chapter 2 学園とか説明とか青春とか
先生とか司書とかロリコンとか(1)
「ご苦労様です」
「…………さまでーす」
警備員的な人に頭を下げ、学園の門を潜る。警備員っぽいオッサンは、俺が肩車しているエーデルを一瞥し、何事もなかったかのように視線を正面に戻す。
今回俺たち2人が学園に赴いたのは、主に俺がエーデルとこの世界について勉強するからだ。一応の補足だが、『エーデルと一緒に勉強』ではなく、『エーデルやこの世界について勉強』、である。
「取り敢えず、図書館にでも行ってみるか」
取り敢えずも何も、行き先は図書館以外にない。そこら辺の先生を捕まえ……掴まえて、「赤龍レッドドラゴン拉致ったんですけど、生態とか詳しくご教授願えますか?」とは云えない。丁寧に聞けば、丁寧に返ってくるとは限らない。
そう、丁寧に対応しても刺される場合もある。主にセルフィーには。
セルフィーに刺された箇所は何の問題もない。魔法万々歳だ。しかし、痛いのは痛い。セルフィーのレベルは余裕で1000を超えているため、刺されれば当たり前のように刺さる。
俺は最強だと自負するが、それはあくまでも人間に限る。
話が逸れた。セルフィーの事は忘れよう。あれは事故だ。ドジっ娘属性がフルに発動したために起こってしまった事故だ。誰も悪くない。
「…………ん? キールか。珍しいな、お前が定刻通りに学園に来るなんて」
そんな若干のトラウマを忘れようと努力をしていると、フィールさんに話し掛けられた。
「あ、フィールさ――――痛ッ!」
「先生と呼べ、先生と」
フィールさんこと我が母君は、この学園の教師だったりする。俺がこの学園に通っているのも、フィールさんの半強制的な命令のためである。
「で、お母様は何故に――――痛ッ!」
「学園では先生と呼べ」
「はい! フィールお母様先生! ――――痛い!?」
蹴られた。全く理不尽な。俺が一体何をしたと云うのか。
「――――ん? それより、定刻通りってどう云う事っすか?」
「何を云っている、キール。休暇は終わりで、今日から学園だろう?」
………………わぉ。忘れてたよ。いや、実は最初から知らなかったけどね。
いやー、よくよく考えると、今の俺手ぶらだよ。学園どうするんだろうね、とそんな感じで1人唸っていると、フィールさんは忙しいらしく、チャイムが鳴るまでに教室に入りな、とだけ俺に告げ去って行った。
「イエス、マム!」
適当に敬礼をし、俺もその場から去る。目指すは図書館だぜ。
学園は堂々とサボると決めた。決めたからには俺の行動は早い。
教師に呼び止められようが、攻撃されようが俺は止まらない。勿論、何故か攻撃してきた教師はふるぼっこにする。止まる事は自分ルールに基づき出来ないため、ふるぼっこにした教師を引き摺りながら走る。途中、空き部屋に捨て置く。邪魔だしね。
そんなノリと勢いで数名の教師を屠った頃、俺は目的地たる図書館にやって来た。リアル館。図書館の分際で4階まである。
「――――この世の叡智が集いしうんたらかんたら」
これは若干中二病な、ここの司書の先生が云った言葉だ。詳しくは覚えてない。蛇足だが、その先生は自分の事を「叡智を守護せしどうたらかんたら」と云っていた。やはり詳しくは覚えてない。
その先生に俺が転生者である事を洩らしたら――――多分、同じ中二病な仲間と思われて終わりだな。不愉快極まりない。
「しっつれい、しまーす」
館の扉――――の隅にある、小さな出入口である扉を押し開け「ようこそ! 我が叡智の――――」黙って閉めた。
「エーデル、今日は閉館らしいから帰るか」
「…………お腹空いた」
踵を返し、教室ではなく学園の出口を目指して歩く。何故か勉強な気分になれなかった。
「ちょっと待ったぁ! そこのなんか親子らしいほのぼのとした空気を醸し出していると見せかけて実は全く会話の成立していない2人組!」
振り向くと、捲し立てるようにツッコミを入れたためか、息切れを起こしている中二病な司書の先生がいた。疲れるなら黙っていればいいのに。
「ふふっ、君の事は全てお見通しさ! 大方疲れるくらいなら黙っていればいいなんて思慮の浅い考えを抱いているのだろう。しかし残念な事にボクは君のような矮小な人間とは違い――――」
目の前のちっちゃな司書の先生は、無い胸を張り、無い髪を掻き上げる。別にハゲではない。水色の綺麗な髪をボブカットにしている。しかし掻き上げる程の長さはない。
この人は妖精種と人間のハーフで、取り敢えず小さい。俺の胸より下に頭がある。それでも不死と云われる妖精種とのハーフだけあって、どうやら俺より遥かに年上らしい。初対面で『合法ロリだな』と云ったら半殺しにされた。
半殺しにされたと云っても、この先生は俺に対して物理攻撃でダメージを与える事は不可能だ。しかし、この人の髪を見れば分かる通り、水属性の魔法に特化している。よって、俺は見事陸で溺れる事になった。顔を包むようにして生成された水球によって。
「君! 今小さいって思ったでしょ!? 胸が無いって思ったでしょ!? ボクはそうやって人の身体的特徴を笑う人が赦せないね! 大体ボクの胸は限りなく零に近いって云うだけで全然、全く、少しばかりも無いわけじゃないんだよ!」
そう云って胸を張る。先生自体は子供サイズだが、何故か先生の司書用ローブは大人サイズだ。つまり、全く分からない。だがしかし、それを指摘すると毎度の事ながらこの先生は涙を浮かべる。紳士たる俺は女性を泣かすわけにはいかないし、そもそも俺はロリコンだから問題ない。
「先生、落ち着いて下さい。女は胸だけじゃないですよ」
一応云っておくが、俺はロリータコンプレックスではない。ロリータコンディショナーだ。
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