ!」


スキンヘッドは叫んだ。


精霊術とは先ほどの光の矢のような攻撃のことだろう。

一人でも必殺の攻撃だったのに三人もいたら確実に死ぬ。

じゃあどうすれば…?


そう考えているとモンステラの言葉を思い出す。


『心配はいらない。君には大きな力を与えた。』


恐らくあいつの言う大きな力とは精霊術とやらだろう。

もし自分がその力を使えるとしたら…それに期待するしか無い!

しかしどんな能力なんだ?

どうすれば発動するんだ?

分かるはずない。

ただ一つ、分かってることは『力を持っている』ということ


この状況で一番効果的な行動…それは『詭弁』だ!

(本当に意味あるのかは別としてだ)


「おい!お前ら俺にそんなことしていいのか?」


俺は出来るだけ余裕を持った顔でそういった。


「俺もお前たちと同じ精霊術を使えてな…お前らを一瞬で葬り去ることも可能だ」


俺の言葉にスキンヘッドが対抗して叫ぶ。

流石にやりすぎたか…?

びびって何も言えん用だなっ!


「信じられるわけ無いだろ!一体どんな能力なんだ!!」


俺はどきっとした。

わかるわけ無いだろ!!

とりあえず強そうな能力強そうな能力…


「あいつ、言葉に詰まってるぞ!今のこと全部嘘っぱちだ!攻撃開始しろ!」


スキンヘッドが余裕を取り戻しそう叫んだ。

その言葉と同時に部下たちが力を溜め出した。


やべぇ、やられるっ!

そう直感で察知した。

そしてついに口を開く…

頭が混乱し、全く意味のない詭弁のことだけを考える。


「俺の能力は──」


とっさに思いついた真っ赤な嘘。

中学生の時、全力でやり込んだパズルゲームの嫁キャラの必殺技。


「俺の能力、それは───隕石を降らせる能力だ。」


わけも分からずそう叫ぶ。


その意味不明な言葉に部下たちも顔を歪ませた。


するとその盗賊たちの横に刺すような轟音。

そして大きな衝撃が伝わり飛び上がった。

そして轟音の先には直径5mほどの隕石がクレーターを作っていた。


「なっ、なにィ!?」


スキンヘッドが間抜けズラでそういった。


ふぅ…

ほ、本当に出た!!!!

ってことは、俺の能力はウ○ッチちゃんと同じメテオ!?

ガチでチートやん、ありがとうモンステラ!


「み、みたか!お前らとはこなした残業の桁が違うんだよ!!」


思わず叫ぶ。

正直、クッソダサいな俺の決め台詞。

変えよ。


そんな事を考えていると唖然としていたスキンヘッドが口を開いた。


「き、今日のところは勘弁しといてやる!野郎共、逃げるぞ!」


そう言うとスキンヘッドは自分の馬車も置いて全力で砂漠の彼方に走り出した。

それに続くように部下たちも走り出した。


「終わっ…た。」


俺は仕事よりもはるかに大きな達成感を感じ、膝をついた。

すると馬車の中にいた商人の仲間や少女がこちらへ向かってきた。


「ありがとうございますっ!なんと感謝していいのやら…」


商人たちは満天の笑顔でそれぞれ感謝の言葉を述べていった。


何年ぶりだろう…人に心から感謝されるのは。

これまでずっと仕事のためだけに生きてきた。

誰にも感謝されず、それどころか嘲笑や皮肉を聞くほうが多いくらいだ。

そんな自分にこんなに大勢の人 (五人程度) が…


俺の頬には涙が伝っていた。

こんな事で泣くとは…俺は今まで相当クソみたいな環境で生きてきたんだな…。


感謝に応えようと腰をあげる、しかし重力に逆らえず地面にだらしなく寝転がる。

それと同時にとてつもなく大きな疲労感と眠気が襲ってきた。

俺は救世主に不似合いなだらしの無い姿で気を失った。

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