第4話

「さっさと、荷台にあるもの全部出せって言ってんだろうが!ああ!?」


「す、すみません…」


強面のスキンヘッドが剣を商人のようなおじさんに向けつつそう叫んだ。

あれから5分くらい経ったが未だに隠れている。

こんなガチムチのおっさんに勝てるはず無い。

やはり他人に殺されるのは怖いのだえっへん!

って冗談にもならないよな…


俯きつつそんな事を考えていると盗賊一同に動きがあった。


「ボス!馬車の中に女が!」


スキンヘッドの部下が満天の笑みで馬車から出てきた。

部下の手には物のように引きづられる8歳くらいの女の子がいた。

女の子は全てに絶望した虚ろな目をしている。

まるで自殺した時の俺のように。


「でかした!今晩はお楽しみだなァ!」


スキンヘッドが嬉しそうに叫ぶとそれにつられたように部下たち全員が同じように叫んだ。


ゆ、ゆるせん!

強面のくせに女の子を奪い、楽しむだと!?しかも相手はようじょ!?

クソロリコンどもが!


「そ、その子はやめてください!私が代わりになりますから!」


商人が慌てて叫んだ。


「お前と愉しむわけねぇだろ!!いちいちウルセェ野郎だ、ここで殺す。」


確かにもっともだが…

そう言うとスキンヘッドは商人の首筋に剣を打ち込もうとする──


もう我慢ならん!!


「ちょっと待て!」


俺は決死の思いで馬車の前に飛び出した。

やっちまったな…そんな念が浮かぶが今はそれどころでは無い。

しかしいまだに心臓がばくばくしている。


「なんだとコラァ!?つーかお前誰だよ!!」


スキンヘッドの大きな叫びに心臓の音を増大させながらも必死に叫び返す。


「俺はしがない冒険家だ!お前らの悪事、見過ごせん!!」


必死の形相で叫んだ俺にスキンヘッドは声高らかに笑い出した。


「お前が正義のヒーロー気取りか?ガリガリのくせによくいうぜ!おい、やっちまえ」


するとスキンヘッドは女の子を連れてきた部下に顎で命令した。

うなづいた部下はこちらへ手のひらを向ける。


何やってんだあいつ?

じゃんけんでもしてんのか?


そんな呑気な事を考えていると部下の手のひらに小さな光の点が浮かび上がった。

その点はどんどん大きく、そして鋭くなっていった。


「死ねぇ!!」


その声とともに光の点、いや光の槍がすごい速度で向かってきた。


──やばい、やられる!!!!

俺は死を感じ、必死に逃げる策を考える。

しかし考えてる時間もなく槍はこちらへ向かってくる。


死を覚悟し、目をつぶった。

すると体力の限界からか足から崩れ落ち、土下座のような体制になった


死ぬ姿まで無様かよ…。

さよなら異世界。

俺はどこに来ても『汚点』だ…。


しかし、そんな事を考えていたが全く当たった衝撃を感じない。

不信感を抱き、目を開く。

すると目の前には顔を真っ青にした部下とスキンヘッドが立っていた。

その体制のまま後ろを見る…すると大きなサボテンに深く突き刺さった光の槍があった。


「嘘…だろ!?俺の『矢』は光の速さで進んでいくんだ…それを避けただと!?」


部下がそう呟いた。

すまんな、完全にたまたまだ。

お前の攻撃は確かに強いが俺の悪運が勝ったようだ。

俺は情けない体制からパッと起き上がり、仁王立ちした。


「ふっ、ざっとこんなもんだ」


俺はキメ顔でそういった。

偶然でも誇っといたほうが威厳が保たれるというわけだ。

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