第3話
神のような男と接触して長い時間が経った気がする。
俺は広大な砂漠にいた。
あの神殿のような場所にいた時は何も感じなかったが今は体の節々が痛い。
これも転生の影響なのだろうか。
しかし…転生先が砂漠だとは…。
普通に考えると砂漠なんかは3か4番目くらいに訪れる基本序盤の鬼畜難易度のステージだろ!?
しかも初期装備が何も無しって事は水も手に入れないといけないし、食料もない。
さらには雨風しのぐ宿も見当たらない。(というかあったとしてもここの通貨を持ってない)
この状況でどうすればいいんだ…?
本当に俺はこのセカイで幸せになれるのか?
つうかそれ以前にこのまま死ぬんじゃ…?
とやかく考えてもどうしようもない。
歩かないと何も始まらないしな…。
俺は痛む四肢を抑えつつ、ゆっくりと歩みを始めた。
照りつける太陽に体力をじわじわと奪われながらふらふらと歩く。
あの某国民的兄弟の砂漠ステージのようにどこまでも追ってくる太陽が体当たりを仕掛けてくる事はないが、今まで死んだ目でデスクワークに勤しんでいた俺としては久々の陽の光でなおかつ、久々の運動。水も無いというオプション付きで常人よりも圧倒的に早く体力が蝕まれていく。今にも倒れそうだ。
そんなセカイに早くも絶望を抱きながらも前を見た。
すると途方も無い地平線の先に陽炎(かげろう)に揺れる大きな荷台がついた馬車が停まっている。
俺は目に映る馬車に一筋の大きな希望の光を感じた。
あの馬車にすがりつくしか無い!
異世界にまで来てとてつもなく情けない考えであるが、生死がかかっているのだからしょうがない。
もうあんな不甲斐ない死に方はしたく無い。
その一心で残りの力を絞って馬車へ向かう。
幸いなことに馬車は俺が追いつくまで停まっていた。
しかし安心したのは束の間、停まっていた理由が判明した。
ここに来る前は休みでも取っているのかと思っていたが、それはとんだ勘違いだった。
馬車の前には薄汚い布を羽織り、逞しく光る短剣を携えた強面の集団──いわゆる盗賊とやらに襲われていたのだ。
──とんでもなくついていないな。
そんな事を呑気に考え、逃げる事を考えると慌てて思考が正常に戻る。
ここ一時間程度歩いてきたが見つけたものはここにいる馬車と盗賊。
これから俺の体力が尽きるまで恐らく30分程度。
つまり、チャンスはこれだけ。
最悪のイベントだが突っ込んでいくしか無い。
最悪死ぬが自殺よりは名誉な死に方だろう。
──助けるしか無い!
そう考え俺は場所の前に走り出した。
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