お姉さんとかお犬様とか恐怖とか(1)
「あ、お兄さんやっほー」
今日も今日とてギルドに赴く。エーデルを肩車しているため、扉を普通に開けると、
「馬鹿…………な。普通に開けただと…………!?」
「そんな…………もう駄目だ。天変地異で俺たちは死ぬんだ…………」
とか云われた。失礼なやつらめ。俺は常に紳士であり、優雅な動作を心掛けていると云うのに。
そう云えば、道中に金髪と出くわした。
「やぁ、久し振りだね。どうだろうか…………今日も僕とパーティーを組んでくれないか? い、いや別に君とクエストを受けたいわけじゃないさ! ただなんと云うか――――」
何故か金髪がツンデレと化していた。不思議に思ったが、クネクネしながらこちらを誘う動きに殺意を抱いたため、放置して来た。エーデルも「…………あれ、キモイ」と云っていたので判断は間違えてないはずだ。
「やっほー、アリア。今日もゴブリンとかそこら辺受けに来た」
ゴブリンって大して強くない癖に異常な繁殖力があり、依頼報酬も割と良いので、お小遣い稼ぎとして俺は重宝している。特に、エーデルの生活費をどうにかしなければいけない現在、これ程容易で金になるクエストは少ないからほぼ毎日受注している。
「またゴブリンですか、お兄さん。たまには違うクエストも受けたらどうです? ヘルハウンドとかお勧めです」
「え、ヘルハウンドとか怖い」
だってあいつら、口から火を吐くんだぜ? 火系統の魔法が使えるとか何それ怖いって云いたい。第一、初見でお手! とか云ったら噛まれたし。ダメージなくても怖いものは怖いと云いたい。お犬様は怒らせると大変です。
そんな感じでアリアと依頼交渉をしていると、後ろから声を掛けられた。全く関係ないけど、エーデルは器用に俺の頭を枕にして寝ている。本当に関係ない話だが、現実から逃げたかったから仕方がない。って云うか、今からでも走って逃げて良いですか?
「よっす、キール。かなり久し振りだなっ」
「ひ、久し振り、です!」
振り返ると、一見美人なお姉さん2人組がいた。
片方は何時もおどおどとしている天然でドジッ娘なお姉さんだ。名前はセルフィー。一応、エルフだ。そして何よりも誰よりも巨乳だ。実際、ギルドの男共はその弾む乳に目を奪われている。セルフィーは男共の視線に怯えている様子。可哀相なので男共の視線との間に割り込んでおく。
そしてもう片方のお姉さんはカナリアと云う。セルフィーはエルフだがカナリアはダークエルフ。褐色の肌にスラリとした手足はセルフィーと違って正にお姉さん! って感じ。身長がかなり高く、180は超えてそうだ。俺はぎりぎり170だから泣きたくなって来る。まだまだ成長期だと切に訴えたい。
「…………2人共久し振りです。7年振りですかね?」
出来ればもう再会したくなかった。会わなければ、綺麗で美しいお姉さんとして俺の思い出の1ページを彩っていただろう。
はっきり云ってこのお姉さん2人は、女性に優しく在るべきである紳士たる俺が敬遠する程度の能力と云うか何と云うかを持っている。主に俺が初めてこの2人と――――いや、もう忘れよう。俺、幸せになるって誓ったんだ。誰かに。
「全く、あん時のガキがでかくなりやがって!」
「キール君、大きくなった…………ね?」
カナリアに頭を撫でられる――――と云うより捏ねくり回される。髪がぐしゃぐしゃだ。
「お2人共かなりの美人に――――最初は誰か分かりませんでしたよ」
正確には分かりたくなかった、だけど。
「うんうん、アタシたちが旅している間に、なかなか誑しな性格になったみたいだな!」
何故か喜ばれた。そして俺は誑しではなく紳士だ!
「それよりキール君、その娘は?」
「あっ、娘です」
空気が凍った。
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